東京大学 1986年 文系 第4問 解説

方針・初手
平面 $S$ を複素数平面と同一視し、点 $A, B$ を複素数で表すことで、回転操作 $f, g$ を複素数の一次式として定式化する。回転操作は複素数の積で表されるため、合成写像 $h = g \circ f$ はそれらの式の合成として計算できる。あるいは、正三角形の構成など図形的な性質に着目して解くことも可能である。
解法1
平面 $S$ を複素数平面とし、点 $A, B, P$ をそれぞれ複素数 $\alpha, \beta, z$ で表す。 条件 (i), (ii), (iii) より、写像が中心からの正の向きの回転であることを意味している。 $\omega = \cos 60^\circ + i \sin 60^\circ = \frac{1 + \sqrt{3}i}{2}$ とおくと、$\omega$ は正の向きの $60^\circ$ 回転を表し、$\omega^2 - \omega + 1 = 0$ が成り立つ。
$f$ は $A(\alpha)$ を中心とする正の向きの $60^\circ$ 回転であるから、任意の点 $z$ に対し、
$$ f(z) = \omega(z - \alpha) + \alpha $$
と表される。 同様に、$g$ は $B(\beta)$ を中心とする正の向きの $60^\circ$ 回転であるから、
$$ g(z) = \omega(z - \beta) + \beta $$
と表される。 これより、合成写像 $h(z) = g(f(z))$ は、
$$ \begin{aligned} h(z) &= \omega(f(z) - \beta) + \beta \\ &= \omega(\omega(z - \alpha) + \alpha - \beta) + \beta \\ &= \omega^2 z - \omega^2 \alpha + \omega \alpha - \omega \beta + \beta \\ &= \omega^2 z + (\omega - \omega^2)\alpha + (1 - \omega)\beta \end{aligned} $$
ここで、$\omega^2 - \omega + 1 = 0$ より $\omega - \omega^2 = 1$、また $1 - \omega = -\omega^2$ であるから、これらを代入して整理すると、
$$ h(z) = \omega^2 z + \alpha - \omega^2 \beta \quad \cdots (*) $$
となる。
(1)
点 $h(A)$ の位置を求める。 $f$ は $A$ を中心とする回転であるから $f(A) = A$ である。したがって、
$$ h(A) = g(f(A)) = g(A) $$
となり、$h(A)$ は点 $A$ を点 $B$ を中心に正の向きに $60^\circ$ 回転させた点である。
次に、点 $h(B)$ の位置を求める。 式 $(*)$ に $z = \beta$ を代入すると、
$$ \begin{aligned} h(\beta) &= \omega^2 \beta + \alpha - \omega^2 \beta \\ &= \alpha \end{aligned} $$
となり、$h(B) = A$ であることがわかる。
図示について 解答用紙に図示する際は、以下の位置関係を描く。
- 相異なる2点 $A, B$ を結ぶ線分を引く。
- 点 $B$ を中心とし、点 $A$ を正の向き(反時計回り)に $60^\circ$ 回転させた位置に点 $h(A)$ をとる。($\triangle B A h(A)$ は正三角形となる)
- 点 $h(B)$ は点 $A$ と全く同じ位置になるため、点 $A$ の位置に $h(B)$ を併記する。
(2)
式 $(*)$ より、
$$ h(z) = \omega^2 z + \alpha - \omega^2 \beta $$
である。 $z$ の係数が $\omega^2 = \cos 120^\circ + i \sin 120^\circ$ であることから、$h$ は正の向きの $120^\circ$ 回転であることが示された。
その回転の中心 $O$ を表す複素数を $z_0$ とすると、$h(z_0) = z_0$ を満たすから、
$$ z_0 = \omega^2 z_0 + \alpha - \omega^2 \beta $$
$$ (1 - \omega^2)z_0 = \alpha - \omega^2 \beta $$
