東京大学 1991年 文系 第3問 解説

方針・初手
長方形の4つの頂点と対角線の交点という5つの点を中心として、互いに交わらない円を描くとき、半径 $r$ を最大にするには、中心間の距離のうち最小のものが $2r$ に等しくなるようにすればよい。
中心間の距離の候補は、長方形の辺の長さと、頂点から対角線の交点までの距離である。これらを比較して $r$ を $a$ の式で表し、面積 $S(a)$ を求める。そこから関数 $f(a) = \frac{S(a)}{a}$ の増減や極値を調べ、グラフの概形を把握する。
解法1
長方形の頂点を順に A, B, C, D とし、対角線の交点を E とする。 AB $= 1$、BC $= a$ としても一般性を失わない。 このとき、対角線の長さは $\sqrt{1+a^2}$ であり、中心 E から各頂点までの距離はすべて $\frac{\sqrt{1+a^2}}{2}$ となる。
5つの円の内部が互いに共通部分をもたない条件は、任意の2つの円の中心間の距離 $d$ について $2r \le d$ が成り立つことである。 $r$ を最大にするとき、中心間の距離の最小値を $d_{\min}$ とすると、
$$ r = \frac{1}{2} d_{\min} $$
となる。 ここで、中心間の距離の候補は、長方形の辺の長さ $1, a$ と、頂点と中心 E との距離 $\frac{\sqrt{1+a^2}}{2}$ である。(頂点同士の対角線の長さは必ず辺の長さより大きいため最小値にはならない) よって、$d_{\min} = \min\left(1, a, \frac{\sqrt{1+a^2}}{2}\right)$ である。
$a > 0$ における $d_{\min}$ の値を場合分けして調べる。
(i)
$0 < a \le 1$ のとき $\min(1, a) = a$ である。これと $\frac{\sqrt{1+a^2}}{2}$ を比較する。
$$ \frac{\sqrt{1+a^2}}{2} \ge a \iff \frac{1+a^2}{4} \ge a^2 \iff 1+a^2 \ge 4a^2 \iff 3a^2 \le 1 $$
$a > 0$ より $a \le \frac{1}{\sqrt{3}}$ である。 したがって、$0 < a \le \frac{1}{\sqrt{3}}$ のとき $d_{\min} = a$ であり、$\frac{1}{\sqrt{3}} < a \le 1$ のとき $d_{\min} = \frac{\sqrt{1+a^2}}{2}$ となる。
(ii)
$a > 1$ のとき $\min(1, a) = 1$ である。これと $\frac{\sqrt{1+a^2}}{2}$ を比較する。
$$ \frac{\sqrt{1+a^2}}{2} \ge 1 \iff \frac{1+a^2}{4} \ge 1 \iff 1+a^2 \ge 4 \iff a^2 \ge 3 $$
$a > 1$ より $a \ge \sqrt{3}$ である。 したがって、$1 < a \le \sqrt{3}$ のとき $d_{\min} = \frac{\sqrt{1+a^2}}{2}$ であり、$a > \sqrt{3}$ のとき $d_{\min} = 1$ となる。
以上をまとめると、$r$ は次のように表される。
- $0 < a \le \frac{1}{\sqrt{3}}$ のとき、$r = \frac{a}{2}$
- $\frac{1}{\sqrt{3}} \le a \le \sqrt{3}$ のとき、$r = \frac{\sqrt{1+a^2}}{4}$
- $a \ge \sqrt{3}$ のとき、$r = \frac{1}{2}$
次に、5つの円が長方形から切りとる面積 $S(a)$ を求める。 長方形の4つの頂点にある円が切りとる部分は、中心角 $90^\circ$ の扇形であり、4つ合わせて円1つ分の面積 $\pi r^2$ となる。 また、中心 E の円は、E から各辺までの距離が $\frac{1}{2}, \frac{a}{2}$ であり、どの場合でも $r \le \frac{1}{2}$ かつ $r \le \frac{a}{2}$ を満たすため、長方形の内部に完全に含まれる。その面積は $\pi r^2$ である。 したがって、$S(a)$ は
$$ S(a) = \pi r^2 + \pi r^2 = 2\pi r^2 $$
となる。
