東京大学 1986年 理系 第5問 解説

方針・初手
1回のじゃんけんで、「Aが勝つ(Aが移動)」「Bが勝つ(Bが移動)」「引き分け(どちらも移動しない)」の3つの事象があり、それぞれの確率はすべて $\frac{1}{3}$ である。これを $n$ 回繰り返す独立な反復試行として捉える。
(1) は、二人が同じベンチに座る条件を「二人の移動距離の和」に着目して考える。 (2) は、三項分布(多項分布)の確率をそのまま立式する。 (3) は、「ゲームの勝敗が決まらない」という動的な条件を、(2)の移動回数 $x, y$ を用いて「AもBも規定回数に達していない」という静的な条件に言い換えるのが最大のポイントである。
解法1
(1)
1回のじゃんけんで、AまたはBのいずれかが勝つ確率は $\frac{1}{3} + \frac{1}{3} = \frac{2}{3}$、引き分けとなる確率は $\frac{1}{3}$ である。 初期状態においてAとBの距離は $k$ であり、AまたはBが勝つたびに、勝った方がどちらであっても二人の距離は $1$ 縮まる。引き分けのときは距離は変わらない。 $n$ 回じゃんけんをした後に二人が同じベンチに座っているのは、二人の距離の縮みが合計 $k$ になったとき、すなわち「AまたはBが勝つ」という事象がちょうど $k$ 回起きたときである。 (このとき、Aが何回勝っていても、移動距離の合計が $k$ ならば必ず同じベンチで出会う。)
したがって、$n$ 回中ちょうど $k$ 回勝負がつく確率を求めればよく、$n \geqq k$ のとき、
$$ q = {}_n \mathrm{C}_{k} \left(\frac{2}{3}\right)^k \left(\frac{1}{3}\right)^{n-k} = \frac{{}_n \mathrm{C}_{k} \cdot 2^k}{3^n} $$
である。($n < k$ のときは物理的に到達できないため $q = 0$ となる。)
(2)
$n$ 回のじゃんけんにおいて、Aが $x$ 回勝ち、Bが $y$ 回勝ち、引き分けが $n-x-y$ 回である確率を求める。 これが起きるための条件は、$x \geqq 0, y \geqq 0$ かつ $x+y \leqq n$ である。 このとき、反復試行(三項分布)の確率より、
$$ p(x, y) = \frac{n!}{x!y!(n-x-y)!} \left(\frac{1}{3}\right)^x \left(\frac{1}{3}\right)^y \left(\frac{1}{3}\right)^{n-x-y} = \frac{n!}{x!y!(n-x-y)! \cdot 3^n} $$
となる。また、$x+y > n$ のときは $p(x, y) = 0$ である。
(3)
$k=3$ のとき、ゲームの勝敗が決まるのは、Aが3回勝つか、Bが3回勝った時点である。 じゃんけんで勝った回数は減ることがないため、「$n$ 回じゃんけんの後にまだ勝敗が決まらない」という事象は、「$n$ 回じゃんけんをした結果、Aの勝った回数 $x$ が2以下、かつ、Bの勝った回数 $y$ が2以下である」ことと同値である。 すなわち、求める確率 $p$ は、
$$ p = \sum_{x=0}^{2} \sum_{y=0}^{2} p(x, y) $$
で計算できる。 $n \geqq 3$ において、$x \leqq 2$ かつ $y \leqq 2$ を満たす $(x, y)$ の組について、$p(x, y)$ の計算における $\left(\frac{1}{3}\right)^n$ の係数(事象の起こる場合の数)をそれぞれ求めると以下のようになる。 ($n=3$ のとき $(x, y) = (2, 2)$ は $x+y = 4 > 3$ となり起こり得ないが、以下の式に $n=3$ を代入すると自動的に $0$ となるため、そのまま一般の $n$ の式として適用できる。)
- $(x, y) = (0, 0)$ のとき:$1$
- $(x, y) = (1, 0), (0, 1)$ のとき:それぞれ $n$
- $(x, y) = (2, 0), (0, 2)$ のとき:それぞれ $\frac{n(n-1)}{2}$
- $(x, y) = (1, 1)$ のとき:$n(n-1)$
- $(x, y) = (2, 1), (1, 2)$ のとき:それぞれ $\frac{n(n-1)(n-2)}{2}$
- $(x, y) = (2, 2)$ のとき:$\frac{n(n-1)(n-2)(n-3)}{4}$
これらの和を $S$ とおくと、
$$ \begin{aligned} S &= 1 + 2n + 2 \cdot \frac{n(n-1)}{2} + n(n-1) + 2 \cdot \frac{n(n-1)(n-2)}{2} + \frac{n(n-1)(n-2)(n-3)}{4} \\ &= 1 + 2n + 2n(n-1) + n(n-1)(n-2) + \frac{n(n-1)(n-2)(n-3)}{4} \\ &= (2n^2 + 1) + (n^3 - 3n^2 + 2n) + \frac{n^4 - 6n^3 + 11n^2 - 6n}{4} \\ &= (n^3 - n^2 + 2n + 1) + \frac{n^4 - 6n^3 + 11n^2 - 6n}{4} \\ &= \frac{4n^3 - 4n^2 + 8n + 4 + n^4 - 6n^3 + 11n^2 - 6n}{4} \\ &= \frac{n^4 - 2n^3 + 7n^2 + 2n + 4}{4} \end{aligned} $$
したがって、求める確率 $p$ はこれに $\left(\frac{1}{3}\right)^n$ を掛けて、
$$ p = \frac{n^4 - 2n^3 + 7n^2 + 2n + 4}{4 \cdot 3^n} $$
解説
ゲームのルールに沿った反復試行の確率問題である。 (1)では、AとBが「それぞれどちらへ進むか」を個別に分けるのではなく、「どちらかが勝てば二人の距離が1縮まる」という1つの事象にまとめる視点が重要である。 (3)は本問の最大の山場であるが、「途中で勝敗が決まらない」という動的な条件を、「最終的な勝ち回数がそれぞれ2回以下である」という静的な条件に言い換えられるかどうかが鍵を握る。言い換えさえできれば、あとは(2)で求めた $p(x,y)$ を用いて $3 \times 3 = 9$ 通りの場合分けを丁寧に足し合わせるだけであり、発想の難易度は大きく下がる。多項式を要領よく整理する計算力が求められる。
答え
(1)
$n \geqq k$ のとき
$$ q = \frac{{}_n \mathrm{C}_{k} \cdot 2^k}{3^n} $$
$n < k$ のとき
$$ q = 0 $$
(2)
$x+y \leqq n$ のとき
$$ p(x, y) = \frac{n!}{x!y!(n-x-y)! \cdot 3^n} $$
$x+y > n$ のとき
$$ p(x, y) = 0 $$
(3)
$$ p = \frac{n^4 - 2n^3 + 7n^2 + 2n + 4}{4 \cdot 3^n} $$
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