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東京工業大学 2019年 理系 第1問 解説

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東京工業大学 2019年 理系 第1問 解説

方針・初手

(1) は与えられた座標設定に従い、辺の長さの2乗 $p^2, q^2, r^2$ と面積 $S$ をそれぞれ $h, s, t$ を用いて表す。そして、不等式の左辺から右辺を引いた式を平方完成し、0以上になることを示せばよい。

(2) は (1) の結果を一般化して四面体の各面に適用する。(1) の設定は「1つの頂点を原点にとり、対辺を $y$ 軸に平行な直線上に配置した」ものとみなせるため、任意の三角形について同様の不等式が成り立つことがわかる。四面体を構成する4つの三角形それぞれに対してこの不等式を立て、辺々を足し合わせる。

解法1

(1) 点 $\mathrm{P}(h,s)$,$\mathrm{Q}(h,t)$ ($h>0$,$s<t$)の $x$ 座標は等しいため、線分 $\mathrm{PQ}$ は $y$ 軸に平行である。 その長さ $r$ は

$$ r = t-s $$

である。また、点 $\mathrm{O}(0,0)$ から直線 $\mathrm{PQ}$($x=h$)までの距離は $h$ であるから、三角形 $\mathrm{OPQ}$ の面積 $S$ は

$$ S = \frac{1}{2}rh = \frac{1}{2}(t-s)h $$

と表せる。 一方、2点間の距離の公式より

$$ \begin{aligned} p^2 &= h^2+s^2 \\ q^2 &= h^2+t^2 \end{aligned} $$

である。ここで、示すべき不等式の左辺から右辺を引いた差を考えると

$$ \begin{aligned} & p^2+q^2+r^2 - 4\sqrt{3}S \\ &= (h^2+s^2) + (h^2+t^2) + (t-s)^2 - 4\sqrt{3} \cdot \frac{1}{2}(t-s)h \\ &= 2h^2 + s^2 + t^2 + (t^2-2st+s^2) - 2\sqrt{3}h(t-s) \\ &= 2h^2 - 2\sqrt{3}(t-s)h + 2s^2 - 2st + 2t^2 \end{aligned} $$

となる。これを $h$ についての2次式とみて平方完成すると

$$ \begin{aligned} & 2 \left\{ h^2 - \sqrt{3}(t-s)h \right\} + 2(s^2 - st + t^2) \\ &= 2 \left\{ h - \frac{\sqrt{3}}{2}(t-s) \right\}^2 - 2 \cdot \frac{3}{4}(t-s)^2 + 2(s^2 - st + t^2) \\ &= 2 \left\{ h - \frac{\sqrt{3}}{2}(t-s) \right\}^2 - \frac{3}{2}(t^2-2st+s^2) + 2s^2 - 2st + 2t^2 \\ &= 2 \left\{ h - \frac{\sqrt{3}}{2}(t-s) \right\}^2 + \frac{1}{2}s^2 + st + \frac{1}{2}t^2 \\ &= 2 \left\{ h - \frac{\sqrt{3}}{2}(t-s) \right\}^2 + \frac{1}{2}(s+t)^2 \end{aligned} $$

ここで、$h, s, t$ は実数であるから、$\left\{ h - \frac{\sqrt{3}}{2}(t-s) \right\}^2 \geqq 0$ かつ $(s+t)^2 \geqq 0$ である。 したがって

$$ p^2+q^2+r^2 - 4\sqrt{3}S \geqq 0 $$

すなわち

$$ p^2+q^2+r^2 \geqq 4\sqrt{3}S $$

が成り立つ。

等号が成立するのは、

$$ h - \frac{\sqrt{3}}{2}(t-s) = 0 \quad \text{かつ} \quad s+t = 0 $$

のときである。第2式より $t = -s$。これを第1式に代入すると

$$ h - \frac{\sqrt{3}}{2}(-2s) = h + \sqrt{3}s = 0 $$

よって $s = -\frac{h}{\sqrt{3}}$ となる。このとき $t = \frac{h}{\sqrt{3}}$ であり、これは $h>0$ より条件 $s<t$ を満たす。 ゆえに、等号が成立するときの $s, t$ の値は $s = -\frac{h}{\sqrt{3}}, t = \frac{h}{\sqrt{3}}$ である。

