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東京大学 1976年 理系 第6問 解説

旧課程/行列・一次変換数学2/式と証明数学1/方程式不等式テーマ/軌跡・領域
東京大学 1976年 理系 第6問 解説

方針・初手

行列の積や行列式を計算する。 (i) では、集合 $R$ の要素を $x_1 I + y_1 A, x_2 I + y_2 A$ とおき、その積を展開する。その際、ケーリー・ハミルトンの定理を用いて $A^2$ を $I$ と $A$ の1次結合で表すことで、積が再び $x I + y A$ の形になることを示す。 (ii) では、行列 $x I + y A$ の行列式が $0$ にならない条件を立式する。$(x, y) \neq (0, 0)$ という条件下で、行列式の値が $0$ にならないような実数 $a, b$ の条件を求める。

解法1

(i)

$R$ に属する任意の2つの行列を $X, Y$ とすると、実数 $x_1, y_1, x_2, y_2$ を用いて次のように表せる。

$$ X = x_1 I + y_1 A, \quad Y = x_2 I + y_2 A $$

これらの積 $XY$ は以下のようになる。

$$ \begin{aligned} XY &= (x_1 I + y_1 A)(x_2 I + y_2 A) \\ &= x_1 x_2 I^2 + x_1 y_2 IA + x_2 y_1 AI + y_1 y_2 A^2 \\ &= x_1 x_2 I + (x_1 y_2 + x_2 y_1)A + y_1 y_2 A^2 \end{aligned} $$

ここで、行列 $A = \begin{pmatrix} 0 & a \\ 1 & b \end{pmatrix}$ に対してケーリー・ハミルトンの定理を適用すると、次の式が成り立つ。

$$ A^2 - (0 + b)A + (0 \cdot b - a \cdot 1)I = O $$

整理すると次のようになる。

$$ A^2 = aI + bA $$

これを $XY$ の式に代入する。

$$ \begin{aligned} XY &= x_1 x_2 I + (x_1 y_2 + x_2 y_1)A + y_1 y_2 (aI + bA) \\ &= (x_1 x_2 + a y_1 y_2)I + (x_1 y_2 + x_2 y_1 + b y_1 y_2)A \end{aligned} $$

$x_1, y_1, x_2, y_2, a, b$ はすべて実数であるため、$x_1 x_2 + a y_1 y_2$ および $x_1 y_2 + x_2 y_1 + b y_1 y_2$ も実数となる。 したがって、$XY$ は $xI + yA$ ($x, y$ は実数) の形で表されるので、$R$ に属する。(証明終)

(ii)

集合 $G$ は $R$ から零行列 $O$ を除いた集合である。 $G$ に属する任意の行列 $X$ は、$X = xI + yA$ と表され、$(x, y) \neq (0, 0)$ である。

$$ X = x \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} + y \begin{pmatrix} 0 & a \\ 1 & b \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} x & ay \\ y & x + by \end{pmatrix} $$

$X$ が逆行列をもつための条件は、$\det(X) \neq 0$ である。

$$ \det(X) = x(x + by) - ay \cdot y = x^2 + bxy - ay^2 $$

これが任意の $(x, y) \neq (0, 0)$ に対して $\det(X) \neq 0$ となるような $a, b$ の条件を求める。 すなわち、$(x, y) \neq (0, 0)$ において方程式 $x^2 + bxy - ay^2 = 0$ が成り立たないことと同値である。

$y = 0$ のとき、$x \neq 0$ であり、$x^2 = 0$ は成り立たない。 したがって、$y \neq 0$ の場合を考えればよい。 $x^2 + bxy - ay^2 = 0$ の両辺を $y^2 \neq 0$ で割る。

$$ \left(\frac{x}{y}\right)^2 + b\left(\frac{x}{y}\right) - a = 0 $$

ここで $t = \frac{x}{y}$ とおくと、$t$ はすべての実数値をとる。 この $t$ についての2次方程式 $t^2 + bt - a = 0$ が実数解をもたないことが求める条件である。 したがって、この2次方程式の判別式を $D$ とすると、$D < 0$ であればよい。

$$ D = b^2 - 4 \cdot 1 \cdot (-a) = b^2 + 4a < 0 $$

これより、点 $(a, b)$ の満たすべき条件は以下の不等式で表される。

$$ a < -\frac{1}{4}b^2 $$

この不等式が表す領域は、座標平面上で放物線 $a = -\frac{1}{4}b^2$ の左側の領域であり、境界線は含まない。

解説

2次の正方行列の基本事項と、2次形式を2次方程式に帰着させる典型的な問題である。 (i) においては、$A^2$ の処理が鍵となる。成分をすべて計算して示すことも可能だが、ケーリー・ハミルトンの定理を用いることで記述がシンプルになる。 (ii) においては、「任意の $(x, y) \neq (0, 0)$ に対して $x^2 + bxy - ay^2 \neq 0$」という条件の処理が重要である。$y=0$ と $y \neq 0$ で場合分けを行い、片方の文字で割って1変数の2次方程式の実数解の存在条件に帰着させるのが定石である。

答え

(i)

題意の通り、任意の $X, Y \in R$ について $XY \in R$ が示された。

(ii)

$a < -\frac{1}{4}b^2$ 図示する領域は、$ab$ 平面上の放物線 $a = -\frac{1}{4}b^2$ の左側の領域である(境界線を含まない)。

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