$f(a) = \frac{S(a)}{a}$ とおき、各範囲での $f(a)$ の式と増減を調べる。
(ア)
$0 < a \le \frac{1}{\sqrt{3}}$ のとき
$$ S(a) = 2\pi \left(\frac{a}{2}\right)^2 = \frac{\pi}{2} a^2 $$
$$ f(a) = \frac{\pi}{2} a $$
この範囲において $f(a)$ は単調に増加する。
(イ)
$\frac{1}{\sqrt{3}} \le a \le \sqrt{3}$ のとき
$$ S(a) = 2\pi \left(\frac{\sqrt{1+a^2}}{4}\right)^2 = \frac{\pi}{8} (1+a^2) $$
$$ f(a) = \frac{\pi}{8} \left(\frac{1}{a} + a\right) $$
微分すると
$$ f'(a) = \frac{\pi}{8} \left(1 - \frac{1}{a^2}\right) $$
$f'(a) = 0$ となるのは $a = 1$ のときであり、このとき極小値 $f(1) = \frac{\pi}{4}$ をとる。
(ウ)
$a \ge \sqrt{3}$ のとき
$$ S(a) = 2\pi \left(\frac{1}{2}\right)^2 = \frac{\pi}{2} $$
$$ f(a) = \frac{\pi}{2a} $$
この範囲において $f(a)$ は単調に減少する。また、$\lim_{a \to \infty} f(a) = 0$ である。
各境界での値を調べると、 $a = \frac{1}{\sqrt{3}}$ のとき、$f\left(\frac{1}{\sqrt{3}}\right) = \frac{\pi}{2} \cdot \frac{1}{\sqrt{3}} = \frac{\sqrt{3}\pi}{6}$ $a = \sqrt{3}$ のとき、$f(\sqrt{3}) = \frac{\pi}{2\sqrt{3}} = \frac{\sqrt{3}\pi}{6}$ となり、関数は連続である。
以上より、$f(a)$ の増減表は以下のようになる。
| $a$ | $(0)$ | $\cdots$ | $\frac{1}{\sqrt{3}}$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $\sqrt{3}$ | $\cdots$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $f'(a)$ | $+$ | $-$ | $0$ | $+$ | $-$ | |||
| $f(a)$ | $(0)$ | $\nearrow$ | $\frac{\sqrt{3}\pi}{6}$ | $\searrow$ | $\frac{\pi}{4}$ | $\nearrow$ | $\frac{\sqrt{3}\pi}{6}$ | $\searrow$ |
解説
中心間の最短距離の場合分けを正確に行えるかがポイントである。 本問の背景として、二辺の長さが $1$ と $a$ の長方形は、辺の長さを $1/a$ 倍に相似縮小すると、二辺の長さが $1/a$ と $1$ の長方形となる。図形の対称性と相似性から $S(1/a) = \frac{1}{a^2}S(a)$ が成り立ち、ここから $f(1/a) = f(a)$ が導かれる。計算結果が $a=1$ を基準にして $a$ と $1/a$ で同じ値をとる形になっているのは、この性質によるものである。
答え
$y = \frac{S(a)}{a}$ のグラフの概形は、上記の増減表にしたがい、以下の特徴をもつ曲線である。
- 原点 $(0,0)$ から出発し、最初は直線 $y = \frac{\pi}{2}a$ 上を単調に増加する(原点は含まない)。
- $a = \frac{1}{\sqrt{3}}$ と $a = \sqrt{3}$ で極大値 $\frac{\sqrt{3}\pi}{6}$ をとり、これらの点では尖点(折れ曲がり)となる。
- $a = 1$ で滑らかに極小値 $\frac{\pi}{4}$ をとる。
- $a \ge \sqrt{3}$ では $y = \frac{\pi}{2a}$ 上を単調に減少し、$a$ 軸($y=0$)を漸近線とする。
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