東京大学 2004年 文系 第4問 解説

方針・初手
各操作において、左端、中央、右端の板が選ばれて裏返される確率は、それぞれ等しく $\frac{2}{6} = \frac{1}{3}$ である。
1回の操作を行うと、必ずどれか1枚の板が裏返るため、「黒色の板の枚数」の偶奇が毎回切り替わることに着目する。 初期状態(0回)では黒色の板は0枚(偶数)であるから、操作回数が奇数回であれば黒色の板の枚数は必ず奇数(1枚または3枚)となり、偶数回であれば必ず偶数(0枚または2枚)となる。
このパリティ(偶奇性)と対称性を利用して状態推移を考えると、漸化式をシンプルに立てることができる。
解法1
(1)
3回の操作後、色の並び方が「黒白白」となるのは、左端の板が奇数回(1回または3回)裏返され、かつ中央と右端の板が偶数回(0回または2回)裏返された場合である。 操作の合計は3回であるから、各板の(左端,中央,右端)の裏返される回数の組は、$(3, 0, 0)$、$(1, 2, 0)$、$(1, 0, 2)$ のいずれかとなる。 それぞれの事象が起こる確率を求める。
(i)
$(3, 0, 0)$ の場合 左端の板が3回連続で選ばれる確率である。
$$ \left( \frac{1}{3} \right)^3 = \frac{1}{27} $$
(ii)
$(1, 2, 0)$ の場合 左端の板が1回、中央の板が2回選ばれる確率である。
$$ {}_3\mathrm{C}_{1} \left( \frac{1}{3} \right)^1 \left( \frac{1}{3} \right)^2 = \frac{3}{27} $$
(iii)
$(1, 0, 2)$ の場合 左端の板が1回、右端の板が2回選ばれる確率である。
$$ {}_3\mathrm{C}_{1} \left( \frac{1}{3} \right)^1 \left( \frac{1}{3} \right)^2 = \frac{3}{27} $$
これらは互いに排反であるから、求める確率は
$$ \frac{1}{27} + \frac{3}{27} + \frac{3}{27} = \frac{7}{27} $$
(2)
奇数回である $2k+1$ 回の操作後、黒色の板の枚数は必ず奇数となるため、状態は「黒色が1枚」または「黒色が3枚」のいずれかである。 問題の定義より、$2k+1$ 回の操作後に黒色が1枚である確率が $p_{2k+1}$ であり、黒色が3枚である確率は $1 - p_{2k+1}$ と表せる。
ここからさらに2回の操作を行い、$2k+3$ 回後に黒色が1枚になるための条件を考える。
(ア)
$2k+1$ 回後に黒色が1枚(確率 $p_{2k+1}$)の場合 さらに2回の操作を行って黒色が1枚のままであるためには、「同じ板を2回裏返す」または「白板と黒板を1回ずつ裏返す」のいずれかが起こればよい。 同じ板を2回裏返す確率は $3 \times \left( \frac{1}{3} \right)^2 = \frac{1}{3}$ である。 白板と黒板を1回ずつ裏返す確率は $2! \times \frac{2}{3} \times \frac{1}{3} = \frac{4}{9}$ である。 したがって、黒色が1枚から1枚へ推移する確率は
$$ \frac{1}{3} + \frac{4}{9} = \frac{7}{9} $$
(イ)
$2k+1$ 回後に黒色が3枚(確率 $1 - p_{2k+1}$)の場合 さらに2回の操作を行って黒色が1枚となるためには、3枚の黒板のうち異なる2枚を裏返せばよい。 この推移が起こる確率は
$$ {}_3\mathrm{P}_2 \times \left( \frac{1}{3} \right)^2 = 6 \times \frac{1}{9} = \frac{2}{3} $$
(ア)、(イ) より、次の漸化式が成り立つ。
$$ p_{2k+3} = \frac{7}{9} p_{2k+1} + \frac{2}{3} (1 - p_{2k+1}) $$
これを整理すると、
$$ p_{2k+3} = \frac{1}{9} p_{2k+1} + \frac{2}{3} $$
この式を変形して、
$$ p_{2k+3} - \frac{3}{4} = \frac{1}{9} \left( p_{2k+1} - \frac{3}{4} \right) $$
を得る。 ここで $p_3$ を求める。(1) より、3回操作後に「黒白白」となる確率は $\frac{7}{27}$ であり、対称性から「白黒白」「白白黒」となる確率も等しいため、
$$ p_3 = 3 \times \frac{7}{27} = \frac{7}{9} $$
となる。数列 $\left\{ p_{2k+1} - \frac{3}{4} \right\}$ は、初項が $k=1$ のときの
$$ p_3 - \frac{3}{4} = \frac{7}{9} - \frac{3}{4} = \frac{1}{36} $$
であり、公比が $\frac{1}{9}$ の等比数列であるから、一般項は
