東京大学 1992年 理系 第3問 解説

方針・初手
- 与えられた4点が同一球面上にあるという条件から、球の中心の座標を設定し、$a$ と $b$ の間に成り立つ関係式を導き出す。
- 四面体 $PQRS$ の体積 $V$ を底面積と高さから求め、同時に各面の面積を計算して表面積 $S$ を求める。これらを用いて、内接球の半径 $r$ を $a, b$ を用いて表す。
- 得られた $r$ の式について、導出した $a, b$ の関係式および相加平均と相乗平均の大小関係などを用いて評価し、目標の不等式を証明する。
解法1
4点 $P(0, 0, 0)$, $Q(a, 0, 0)$, $R(0, 1, 0)$, $S(0, 1, b)$ が半径1の同一球面上にある。この球の中心を $C(x_c, y_c, z_c)$ とおく。 球面上の点から中心までの距離の2乗は半径の2乗に等しいので、$CP^2 = CQ^2 = CR^2 = CS^2 = 1$ が成り立つ。
点 $P$ について、
$$ x_c^2 + y_c^2 + z_c^2 = 1 \quad \cdots (1) $$
点 $Q$ について、
$$ (x_c - a)^2 + y_c^2 + z_c^2 = 1 $$
(1)を用いて整理すると、$-2ax_c + a^2 = 0$。$a > 0$ であるから、$x_c = \frac{a}{2}$。
点 $R$ について、
$$ x_c^2 + (y_c - 1)^2 + z_c^2 = 1 $$
同様に展開して(1)を用いると、$-2y_c + 1 = 0 \implies y_c = \frac{1}{2}$。
点 $S$ について、
$$ x_c^2 + (y_c - 1)^2 + (z_c - b)^2 = 1 $$
$y_c = \frac{1}{2}$ であるから $(y_c - 1)^2 = y_c^2 = \frac{1}{4}$ となり、(1)と辺々引くと、
$$ (z_c - b)^2 - z_c^2 = 0 \implies -2bz_c + b^2 = 0 $$
$b > 0$ であるから、$z_c = \frac{b}{2}$。
以上より、球の中心は $C\left(\frac{a}{2}, \frac{1}{2}, \frac{b}{2}\right)$ である。これを(1)に代入すると、
$$ \left(\frac{a}{2}\right)^2 + \left(\frac{1}{2}\right)^2 + \left(\frac{b}{2}\right)^2 = 1 $$
$$ a^2 + b^2 = 3 \quad \cdots (2) $$
次に、四面体 $PQRS$ の各辺をベクトルで表す。
$$ \vec{PQ} = (a, 0, 0), \quad \vec{PR} = (0, 1, 0), \quad \vec{PS} = (0, 1, b) $$
$$ \vec{RQ} = (a, -1, 0), \quad \vec{RS} = (0, 0, b) $$
各面をなす三角形が直角三角形であることを内積を用いて確認する。
$$ \vec{PQ} \cdot \vec{PR} = 0 \implies \angle QPR = 90^\circ $$
$$ \vec{PQ} \cdot \vec{PS} = 0 \implies \angle QPS = 90^\circ $$
$$ \vec{PR} \cdot \vec{RS} = 0 \cdot 0 + 1 \cdot 0 + 0 \cdot b = 0 \implies \angle PRS = 90^\circ $$
$$ \vec{RQ} \cdot \vec{RS} = a \cdot 0 + (-1) \cdot 0 + 0 \cdot b = 0 \implies \angle QRS = 90^\circ $$
これにより、四面体の表面積 $S_{total}$ は4つの直角三角形の面積の和として計算できる。
$$ \triangle PQR = \frac{1}{2}|\vec{PQ}||\vec{PR}| = \frac{a}{2} $$
$$ \triangle PQS = \frac{1}{2}|\vec{PQ}||\vec{PS}| = \frac{1}{2}a\sqrt{1+b^2} $$
$$ \triangle PRS = \frac{1}{2}|\vec{PR}||\vec{RS}| = \frac{b}{2} $$
$$ \triangle QRS = \frac{1}{2}|\vec{RQ}||\vec{RS}| = \frac{1}{2}\sqrt{a^2+1} \cdot b $$
$$ S_{total} = \frac{1}{2} \left( a + b + a\sqrt{1+b^2} + b\sqrt{a^2+1} \right) $$
また、$\triangle PQR$ を底面とすると、頂点 $S$ から $xy$ 平面までの距離は $z$ 座標の $b$ なので、体積 $V$ は以下のようになる。
$$ V = \frac{1}{3} \triangle PQR \cdot b = \frac{ab}{6} $$
四面体の内接球の半径 $r$ と表面積 $S_{total}$、体積 $V$ の間には $V = \frac{1}{3}S_{total}r$ の関係があるため、
$$ \frac{1}{r} = \frac{S_{total}}{3V} = \frac{\frac{1}{2}(a + b + a\sqrt{1+b^2} + b\sqrt{a^2+1})}{\frac{ab}{2}} $$
