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東京大学 1987年 理系 第6問 解説

数学A/確率数学A/場合の数数学3/極限テーマ/場合分け
東京大学 1987年 理系 第6問 解説

方針・初手

正六角形の頂点から3点を選んで直角三角形になる条件を把握する。 円に内接する多角形において、直角三角形の斜辺は円の中心を通る対角線(直径)になることを利用する。 「直角三角形が存在する」条件よりも「存在しない」条件の方が事象が限定されて扱いやすいため、余事象の確率 $1-p_n$ を求める方針をとる。

解法1

直角三角形ができる条件

正六角形の頂点を円に内接させて考えると、直角三角形の斜辺は中心を通る対角線である。 中心を通る対角線の両端となる頂点のペアは $\{1, 4\}, \{2, 5\}, \{3, 6\}$ の3組である。 サイコロを $n$ 回振ってしるしがついた頂点の集合を $S$ とし、その要素数を $k$ ($1 \le k \le 6$) とする。 「しるしのついた三点を頂点とする直角三角形が存在する」とは、$S$ が上記3組のペアのいずれかを部分集合として含み、かつ頂点が3つ以上($k \ge 3$)あることと同値である。

余事象の検討

求める確率 $p_n$ の余事象、すなわち「直角三角形が存在しない」事象の確率 $1-p_n$ を考える。 直角三角形が存在しない条件は、出た目の種類数 $k$ によって以下のように分類できる。

(i) $k=1$ のとき 頂点が1つしかないため、直角三角形はできない。このような集合 $S$ の選び方は ${}_{6}\mathrm{C}_{1} = 6$ 通りである。

(ii) $k=2$ のとき 頂点が2つしかないので、それが対角線の両端であっても第3の頂点が存在せず、直角三角形はできない。このような集合 $S$ の選び方は ${}_{6}\mathrm{C}_{2} = 15$ 通りである。

(iii) $k=3$ のとき 3つの頂点が選ばれている状態で直角三角形ができないのは、どの対角線ペアも含まれない場合である。すなわち、$\{1, 4\}, \{2, 5\}, \{3, 6\}$ の3組からそれぞれ1つずつ頂点を選べばよい。このような集合 $S$ の選び方は $2^3 = 8$ 通りである。

(iv) $k \ge 4$ のとき 4つ以上の頂点を選ぶと、鳩の巣原理により、3組のペアのいずれかから必ず2つの頂点が選ばれる。つまり、対角線の両端が必ず含まれる。さらに $k \ge 4 \ge 3$ であるため残りの頂点も存在し、必ず直角三角形を作ることができる。よって、この場合に直角三角形が存在しない選び方は $0$ 通りである。

場合の数の計算

$n$ 回の試行で特定の $k$ 種類の目がすべて少なくとも1回は出るような場合の数を $N(k)$ とおく。 包除原理などを用いると、以下のようになる。

$$ N(1) = 1^n = 1 $$

$$ N(2) = 2^n - 2 \cdot 1^n = 2^n - 2 $$

$$ N(3) = 3^n - {}_{3}\mathrm{C}_{1} 2^n + {}_{3}\mathrm{C}_{2} 1^n = 3^n - 3 \cdot 2^n + 3 $$

これらを用いて、直角三角形が存在しないような目の出方の総数 $W$ を計算する。

$$ \begin{aligned} W &= 6 N(1) + 15 N(2) + 8 N(3) \\ &= 6 \cdot 1 + 15 (2^n - 2) + 8 (3^n - 3 \cdot 2^n + 3) \\ &= 6 + 15 \cdot 2^n - 30 + 8 \cdot 3^n - 24 \cdot 2^n + 24 \\ &= 8 \cdot 3^n - 9 \cdot 2^n \end{aligned} $$

(1) $p_3, p_4$ の計算

サイコロを $n$ 回振るときの全事象は $6^n$ 通りであるから、余事象の確率 $1-p_n$ は次のように表せる。

$$ 1-p_n = \frac{8 \cdot 3^n - 9 \cdot 2^n}{6^n} $$

したがって、求める確率 $p_n$ は以下のようになる。

$$ p_n = 1 - \frac{8 \cdot 3^n - 9 \cdot 2^n}{6^n} $$

$n=3$ のとき、

$$ p_3 = 1 - \frac{8 \cdot 3^3 - 9 \cdot 2^3}{6^3} = 1 - \frac{8 \cdot 27 - 9 \cdot 8}{216} = 1 - \frac{216 - 72}{216} = 1 - \frac{144}{216} = \frac{1}{3} $$

$n=4$ のとき、

$$ p_4 = 1 - \frac{8 \cdot 3^4 - 9 \cdot 2^4}{6^4} = 1 - \frac{8 \cdot 81 - 9 \cdot 16}{1296} = 1 - \frac{648 - 144}{1296} = 1 - \frac{504}{1296} = 1 - \frac{7}{18} = \frac{11}{18} $$

(2) 極限の計算

(1)で求めた $1-p_n$ の式を変形する。

$$ 1-p_n = \frac{8 \cdot 3^n - 9 \cdot 2^n}{6^n} = 8 \left(\frac{1}{2}\right)^n - 9 \left(\frac{1}{3}\right)^n = \left(\frac{1}{2}\right)^n \left\{ 8 - 9 \left(\frac{2}{3}\right)^n \right\} $$

両辺の自然対数をとる。

$$ \log(1 - p_n) = \log \left[ \left(\frac{1}{2}\right)^n \left\{ 8 - 9 \left(\frac{2}{3}\right)^n \right\} \right] = -n \log 2 + \log \left\{ 8 - 9 \left(\frac{2}{3}\right)^n \right\} $$

両辺を $n$ で割る。

$$ \frac{1}{n} \log(1 - p_n) = -\log 2 + \frac{1}{n} \log \left\{ 8 - 9 \left(\frac{2}{3}\right)^n \right\} $$

ここで、$n \to \infty$ のとき $\left(\frac{2}{3}\right)^n \to 0$ であるから、

$$ \lim_{n\to\infty} \log \left\{ 8 - 9 \left(\frac{2}{3}\right)^n \right\} = \log 8 $$

ゆえに、

$$ \lim_{n\to\infty} \frac{1}{n} \log \left\{ 8 - 9 \left(\frac{2}{3}\right)^n \right\} = 0 $$

したがって、求める極限は以下のようになる。

$$ \lim_{n\to\infty} \frac{1}{n} \log(1 - p_n) = -\log 2 $$

解説

直角三角形の成立条件を「中心を通る対角線の両端を含むこと」と「頂点が3つ以上選ばれること」に分解できるかが問われる問題である。 そのまま事象を数え上げようとすると非常に複雑になるため、余事象に注目するのが定石である。 選ばれた頂点の種類数 $k$ に着目して場合分けすることで、漏れなく重複なく数え上げることができる。$n$ 個のものから $k$ 種類を選ぶ全射の個数 $N(k)$ の導出は、包除原理を用いる典型的な処理である。 (2)の極限の計算では、指数関数を含む式の対数をとる際、底が最大の項でくくり出すという基本操作ができれば容易に求まる。

答え

(1)

$$ p_3 = \frac{1}{3}, \quad p_4 = \frac{11}{18} $$

(2)

$$ -\log 2 $$

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