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東京大学 1972年 理系 第6問 解説

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東京大学 1972年 理系 第6問 解説

方針・初手

点 $B$ を原点 $(0,0)$ とし、東方向を $x$ 軸の正の向き、北方向を $y$ 軸の正の向きとする座標系を設定する。

図より、各地点の座標は以下のようになる。 $A(0,4)$ $P_1(6,0), P_2(6,1), P_3(6,2), P_4(6,3), P_5(6,4)$ $P_6(5,4), P_7(4,4), P_8(3,4), P_9(2,4)$

$A(0,4)$ と $P_9(2,4)$ の間にある交差点を $C(1,4)$ とおく。 犯人は $P_j (1 \leqq j \leqq 9)$ に到達した時点で外国へ逃げおおせるため、そこから先の移動は考えない。各交差点から東($x$ 軸正方向)または北($y$ 軸正方向)へ進む確率を計算し、各 $P_j$ への到達確率 $p_j$ を求める。

ここで、上端の境界にある点 $A(0,4)$ および $C(1,4)$ における犯人の移動確率について、2つの解釈が成立する。 1つは、「北へ進む道がないため、確率 $1$ で道のある東へ進む」とする現実的な解釈である(これを解法1とする)。 もう1つは、問題文の「各交差点において、確率 $\frac{1}{2}$ ずつで」という記述を厳密に適用し、「道がなくても確率 $\frac{1}{2}$ で北を選び、その場合は逃走失敗(行き止まり)となる」とする解釈である(これを解法2とする)。 いずれの解釈においても、確率の大小関係から配置すべき3地点は一致する。

解法1

道が1本しかない交差点 $A(0,4)$ および $C(1,4)$ においては、確率 $1$ で道のある東方向へ進むものとして計算する。

原点 $(0,0)$ から点 $(x,y)$ に到達し、そこから指定の方向へ1区画進んで $P_j$ に到達する確率を求める。

$P_1(6,0)$ へは、$(5,0)$ から東へ進む場合のみ到達する。

$$ p_1 = {}_{5}\mathrm{C}_{0} \left(\frac{1}{2}\right)^5 \times \frac{1}{2} = \frac{1}{64} = \frac{4}{256} $$

同様に、$P_2, P_3, P_4$ へはそれぞれ $(5,1), (5,2), (5,3)$ から東へ進む場合のみ到達する。

$$ \begin{aligned} p_2 &= {}_{6}\mathrm{C}_{1} \left(\frac{1}{2}\right)^6 \times \frac{1}{2} = \frac{6}{128} = \frac{12}{256} \\ p_3 &= {}_{7}\mathrm{C}_{2} \left(\frac{1}{2}\right)^7 \times \frac{1}{2} = \frac{21}{256} \\ p_4 &= {}_{8}\mathrm{C}_{3} \left(\frac{1}{2}\right)^8 \times \frac{1}{2} = \frac{56}{512} = \frac{28}{256} \end{aligned} $$

$P_5(6,4)$ に到達するには、直前に $(5,4)$ または $(6,3)$ を通る必要があるが、これらはそれぞれ $P_6, P_4$ であり、到達した時点で逃走完了となるため、さらに進んで $P_5$ に到達することはない。

$$ p_5 = 0 $$

$P_6, P_7, P_8$ へは、それぞれ $(5,3), (4,3), (3,3)$ から北へ進む場合のみ到達する。

$$ \begin{aligned} p_6 &= {}_{8}\mathrm{C}_{3} \left(\frac{1}{2}\right)^8 \times \frac{1}{2} = \frac{56}{512} = \frac{28}{256} \\ p_7 &= {}_{7}\mathrm{C}_{3} \left(\frac{1}{2}\right)^7 \times \frac{1}{2} = \frac{35}{256} \\ p_8 &= {}_{6}\mathrm{C}_{3} \left(\frac{1}{2}\right)^6 \times \frac{1}{2} = \frac{20}{128} = \frac{40}{256} \end{aligned} $$

$P_9(2,4)$ へは、$(2,3)$ から北へ進む経路と、$C(1,4)$ から東へ進む経路がある。 $(2,3)$ から北へ進む確率は、

$$ {}_{5}\mathrm{C}_{3} \left(\frac{1}{2}\right)^5 \times \frac{1}{2} = \frac{10}{64} = \frac{40}{256} $$

