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東京工業大学 1997年 理系 第2問 解説

数学B/数列数学3/極限数学3/積分法テーマ/定積分計算
東京工業大学 1997年 理系 第2問 解説

方針・初手

(1) 与えられた和の極限は、式から $\frac{1}{n}$ をくくり出すことで区分求積法の形に持ち込むことができる。和の区間が $k=n$ から $2n$ までであることに注意して変数を置き換える。 (2) 分母に $a$ が含まれるため直接区分求積法を用いるのは難しい。そこで、(1)で求めた極限値との差をとり、その差が $0$ に収束することをはさみうちの原理を用いて示す。

解法1

(1)

与式を変形して区分求積法を適用する。 和の範囲が $k=n$ から $2n$ までであるため、$k=n+j$ ($j=0, 1, \dots, n$) と置き換える。

$$ \sum_{k=n}^{2n} \frac{1}{k} = \sum_{j=0}^{n} \frac{1}{n+j} = \frac{1}{n} \sum_{j=0}^{n} \frac{1}{1+\frac{j}{n}} $$

これは $j=0$ の項と $j=1$ から $n$ までの和に分けることができる。

$$ \frac{1}{n} \cdot \frac{1}{1+0} + \frac{1}{n} \sum_{j=1}^{n} \frac{1}{1+\frac{j}{n}} = \frac{1}{n} + \frac{1}{n} \sum_{j=1}^{n} \frac{1}{1+\frac{j}{n}} $$

ここで $n \to \infty$ とすると、$\frac{1}{n} \to 0$ であり、第2項は区分求積法により定積分に収束する。

$$ \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n} \sum_{j=1}^{n} \frac{1}{1+\frac{j}{n}} = \int_{0}^{1} \frac{1}{1+x} dx $$

定積分を計算すると、

$$ \int_{0}^{1} \frac{1}{1+x} dx = \Big[ \log|1+x| \Big]_{0}^{1} = \log 2 - \log 1 = \log 2 $$

よって、求める極限値は

$$ \lim_{n \to \infty} \sum_{k=n}^{2n} \frac{1}{k} = 0 + \log 2 = \log 2 $$

(2)

$S_n = \sum_{k=n}^{2n} \frac{1}{k}$、$T_n = \sum_{k=n}^{2n} \frac{1}{a+k}$ とおく。 $S_n$ と $T_n$ の差をとると、

$$ S_n - T_n = \sum_{k=n}^{2n} \left( \frac{1}{k} - \frac{1}{a+k} \right) = \sum_{k=n}^{2n} \frac{a}{k(a+k)} $$

ここで、$a$ は正数であり、和の各項において $k \geqq n > 0$ であるから、 $k(a+k) > k^2 \geqq n^2$ が成り立つ。 したがって、各項について以下の不等式が成り立つ。

$$ 0 < \frac{a}{k(a+k)} < \frac{a}{n^2} $$

両辺について $k=n$ から $2n$ までの和をとる。項数は $(2n) - n + 1 = n+1$ 個であるから、

$$ 0 < \sum_{k=n}^{2n} \frac{a}{k(a+k)} < \sum_{k=n}^{2n} \frac{a}{n^2} = \frac{a(n+1)}{n^2} $$

すなわち、

$$ 0 < S_n - T_n < \frac{a}{n} + \frac{a}{n^2} $$

$n \to \infty$ のとき、$\frac{a}{n} + \frac{a}{n^2} \to 0$ であるから、はさみうちの原理より

$$ \lim_{n \to \infty} (S_n - T_n) = 0 $$

したがって、

$$ \lim_{n \to \infty} T_n = \lim_{n \to \infty} S_n $$

となり、任意の正数 $a$ に対して $\lim_{n \to \infty} \sum_{k=n}^{2n} \frac{1}{a+k}$ は(1)と同じ極限値をもつことが示された。

解法2

(1)の別解

関数 $f(x)=\frac{1}{x}$ は $x>0$ において単調減少であるから、自然数 $k$ に対して面積の大小関係より

$$ \int_{k}^{k+1} \frac{1}{x} dx < \frac{1}{k} < \int_{k-1}^{k} \frac{1}{x} dx $$

が成り立つ。$k=n, n+1, \dots, 2n$ について和をとると、

$$ \sum_{k=n}^{2n} \int_{k}^{k+1} \frac{1}{x} dx < \sum_{k=n}^{2n} \frac{1}{k} < \sum_{k=n}^{2n} \int_{k-1}^{k} \frac{1}{x} dx $$

積分区間をまとめることができるため、

$$ \int_{n}^{2n+1} \frac{1}{x} dx < \sum_{k=n}^{2n} \frac{1}{k} < \int_{n-1}^{2n} \frac{1}{x} dx $$

定積分をそれぞれ計算する。左辺は

$$ \Big[ \log x \Big]_{n}^{2n+1} = \log(2n+1) - \log n = \log \left( 2 + \frac{1}{n} \right) $$

右辺は

$$ \Big[ \log x \Big]_{n-1}^{2n} = \log 2n - \log(n-1) = \log \left( \frac{2n}{n-1} \right) = \log \left( \frac{2}{1 - \frac{1}{n}} \right) $$

$n \to \infty$ のとき、左辺も右辺も $\log 2$ に収束する。 したがって、はさみうちの原理より、

$$ \lim_{n \to \infty} \sum_{k=n}^{2n} \frac{1}{k} = \log 2 $$

解説

(1) は極限の基本である区分求積法を用いる典型問題である。和の範囲が $k=n$ から $2n$ となっているため、$k=n+j$ と置き換えて $j=0$ から $n$ までの和(あるいは $j=1$ から $n$ までの和の形)に直すのが定石である。解法2のように積分で評価してはさみうちの原理に持ち込む方法は、区分求積法の公式が使えないような和の極限を求める際にも応用が利く重要な考え方である。

(2) は与えられた式に対して直接区分求積法を使おうとすると、分母の $a$ の扱いが困難になる。極限値が一致することを示す問題であるため、(1)の式と(2)の式の「差をとって $0$ に収束することを示す」という方針が極めて有効である。不等式評価の際は、分母を小さくすることで全体を大きく見積もり、かつ $n \to \infty$ で $0$ になるような簡潔な式(今回は $\frac{a}{n^2}$)を作り出すことがポイントとなる。また、和の項数が $n+1$ 個であることにも注意が必要である。

答え

(1)

$$ \log 2 $$

(2)

任意の正数 $a$ に対して

$$ \lim_{n \to \infty} \sum_{k=n}^{2n} \frac{1}{a+k} = \log 2 $$

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