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東京大学 2017年 理系 第2問 解説

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東京大学 2017年 理系 第2問 解説

方針・初手

1回の移動で点 $P$ は $x$ 軸方向または $y$ 軸方向にそれぞれ $\pm 1$ だけ移動する。移動の総回数は6回であるため、各方向の移動回数を文字で置いて、条件を満たす移動の組み合わせを数え上げる方法が基本となる。

また、斜め方向の座標軸 $u=x+y, v=x-y$ を設定することで、2次元のランダムウォークを「独立した2つの1次元ランダムウォーク」に帰着させる鮮やかな解法もある。本稿では両方のアプローチを解説する。

解法1

6回の移動における各方向への移動回数を、次のように定める。

ここで、$a, b, c, d$ は0以上の整数であり、合計6回移動するので以下の式が成り立つ。

$$ a + b + c + d = 6 $$

各移動は $\frac{1}{4}$ の確率で選ばれるため、6回の移動経路はすべて等確率であり、その総数は $4^6$ 通りである。また、6秒後の点 $P$ の座標 $(x, y)$ は次のように表される。

$$ \begin{aligned} x &= a - b \\ y &= c - d \end{aligned} $$

(1)

6秒後の点 $P$ が直線 $y = x$ 上にあるための条件は $x = y$、すなわち以下が成り立つことである。

$$ a - b = c - d $$

これを変形すると、次式を得る。

$$ a + d = b + c $$

$a + b + c + d = 6$ であるから、これを満たすのは以下のときである。

$$ a + d = 3 \quad \text{かつ} \quad b + c = 3 $$

これは、全6回の移動のうち「右または下」への移動が合計3回、「左または上」への移動が合計3回であることを意味する。 このような移動経路の総数は、以下のようにして求められる。

  1. 6回の移動の中から「右または下」の移動となる3回を選ぶ(${}_{6}\mathrm{C}_{3}$ 通り)
  2. 選ばれた3回について、それぞれ「右」か「下」かを選ぶ($2^3$ 通り)
  3. 残りの3回について、それぞれ「左」か「上」かを選ぶ($2^3$ 通り)

したがって、条件を満たす経路の数は以下の通りとなる。

$$ {}_{6}\mathrm{C}_{3} \times 2^3 \times 2^3 = 20 \times 8 \times 8 = 1280 \text{ (通り)} $$

求める確率は、これを全事象 $4^6$ 通りで割ることで得られる。

$$ \frac{1280}{4^6} = \frac{1280}{4096} = \frac{5}{16} $$

(2)

6秒後の点 $P$ が原点 $O(0, 0)$ にあるための条件は、$x = 0$ かつ $y = 0$、すなわち以下が成り立つことである。

$$ a = b \quad \text{かつ} \quad c = d $$

これを $a + b + c + d = 6$ に代入すると、$2a + 2c = 6$ より以下を得る。

$$ a + c = 3 $$

$a, c$ は0以上の整数であるから、$(a, c)$ の組とそれに対応する $(a, b, c, d)$ の組は次の4パターンのいずれかとなる。

それぞれの組に対する経路の数は、同じものを含む順列を用いて以下のように計算できる。

$$ \begin{aligned} (3, 3, 0, 0) \text{ の経路数} &: \frac{6!}{3!3!0!0!} = 20 \\ (2, 2, 1, 1) \text{ の経路数} &: \frac{6!}{2!2!1!1!} = 180 \\ (1, 1, 2, 2) \text{ の経路数} &: \frac{6!}{1!1!2!2!} = 180 \\ (0, 0, 3, 3) \text{ の経路数} &: \frac{6!}{0!0!3!3!} = 20 \end{aligned} $$

これらを合計すると、条件を満たす経路の総数となる。

$$ 20 + 180 + 180 + 20 = 400 \text{ (通り)} $$

したがって、求める確率は以下の通りである。

$$ \frac{400}{4^6} = \frac{400}{4096} = \frac{25}{256} $$

解法2

点 $P$ の座標 $(x, y)$ に対して、新たな座標 $(u, v)$ を次のように定義する。

$$ \begin{aligned} u &= x + y \\ v &= x - y \end{aligned} $$

1回の移動における $(x, y)$ の変化と、それに伴う $(u, v)$ の変化を調べると以下のようになる。

これらはそれぞれ確率 $\frac{1}{4}$ で起こる。 この変化に注目すると、$u$ は1回の移動で $+1$ または $-1$ の変化を確率 $\frac{1}{2}$ ずつで起こし、$v$ も全く同様に $+1$ または $-1$ の変化を確率 $\frac{1}{2}$ ずつで起こすことがわかる。 さらに、$u$ の変化($+1$ か $-1$ か)と $v$ の変化($+1$ か $-1$ か)の組み合わせは、上記の4パターンそれぞれに1対1で対応しており、すべて確率 $\frac{1}{4}$ であることから、$u$ の動きと $v$ の動きは互いに独立した1次元ランダムウォークであるとみなせる。

(1)

点 $P$ が直線 $y = x$ 上にある条件は、以下のように言い換えられる。

$$ x - y = 0 \iff v = 0 $$

6回移動した後に $v = 0$ となるのは、独立した1次元ランダムウォークにおいて $+1$ が3回、$-1$ が3回出た場合である。その確率は反復試行の確率より次のように求められる。

$$ {}_{6}\mathrm{C}_{3} \left(\frac{1}{2}\right)^3 \left(\frac{1}{2}\right)^3 = 20 \times \frac{1}{64} = \frac{5}{16} $$

(2)

点 $P$ が原点 $O$ にある条件は、以下のように言い換えられる。

$$ x = 0 \quad \text{かつ} \quad y = 0 \iff u = 0 \quad \text{かつ} \quad v = 0 $$

$u$ の動きと $v$ の動きは独立であるため、求める確率は $P(u=0) \times P(v=0)$ として計算できる。 (1) と同様に考えると、6回移動した後に $u = 0$ となる確率も $\frac{5}{16}$ である。

したがって、求める確率は以下の通りである。

$$ \frac{5}{16} \times \frac{5}{16} = \frac{25}{256} $$

解説

本問のような2次元の格子点上のランダムウォークは、大学入試における確率分野の頻出テーマである。

解法1のように多項定理・同じものを含む順列を用いて愚直に数え上げるのが最も確実で標準的なアプローチであるが、特定の方程式(今回は $a+d = b+c$ など)を満たす組み合わせを漏れなく見つけ出す際に計算ミスが起こりやすい。(1) のように二項係数の積に分解できることに気付けば計算量を大幅に削減できる。

一方、解法2で示した $u = x+y, v = x-y$ という座標変換(45度回転と定数倍)は、上下左右への等確率な移動を扱う際の強力な定石である。この変換により、事象が「2つの独立したコイントス問題」に完全に分離されるため、計算過程が劇的に簡略化される。難関大の確率問題ではこの見方が要求される場面も多いため、ぜひ習得しておきたい。

答え

(1)

$$ \frac{5}{16} $$

(2)

$$ \frac{25}{256} $$

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