$C(1,4)$ へ到達する経路は、$(0,3)$ から北へ進んで $A(0,4)$ に至りそこから東へ進む経路と、$(1,3)$ から北へ進む経路がある。$A(0,4)$ と $C(1,4)$ では確率 $1$ で東へ進むため、$C(1,4)$ への到達確率は、

$$ \left\{ {}_{3}\mathrm{C}_{3} \left(\frac{1}{2}\right)^3 \times \frac{1}{2} \right\} \times 1 + {}_{4}\mathrm{C}_{3} \left(\frac{1}{2}\right)^4 \times \frac{1}{2} = \frac{1}{16} + \frac{4}{32} = \frac{3}{16} = \frac{48}{256} $$

$C(1,4)$ からは確率 $1$ で東へ進み $P_9$ に到達するため、

$$ p_9 = \frac{40}{256} + \frac{48}{256} \times 1 = \frac{88}{256} $$

以上より、各確率の大小関係は $p_9 > p_8 > p_7 > p_4 = p_6 > p_3 > p_2 > p_1 > p_5$ となる。 犯人を捕える確率 $p$ が最大となるのは、確率が上位3つである $P_9, P_8, P_7$ に警官を配置したときである。

そのときの確率 $p$ の最大値は、

$$ p = p_9 + p_8 + p_7 = \frac{88 + 40 + 35}{256} = \frac{163}{256} $$

これを小数で計算すると、

$$ \frac{163}{256} = 0.63671875 $$

小数第3位を四捨五入して、小数第2位まで求めると $0.64$ となる。

解法2

問題文の「確率 $\frac{1}{2}$ ずつで真東または真北に通路をえらぶ」という条件を文字通りすべての交差点に適用し、道がない方向(北)を選んだ場合は逃走失敗になると解釈して計算する。

$p_1$ から $p_8$ までの確率は解法1と全く同じである。 $p_9$ については、$A(0,4)$ および $C(1,4)$ に到達した際にも確率 $\frac{1}{2}$ で東を選ぶと計算する。

$C(1,4)$ に到達する確率は、$(0,3)$ から北へ進んで $A(0,4)$ に至りそこから確率 $\frac{1}{2}$ で東へ進む経路と、$(1,3)$ から北へ進む経路を合わせて、

$$ \left\{ {}_{3}\mathrm{C}_{3} \left(\frac{1}{2}\right)^3 \times \frac{1}{2} \right\} \times \frac{1}{2} + {}_{4}\mathrm{C}_{3} \left(\frac{1}{2}\right)^4 \times \frac{1}{2} = \frac{1}{32} + \frac{4}{32} = \frac{5}{32} = \frac{40}{256} $$

$C(1,4)$ から確率 $\frac{1}{2}$ で東へ進み $P_9$ に到達するため、$(1,4)$ 経由の確率は、

$$ \frac{40}{256} \times \frac{1}{2} = \frac{20}{256} $$

したがって、$p_9$ は $(2,3)$ から北へ進む確率と合わせて、

$$ p_9 = \frac{40}{256} + \frac{20}{256} = \frac{60}{256} $$

この解釈においても、各確率の大小関係は $p_9 > p_8 > p_7 > p_4 = p_6 > \dots$ となり、上位3つは $P_9, P_8, P_7$ で変わらない。

そのときの確率 $p$ の最大値は、

$$ p = p_9 + p_8 + p_7 = \frac{60 + 40 + 35}{256} = \frac{135}{256} $$

これを小数で計算すると、

$$ \frac{135}{256} = 0.52734375 $$

小数第3位を四捨五入して、小数第2位まで求めると $0.53$ となる。

解説

本問は、「境界線上で道が1本しかない交差点」における確率の解釈によって、境界付近の $P_9$ への到達確率の計算結果が変わる問題である。 解法1は「道のない方向へは進めないため、確率1で道のある方向へ進む」という、逃走経路として現実的な解釈を採用している。この場合、すべての確率の和は $1$ になる。 解法2は「道がなくても確率1/2でその方向を選ぼうとし、結果的に行き止まりになる」というランダムウォークの厳密な解釈を採用している。 どちらの解釈を採用しても配置すべき3地点は一致するように問題の数値が調整されている。また、$P_5$ は手前の $P_4, P_6$ に到達した時点で逃走完了となるため、到達確率は $0$ になる点にも注意が必要である。

答え

配置すべき3地点: $P_9, P_8, P_7$ 最大値 $p$: $0.64$ (解法2の解釈による場合は $0.53$)

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