(2) 任意の三角形は、ある1つの頂点を原点とし、その頂点から対辺へ下ろした垂線が $x$ 軸上($x>0$ の部分)に重なるように適当な直交座標系を設定することができる。このとき、残りの2頂点は直線 $x=h$ ($h>0$)上にあるため、(1) と同様の座標設定 $\mathrm{O}(0,0), \mathrm{P}(h,s), \mathrm{Q}(h,t)$ を行うことができる。 このことと (1) の結果から、任意の三角形において、「3辺の長さの2乗の和は、その面積の $4\sqrt{3}$ 倍以上である」ことが言える。

また、(1) における等号成立条件を満たすとき、3辺の長さ $p, q, r$ を計算すると

$$ \begin{aligned} p^2 &= h^2 + \left(-\frac{h}{\sqrt{3}}\right)^2 = \frac{4}{3}h^2 \\ q^2 &= h^2 + \left(\frac{h}{\sqrt{3}}\right)^2 = \frac{4}{3}h^2 \\ r^2 &= \left(\frac{h}{\sqrt{3}} - \left(-\frac{h}{\sqrt{3}}\right)\right)^2 = \left(\frac{2h}{\sqrt{3}}\right)^2 = \frac{4}{3}h^2 \end{aligned} $$

となり、$p=q=r$ である。すなわち、等号が成立するのはその三角形が正三角形のときである。

四面体 $\mathrm{ABCD}$ を構成する4つの三角形($\triangle\mathrm{ABC}, \triangle\mathrm{BCD}, \triangle\mathrm{CDA}, \triangle\mathrm{DAB}$)の面積をそれぞれ $S_1, S_2, S_3, S_4$ とすると、表面積 $T$ は

$$ T = S_1 + S_2 + S_3 + S_4 $$

である。各三角形に対して上記の不等式を適用すると、以下の4つの不等式が得られる。

$$ \begin{aligned} a^2+b^2+c^2 &\geqq 4\sqrt{3}S_1 \\ a^2+m^2+n^2 &\geqq 4\sqrt{3}S_2 \\ b^2+l^2+n^2 &\geqq 4\sqrt{3}S_3 \\ c^2+l^2+m^2 &\geqq 4\sqrt{3}S_4 \end{aligned} $$

これら4つの不等式の辺々を足し合わせると

$$ 2(a^2+b^2+c^2+l^2+m^2+n^2) \geqq 4\sqrt{3}(S_1+S_2+S_3+S_4) $$

すなわち

$$ 2(a^2+b^2+c^2+l^2+m^2+n^2) \geqq 4\sqrt{3}T $$

両辺を2で割ることで、示すべき不等式

$$ a^2+b^2+c^2+l^2+m^2+n^2 \geqq 2\sqrt{3}T $$

が得られる。

等号が成立するのは、4つの不等式すべてにおいて等号が成立するときである。 これは、$\triangle\mathrm{ABC}, \triangle\mathrm{BCD}, \triangle\mathrm{CDA}, \triangle\mathrm{DAB}$ の4つがすべて正三角形のときであり、すなわち四面体 $\mathrm{ABCD}$ が正四面体のときである。

解説

(1) は三角形に関する有名不等式(Weitzenböckの不等式)の一部を、誘導に従って代数的に証明させる問題である。文字が多く一見複雑に見えるが、素直に $h$ の2次関数と捉えて平方完成するだけで容易に証明できる。残った部分についても、さらに $s$ と $t$ について平方完成することで平方の和の形を作ることがポイントである。

(2) は (1) で証明した事実が「任意の三角形」に対して適用できることを読み取り、四面体の4つの面に拡張する問題である。「任意の三角形は適当な座標系を定めれば (1) の状況に帰着できる」という図形的考察が鍵となる。辺の文字がそれぞれ2回ずつ登場することから、各面について不等式を立てて和をとるという発想に自然に至ることができる。

答え

(1)

$$ p^2+q^2+r^2 \geqq 4\sqrt{3}S $$

等号成立は

$$ s = -\frac{h}{\sqrt{3}}, \quad t = \frac{h}{\sqrt{3}} $$

のときである。

(2)

$$ a^2+b^2+c^2+l^2+m^2+n^2 \geqq 2\sqrt{3}T $$

等号成立は四面体 $\mathrm{ABCD}$ が正四面体のときである。

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