東京大学 1991年 文系 第4問 解説

方針・初手
正四角錐の底面の中心を原点とする空間座標を設定し、各頂点や球の中心の座標を文字で表す。球が「すべての辺と接する」という条件から、底面の辺との接し方を利用して球の半径を求め、側面の辺との接し方を利用して錐の高さを決定する。 体積を求める際は、球が錐の側面からはみ出す部分(球欠)の体積を積分で計算する。その際、隣り合う側面による球欠同士が重ならないことを断面の考察から確認し、半球の体積から4つの球欠の体積を減じる方針をとる。
解法1
(1) $V$ の高さ
正四角錐 $V$ の底面の正方形を $\text{ABCD}$ とする。空間座標を設定し、底面の中心を原点 $\text{O}(0,0,0)$ とし、底面が $xy$ 平面上にあるとする。 底面の一辺の長さは $a$ であるから、各頂点の座標を次のようにとることができる。 $\text{A}\left(\frac{a}{2}, -\frac{a}{2}, 0\right)$, $\text{B}\left(\frac{a}{2}, \frac{a}{2}, 0\right)$, $\text{C}\left(-\frac{a}{2}, \frac{a}{2}, 0\right)$, $\text{D}\left(-\frac{a}{2}, -\frac{a}{2}, 0\right)$ また、$V$ の頂点を $\text{P}(0, 0, h)$ ($h > 0$)とする。この $h$ が求める $V$ の高さである。
球 $S$ の中心は底面($xy$ 平面)上にあり、すべての辺と接する。 底面の4つの辺は $x = \pm \frac{a}{2}$ または $y = \pm \frac{a}{2}$ (いずれも $z=0$)上にある。 対称性から、これら4辺すべてに接する球の中心は原点 $\text{O}$ であり、原点から各辺までの距離は $\frac{a}{2}$ であるため、球 $S$ の半径は $r = \frac{a}{2}$ となる。
次に、球 $S$ は側面の辺 $\text{PA}$ とも接する。 原点 $\text{O}$、点 $\text{A}$、点 $\text{P}$ を頂点とする $\triangle \text{OAP}$ を考える。 $\text{P}$ は $z$ 軸上、$\text{A}$ は $xy$ 平面上にあるため、$\angle \text{AOP} = 90^\circ$ の直角三角形である。 $\text{OA}$ の長さと $\text{OP}$ の長さはそれぞれ以下のようになる。
$$ \text{OA} = \sqrt{\left(\frac{a}{2}\right)^2 + \left(-\frac{a}{2}\right)^2} = \frac{a}{\sqrt{2}} $$
$$ \text{OP} = h $$
辺 $\text{PA}$ は球 $S$ と接するため、原点 $\text{O}$ から直線 $\text{PA}$ に下ろした垂線の長さは、球の半径 $r = \frac{a}{2}$ に等しい。 $\triangle \text{OAP}$ の面積を2通りで表すと、
$$ \frac{1}{2} \cdot \text{OA} \cdot \text{OP} = \frac{1}{2} \cdot \text{PA} \cdot r $$
$$ \frac{a}{\sqrt{2}} h = \sqrt{\left(\frac{a}{\sqrt{2}}\right)^2 + h^2} \cdot \frac{a}{2} $$
両辺を正の数 $a$ で割り、2乗して整理する。
$$ \frac{h^2}{2} = \left(\frac{a^2}{2} + h^2\right) \cdot \frac{1}{4} $$
$$ 2h^2 = \frac{a^2}{2} + h^2 $$
$$ h^2 = \frac{a^2}{2} $$
$h > 0$ より、
$$ h = \frac{a}{\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{2} a $$
したがって、$V$ の高さは $\frac{\sqrt{2}}{2} a$ である。
(2) 球と錐 $V$ との共通部分の体積
錐 $V$ は $z \ge 0$ の領域において、底面と4つの側面で囲まれた図形である。 球 $S$ の中心は原点にあるため、共通部分は $z \ge 0$ にある上半球のうち、錐 $V$ の内部にある部分となる。 上半球の体積を $V_0$ とすると、
$$ V_0 = \frac{1}{2} \cdot \frac{4}{3} \pi r^3 = \frac{2}{3} \pi \left(\frac{a}{2}\right)^3 = \frac{\pi a^3}{12} $$
錐 $V$ の側面 $\text{PAB}$ を含む平面 $\alpha$ の方程式を求める。 平面 $\alpha$ 上の点 $\text{P}\left(0, 0, \frac{a}{\sqrt{2}}\right)$ と $\text{A}\left(\frac{a}{2}, -\frac{a}{2}, 0\right)$, $\text{B}\left(\frac{a}{2}, \frac{a}{2}, 0\right)$ から、2つの方向ベクトルは、
$$ \vec{\text{PA}} = \left(\frac{a}{2}, -\frac{a}{2}, -\frac{a}{\sqrt{2}}\right), \quad \vec{\text{PB}} = \left(\frac{a}{2}, \frac{a}{2}, -\frac{a}{\sqrt{2}}\right) $$
これらの外積をとると、法線ベクトル $\vec{n}$ は、
$$ \vec{n} = \left(\frac{a^2}{\sqrt{2}}, 0, \frac{a^2}{2}\right) \parallel (\sqrt{2}, 0, 1) $$