$$ p_{2k+1} - \frac{3}{4} = \frac{1}{36} \left( \frac{1}{9} \right)^{k-1} = \frac{1}{4} \left( \frac{1}{9} \right)^k $$
ゆえに、
$$ p_{2k+1} = \frac{3}{4} + \frac{1}{4} \left( \frac{1}{9} \right)^k $$
解法2
全体の黒色の枚数に着目して、1回ごとの状態推移を漸化式で処理する。 $n$ 回の操作後に黒色の板が $i$ 枚である確率を $P_n(i)$ とおく。 初期状態は $P_0(0) = 1$ である。 1回の操作で必ず1枚の板の色が変わるため、各状態の推移は以下のようになる。
$$ \begin{cases} P_{n+1}(0) = \frac{1}{3} P_n(1) \\ P_{n+1}(1) = P_n(0) + \frac{2}{3} P_n(2) \\ P_{n+1}(2) = \frac{2}{3} P_n(1) + P_n(3) \\ P_{n+1}(3) = \frac{1}{3} P_n(2) \end{cases} $$
(1)
$n=0$ から順に確率を計算する。 $n=1$ のとき、
$$ P_1(1) = 1 $$
$n=2$ のとき、
$$ P_2(0) = \frac{1}{3} P_1(1) = \frac{1}{3} $$
$$ P_2(2) = \frac{2}{3} P_1(1) = \frac{2}{3} $$
$n=3$ のとき、
$$ P_3(1) = P_2(0) + \frac{2}{3} P_2(2) = \frac{1}{3} + \frac{2}{3} \times \frac{2}{3} = \frac{7}{9} $$
3回操作後に黒が1枚となる状態は「黒白白」「白黒白」「白白黒」の3通りであり、各板が選ばれる条件の対称性からこれらは等確率である。 したがって、「黒白白」となる確率は
$$ \frac{1}{3} P_3(1) = \frac{7}{27} $$
(2)
問題の条件より $p_{2k+1} = P_{2k+1}(1)$ である。 $n$ が奇数である $2k+1$ 回の操作後、黒色の枚数は必ず奇数となるため、
$$ P_{2k+1}(1) + P_{2k+1}(3) = 1 $$
が成り立つ。 推移式を用いて、$n=2k+1$ から $n=2k+3$ への $P_n(1)$ の変化を計算する。
$$ P_{2k+2}(0) = \frac{1}{3} P_{2k+1}(1) $$
$$ P_{2k+2}(2) = \frac{2}{3} P_{2k+1}(1) + P_{2k+1}(3) $$
これらを $P_{2k+3}(1)$ の式に代入すると、
$$ \begin{aligned} P_{2k+3}(1) &= P_{2k+2}(0) + \frac{2}{3} P_{2k+2}(2) \\ &= \frac{1}{3} P_{2k+1}(1) + \frac{2}{3} \left\{ \frac{2}{3} P_{2k+1}(1) + P_{2k+1}(3) \right\} \end{aligned} $$
ここで、$P_{2k+1}(3) = 1 - P_{2k+1}(1)$ を代入して整理する。
$$ \begin{aligned} P_{2k+3}(1) &= \left( \frac{1}{3} + \frac{4}{9} - \frac{2}{3} \right) P_{2k+1}(1) + \frac{2}{3} \\ &= \frac{1}{9} P_{2k+1}(1) + \frac{2}{3} \end{aligned} $$
よって、$p_n = P_n(1)$ とすると、
$$ p_{2k+3} = \frac{1}{9} p_{2k+1} + \frac{2}{3} $$
が得られる。ここから先は解法1と同様に等比数列として処理すれば、同じ結論
$$ p_{2k+1} = \frac{3}{4} + \frac{1}{4} \left( \frac{1}{9} \right)^k $$
を得る。
解説
状態の遷移を扱う確率漸化式の典型問題である。 各操作において「必ず1枚の色が変わる」というルールから、黒色の板の枚数の偶奇(パリティ)が操作ごとに反転することに気づけるかどうかが鍵となる。これによって、奇数回の操作後には「黒が1枚」と「黒が3枚」という2つの状態しか存在し得ないことが分かり、漸化式を簡潔に立てることができる。 (1)は解法1のように裏返す対象を直接指定して数え上げる方が早く、(2)ではパリティと対称性を意識して漸化式を処理する手法が有効である。解法2のような状態全体の漸化式を初手で立ててしまう方針は、少し遠回りになるものの、(1)(2)を統一的に解けるため試験場での安定性が高い。
答え
(1)
$$ \frac{7}{27} $$
(2)
$$ p_{2k+1} = \frac{3}{4} + \frac{1}{4} \left( \frac{1}{9} \right)^k $$
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