$$ \frac{1}{r} = \frac{1}{b} + \frac{1}{a} + \frac{\sqrt{1+b^2}}{b} + \frac{\sqrt{a^2+1}}{a} = \frac{1}{a} + \frac{1}{b} + \sqrt{\frac{1}{b^2}+1} + \sqrt{\frac{1}{a^2}+1} \quad \cdots (3) $$
(3)より、一つ目の不等式の左辺は次のように変形できる。
$$ \left( \frac{1}{r} - \frac{1}{a} - \frac{1}{b} \right)^2 = \left( \sqrt{\frac{1}{a^2}+1} + \sqrt{\frac{1}{b^2}+1} \right)^2 $$
$$ = \left(\frac{1}{a^2}+1\right) + \left(\frac{1}{b^2}+1\right) + 2\sqrt{\left(\frac{1}{a^2}+1\right)\left(\frac{1}{b^2}+1\right)} $$
$$ = 2 + \frac{a^2+b^2}{a^2b^2} + 2\sqrt{\frac{1}{a^2b^2} + \frac{a^2+b^2}{a^2b^2} + 1} $$
ここで、(2)の $a^2+b^2 = 3$ を代入する。
$$ = 2 + \frac{3}{a^2b^2} + 2\sqrt{\frac{4}{a^2b^2} + 1} \quad \cdots (4) $$
相加平均と相乗平均の大小関係より、$a^2 + b^2 \geqq 2\sqrt{a^2b^2} = 2ab$ であるから、
$$ 3 \geqq 2ab \implies ab \leqq \frac{3}{2} $$
両辺は正なので2乗して逆数をとると、
$$ \frac{1}{a^2b^2} \geqq \frac{4}{9} $$
$x = \frac{1}{a^2b^2}$ とおくと、$x \geqq \frac{4}{9}$ であり、(4)の式は $2 + 3x + 2\sqrt{4x+1}$ と表せる。これは $x > 0$ において単調に増加するから、$x = \frac{4}{9}$ のときに最小値をとる。
最小値は、
$$ 2 + 3 \left(\frac{4}{9}\right) + 2\sqrt{4 \left(\frac{4}{9}\right) + 1} = 2 + \frac{4}{3} + 2\sqrt{\frac{25}{9}} = \frac{10}{3} + 2 \cdot \frac{5}{3} = \frac{20}{3} $$
したがって、
$$ \left( \frac{1}{r} - \frac{1}{a} - \frac{1}{b} \right)^2 \geqq \frac{20}{3} \quad \cdots (5) $$
が成り立つ(等号成立は $a=b=\sqrt{\frac{3}{2}}$ のとき)。
続いて、二つ目の不等式を示す。(3)の右辺の残りの部分について評価する。
$$ \left( \frac{1}{a} + \frac{1}{b} \right)^2 = \frac{a^2+b^2+2ab}{a^2b^2} = \frac{3+2ab}{a^2b^2} = \frac{3}{a^2b^2} + \frac{2}{ab} $$
$t = \frac{1}{ab}$ とおくと、$ab \leqq \frac{3}{2}$ より $t \geqq \frac{2}{3}$ である。
$$ \left( \frac{1}{a} + \frac{1}{b} \right)^2 = 3t^2 + 2t $$
$3t^2 + 2t$ は $t > 0$ で単調増加であるから、$t = \frac{2}{3}$ のときに最小値をとる。
最小値は、
$$ 3 \left(\frac{2}{3}\right)^2 + 2 \left(\frac{2}{3}\right) = \frac{4}{3} + \frac{4}{3} = \frac{8}{3} $$
$a, b$ は正の実数であるから $\frac{1}{a} + \frac{1}{b} > 0$ より、
$$ \frac{1}{a} + \frac{1}{b} \geqq \sqrt{\frac{8}{3}} = 2\sqrt{\frac{2}{3}} \quad \cdots (6) $$
(5)について、平方根の中身は正であるため、
$$ \frac{1}{r} - \frac{1}{a} - \frac{1}{b} \geqq \sqrt{\frac{20}{3}} = 2\sqrt{\frac{5}{3}} \quad \cdots (7) $$
(6)と(7)の辺々を足し合わせると、
$$ \frac{1}{r} \geqq 2\sqrt{\frac{2}{3}} + 2\sqrt{\frac{5}{3}} $$
が成り立つことが示された(等号成立は $a=b=\sqrt{\frac{3}{2}}$ のとき)。
解説
空間座標における四面体の内接球の半径を求める基本手順(体積を底面・高さから求める方法と、表面積と内接球の半径から求める方法の2通りで表す)を正確に実行できるかが鍵となる問題である。 各面が直角三角形になることに気づくことで、表面積の計算量が劇的に削減される。ベクトルの内積計算を活用して面の形状を把握するアプローチは、空間図形の問題において非常に有効である。 後半の不等式証明では、導出した条件式 $a^2+b^2=3$ を利用して式を1変数の関数に帰着させ、相加平均と相乗平均の大小関係から変数の取りうる範囲を絞り込むという、不等式評価の典型的な手法を用いている。
答え
略(解法1の証明を参照)
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