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大阪大学 1979年 理系 第3問 解説

旧課程/行列・一次変換数学2/式と証明数学1/方程式不等式テーマ/整式の証明テーマ/図形総合
大阪大学 1979年 理系 第3問 解説

方針・初手

問題の条件「$P$ の位置にかかわらず等式が成立する」ことは、等式が $x, y$ についての恒等式であることと同義である。まずは変換の式を代入し、両辺の係数を比較して $a, b, c, d$ の満たすべき条件式を導き出す。 その後、$A^2 = I$ (単位行列)となる条件と、導いた条件式を組み合わせて、必要十分条件を証明する。

解法1

変換の式は以下の通りである。

$$ \begin{cases} x' = ax + by \\ y' = cx + dy \end{cases} $$

これを条件式 $(x')^2 - (y')^2 = x^2 - y^2$ に代入する。

$$ (ax + by)^2 - (cx + dy)^2 = x^2 - y^2 $$

展開して $x, y$ について整理すると、以下のようになる。

$$ (a^2 - c^2)x^2 + 2(ab - cd)xy + (b^2 - d^2)y^2 = x^2 - y^2 $$

これがすべての実数 $x, y$ について成り立つ(恒等式である)ための必要十分条件は、両辺の係数が等しいことである。

$$ \begin{cases} a^2 - c^2 = 1 & \cdots \text{①} \\ ab - cd = 0 & \cdots \text{②} \\ b^2 - d^2 = -1 & \cdots \text{③} \end{cases} $$

また、$A^2 = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$ となる条件は、

$$ \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a^2+bc & b(a+d) \\ c(a+d) & d^2+bc \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} $$

より、各成分を比較して以下の関係式を得る。

$$ \begin{cases} a^2 + bc = 1 & \cdots \text{④} \\ b(a + d) = 0 & \cdots \text{⑤} \\ c(a + d) = 0 & \cdots \text{⑥} \\ bc + d^2 = 1 & \cdots \text{⑦} \end{cases} $$

ここから、①〜③が成り立つ前提のもとで、「$A^2 = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} \iff b+c=0$」であることを証明する。

(I) 必要性の証明($A^2 = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} \implies b+c=0$)

$A^2 = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$ が成り立つとき、⑤より $b(a+d) = 0$ であるから、$a+d \neq 0$ と $a+d = 0$ の場合で分ける。

(i)

$a+d \neq 0$ のとき

⑤、⑥より $b = 0$ かつ $c = 0$ である。 したがって、$b+c = 0$ が成り立つ。

(ii)

$a+d = 0$ のとき

$d = -a$ である。これを②に代入する。

$$ ab - c(-a) = 0 $$

$$ a(b + c) = 0 $$

ここで $a = 0$ と仮定すると、①より $-c^2 = 1$ となるが、これを満たす実数 $c$ は存在しないため矛盾する。 よって $a \neq 0$ であり、上の式から $b+c = 0$ が成り立つ。

以上より、いずれの場合も $b+c = 0$ が成り立つ。

(II) 十分性の証明($b+c=0 \implies A^2 = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$)

$b+c = 0$ すなわち $c = -b$ とする。これを②に代入する。

$$ ab - (-b)d = 0 $$

$$ b(a + d) = 0 $$

これより、$b = 0$ または $a+d = 0$ であるため、場合分けを行う。

(ア)

$b = 0$ のとき

$c = -0 = 0$ となる。 これを①、③に代入すると $a^2 = 1$、$d^2 = 1$ となる。 このとき、④、⑤、⑥、⑦の左辺を計算すると以下のようになる。

$$ \begin{aligned} a^2 + bc &= 1 + 0 = 1 \\ b(a + d) &= 0 \\ c(a + d) &= 0 \\ bc + d^2 &= 0 + 1 = 1 \end{aligned} $$

したがって④〜⑦をすべて満たすため、$A^2 = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$ が成り立つ。

(イ)

$a+d = 0$ のとき

$d = -a$ である。 また、$c = -b$ を①に代入すると $a^2 - b^2 = 1$ を得る。 このとき、④、⑤、⑥、⑦の左辺を計算すると以下のようになる。

$$ \begin{aligned} a^2 + bc &= a^2 - b^2 = 1 \\ b(a + d) &= 0 \\ c(a + d) &= 0 \\ bc + d^2 &= -b^2 + (-a)^2 = a^2 - b^2 = 1 \end{aligned} $$

したがって④〜⑦をすべて満たすため、$A^2 = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$ が成り立つ。

以上より、いずれの場合も $A^2 = \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix}$ が成り立つ。

(I), (II) より、題意は証明された。

解説

恒等式の処理と、連立方程式の同値変形・場合分けを正確に行えるかを問う問題である。 「必要で十分な条件であることを証明せよ」とあるため、必要性($\implies$)と十分性($\impliedby$)を独立して証明する構成をとると、論理の抜け漏れを防ぎやすい。 必要性の証明における「$a=0$ のとき実数解が存在しない」という隠れた条件の確認は、論理の厳密性を担保するうえで重要なポイントである。

答え

(証明は「解法1」に記載の通り)

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