これを変形すると、
$$ z_0 - \alpha = \omega^2(z_0 - \beta) $$
$$ \alpha - z_0 = \omega^2(\beta - z_0) $$
すなわち、$A - O = \omega^2(B - O)$ が成り立つ。 これは、点 $B$ を点 $O$ を中心に正の向きに $120^\circ$ 回転させた点が点 $A$ であることを意味する。 したがって、点 $O$ は $\triangle O B A$ が $O A = O B$ かつ $\angle B O A = 120^\circ$(反時計回りに $B \to A$ と測った角)となるような二等辺三角形の頂点である。
解法2
初等幾何と図形的な変換の性質を用いた解法を示す。
(1)
$f$ は $A$ を中心とする回転なので、$f(A) = A$ である。 よって $h(A) = g(f(A)) = g(A)$ となる。 $g$ は $B$ を中心とする正の向きの $60^\circ$ 回転であるから、$h(A)$ は点 $A$ を点 $B$ を中心に正の向きに $60^\circ$ 回転させた点である。
次に $h(B)$ について考える。 点 $B' = f(B)$ とおくと、$B'$ は $B$ を $A$ を中心に正の向きに $60^\circ$ 回転させた点である。 このとき、$\triangle A B B'$ は正三角形であり、頂点は $A, B, B'$ の順に反時計回りに並ぶ。 $h(B) = g(B')$ であり、$g$ は $B$ を中心とする正の向きの $60^\circ$ 回転である。 ここで、正三角形 $\triangle A B B'$ において $B A = B B'$ であり、ベクトル $\vec{BB'}$ を点 $B$ を中心に正の向き(反時計回り)に $60^\circ$ 回転させた方向がベクトル $\vec{BA}$ と一致する。 したがって、$B'$ を $B$ を中心に正の向きに $60^\circ$ 回転させると $A$ に移るため、$h(B) = A$ である。
(2)
$h$ は「正の向きの $60^\circ$ 回転」を2回連続して行う変換である。 一般に、平面上での回転の合成は、回転角の和が $360^\circ$ の整数倍でない限り、その和を回転角とする1つの回転になる。 今回、$60^\circ + 60^\circ = 120^\circ$ であるから、$h$ はある点 $O$ を中心とする正の向きの $120^\circ$ 回転である。
(1) の結果より、$h(B) = A$ である。 これは、点 $B$ を点 $O$ を中心に正の向きに $120^\circ$ 回転させると点 $A$ に移ることを意味する。 すなわち、$O A = O B$ であり、$\angle B O A = 120^\circ$(点 $O$ から見て、点 $B$ から点 $A$ へ反時計回りに測った角)を満たす。 したがって、点 $O$ は直線 $AB$ に対して点 $f(B)$ とは反対側に位置し、$\angle O A B = \angle O B A = 30^\circ$ を満たす二等辺三角形の頂点である。
解説
複素数平面を利用すると、回転の合成を一次式 $w = az + b$ の形で代数的に処理できるため、見通しが良くなる。$a$ の偏角が合成後の回転角を与え、$w=z$ の方程式を解くことで回転の中心を求められるという定石は非常に重要である。 幾何的な解法も直感的であり、(1) で $h(B)=A$ となることを見抜ければ、回転の合成定理を用いて回転の中心を特定することができる。どちらの方針もマスターしておきたい。
答え
(1)
- $h(A)$ : 点 $A$ を、点 $B$ を中心として正の向きに $60^\circ$ 回転させた点。
- $h(B)$ : 点 $A$ と一致する。 (図示の要領については本文参照)
(2)
- 回転角 : $120^\circ$
- 点 $O$ : $\triangle O B A$ が $O A = O B$ かつ $\angle B O A = 120^\circ$(正の向き)となる二等辺三角形の頂点。(直線 $AB$ に関して、点 $A$ を中心に点 $B$ を正の向きに $60^\circ$ 回転させた点とは反対側にある、$\angle O A B = \angle O B A = 30^\circ$ を満たす点)
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