点 $\text{P}$ を通ることから、平面 $\alpha$ の方程式は、
$$ \sqrt{2}(x - 0) + 0(y - 0) + 1\left(z - \frac{a}{\sqrt{2}}\right) = 0 \iff \sqrt{2}x + z = \frac{a}{\sqrt{2}} $$
原点 $\text{O}$ から平面 $\alpha$ までの距離 $d$ は、
$$ d = \frac{\left|-\frac{a}{\sqrt{2}}\right|}{\sqrt{(\sqrt{2})^2 + 1^2}} = \frac{\frac{a}{\sqrt{2}}}{\sqrt{3}} = \frac{a}{\sqrt{6}} $$
$d = \frac{a}{\sqrt{6}} < \frac{a}{2} = r$ であるため、球 $S$ は平面 $\alpha$ から外側にはみ出す。 このはみ出す部分(球欠)の体積 $V_1$ を求める。平面からの距離 $x$ を用いて積分すると、
$$ \begin{aligned} V_1 &= \int_{d}^{r} \pi(r^2 - x^2) dx \\ &= \pi \left[ r^2 x - \frac{x^3}{3} \right]_{d}^{r} \\ &= \pi \left( \frac{2}{3}r^3 - r^2 d + \frac{d^3}{3} \right) \end{aligned} $$
$r = \frac{a}{2}$, $d = \frac{a}{\sqrt{6}}$ を代入する。
$$ \begin{aligned} V_1 &= \pi \left\{ \frac{2}{3}\left(\frac{a}{2}\right)^3 - \left(\frac{a}{2}\right)^2\left(\frac{a}{\sqrt{6}}\right) + \frac{1}{3}\left(\frac{a}{\sqrt{6}}\right)^3 \right\} \\ &= \pi a^3 \left( \frac{1}{12} - \frac{1}{4\sqrt{6}} + \frac{1}{18\sqrt{6}} \right) \\ &= \pi a^3 \left( \frac{1}{12} - \frac{9}{36\sqrt{6}} + \frac{2}{36\sqrt{6}} \right) \\ &= \pi a^3 \left( \frac{1}{12} - \frac{7}{36\sqrt{6}} \right) \end{aligned} $$
次に、4つの側面からそれぞれはみ出す球欠が重ならないか確認する。 高さ $z$ ($0 \le z \le \frac{a}{2}$)における $xy$ 平面に平行な断面を考える。 球の断面は半径 $R(z) = \sqrt{\frac{a^2}{4} - z^2}$ の円であり、錐の断面は中心から辺までの距離が $w(z) = \frac{a}{2} - \frac{z}{\sqrt{2}}$ の正方形である。 円が正方形の頂点を越えてはみ出す条件は $R(z) > \sqrt{2}w(z)$ であるが、
$$ \begin{aligned} 2w(z)^2 - R(z)^2 &= 2\left(\frac{a}{2} - \frac{z}{\sqrt{2}}\right)^2 - \left(\frac{a^2}{4} - z^2\right) \\ &= 2\left(\frac{a^2}{4} - \frac{az}{\sqrt{2}} + \frac{z^2}{2}\right) - \frac{a^2}{4} + z^2 \\ &= 2z^2 - \sqrt{2}az + \frac{a^2}{4} \\ &= 2\left(z - \frac{\sqrt{2}}{4}a\right)^2 \ge 0 \end{aligned} $$
したがって、常に $R(z) \le \sqrt{2}w(z)$ が成り立ち、等号成立(一点でのみ接する)以外の重なりはない。また、球欠の最下点の $z$ 座標は $0$ であるため底面より下にはみ出すこともない。 よって、求める共通部分の体積 $V$ は、上半球の体積から4つの球欠の体積を単純に引けばよい。
$$ \begin{aligned} V &= V_0 - 4V_1 \\ &= \frac{\pi a^3}{12} - 4\pi a^3 \left( \frac{1}{12} - \frac{7}{36\sqrt{6}} \right) \\ &= \frac{\pi a^3}{12} - \frac{\pi a^3}{3} + \frac{7\pi a^3}{9\sqrt{6}} \\ &= -\frac{\pi a^3}{4} + \frac{7\sqrt{6}\pi a^3}{54} \\ &= \frac{-27 + 14\sqrt{6}}{108} \pi a^3 \end{aligned} $$
解説
空間図形において「すべての辺と接する球」(稜接球)が存在する条件は厳しく、この問題の正四角錐はすべての辺の長さが $a$ となる特別な立体(ジョンソンの立体 $J_1$)となっている。(1) の結果から、側面の二等辺三角形が実は正三角形であることがわかる。 (2) の体積計算では、球の一部が平面によってはみ出す「球欠」の体積を計算することが主題となるが、論理的な厳密さを期すためには「はみ出した部分同士が空間内で重なっていないか(二重に引いてしまわないか)」を確認する必要がある。断面の円の半径と正方形の対角線の長さを比較することで、四隅での重なりがないことを鮮やかに示すことができる。
答え
(1)
$$ \frac{\sqrt{2}}{2} a $$
(2)
$$ \frac{14\sqrt{6} - 27}{108} \pi a^3 $$
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