東京大学 2002年 理系 第3問 解説

方針・初手
球面 $S$ と、線分 $OP$ を直径とする球面の交わりを含む平面 $L$ の方程式を求めることから始める。点から平面への距離の公式を用いて $PQ \leqq AR$ を $x, y, z$ を用いた不等式に翻訳し、$V$ の形状を把握する。
解法1
球面 $S$ の方程式は、中心が原点 $O(0,0,0)$、半径が $OA=1$ であることから、
$$ x^2+y^2+z^2=1 $$
である。
また、点 $P(x,y,z)$ を端点とする線分 $OP$ を直径とする球面を $S'$ とすると、その方程式は、
$$ (X-0)(X-x) + (Y-0)(Y-y) + (Z-0)(Z-z) = 0 $$
すなわち、
$$ X^2 - xX + Y^2 - yY + Z^2 - zZ = 0 $$
となる。
球面 $S$ 上の点は $X^2+Y^2+Z^2=1$ を満たすので、球面 $S$ と球面 $S'$ の交わり(円)を含む平面 $L$ の方程式は、これら2つの方程式の辺々を引くことで得られる。
$$ xX+yY+zZ=1 $$
すなわち、
$$ xX+yY+zZ-1=0 $$
これが平面 $L$ の方程式である。
点 $P$ は $S$ の外側にあるため、
$$ x^2+y^2+z^2 > 1 $$
を満たす。 点 $P(x,y,z)$ から平面 $L$ への距離 $PQ$ は、点と平面の距離の公式より、
$$ PQ = \frac{|x^2+y^2+z^2-1|}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}} = \frac{x^2+y^2+z^2-1}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}} $$
($x^2+y^2+z^2 > 1$ より絶対値記号をそのまま外した。)
点 $A(0,0,-1)$ から平面 $L$ への距離 $AR$ は、同様に、
$$ AR = \frac{|x \cdot 0 + y \cdot 0 + z \cdot (-1) - 1|}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}} = \frac{|-z-1|}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}} = \frac{|z+1|}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}} $$
条件 $PQ \leqq AR$ より、
$$ \frac{x^2+y^2+z^2-1}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}} \leqq \frac{|z+1|}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}} $$
分母は正であるから、両辺に $\sqrt{x^2+y^2+z^2}$ を掛けて、
$$ x^2+y^2+z^2-1 \leqq |z+1| $$
この不等式について、絶対値の中身の正負で場合分けを行う。
(i)
$z+1 \geqq 0$、すなわち $z \geqq -1$ のとき 不等式は $x^2+y^2+z^2-1 \leqq z+1$ となる。整理して平方完成すると、
$$ x^2+y^2+z^2-z \leqq 2 $$
$$ x^2+y^2+\left(z-\frac{1}{2}\right)^2 \leqq \frac{9}{4} $$
これは中心 $\left(0, 0, \frac{1}{2}\right)$、半径 $\frac{3}{2}$ の球の内部および境界を表す。 この球に含まれる点の $z$ 座標の最小値は $z = \frac{1}{2} - \frac{3}{2} = -1$ であるから、この領域のすべての点は条件 $z \geqq -1$ を満たす。
(ii)
$z+1 < 0$、すなわち $z < -1$ のとき 不等式は $x^2+y^2+z^2-1 \leqq -z-1$ となる。整理して平方完成すると、
$$ x^2+y^2+z^2+z \leqq 0 $$
$$ x^2+y^2+\left(z+\frac{1}{2}\right)^2 \leqq \frac{1}{4} $$
これは中心 $\left(0, 0, -\frac{1}{2}\right)$、半径 $\frac{1}{2}$ の球の内部および境界を表す。 この球に含まれる点の $z$ 座標の最小値は $z = -\frac{1}{2} - \frac{1}{2} = -1$ であるから、条件 $z < -1$ を満たす点はこの領域内に存在しない。
以上より、不等式を満たす領域は (i) で求めた球の内部および境界である。 点 $P$ は $S$ の外側にあるという条件 $x^2+y^2+z^2 > 1$ を合わせると、点 $P$ の動く範囲 $V$ は、
$$ x^2+y^2+\left(z-\frac{1}{2}\right)^2 \leqq \frac{9}{4} \quad \text{かつ} \quad x^2+y^2+z^2 > 1 $$
を満たす領域である。
次に $V$ の体積を求める。 大球 $x^2+y^2+\left(z-\frac{1}{2}\right)^2 \leqq \frac{9}{4}$ の不等式は展開すると $x^2+y^2+z^2 \leqq z+2$ と同値である。 小球 $x^2+y^2+z^2 \leqq 1$ 内の任意の点について、$z \geqq -1$ であるから $z+2 \geqq 1$ となり、
$$ x^2+y^2+z^2 \leqq 1 \leqq z+2 $$
が成り立つ。すなわち、小球は完全に大球の内部に含まれている。 したがって、$V$ の体積は、半径 $\frac{3}{2}$ の大球の体積から、半径 $1$ の小球の体積を引いたものに等しい。 $V$ の体積を $W$ とおくと、
$$ W = \frac{4}{3}\pi \left(\frac{3}{2}\right)^3 - \frac{4}{3}\pi \cdot 1^3 = \frac{9}{2}\pi - \frac{4}{3}\pi = \frac{19}{6}\pi $$
最後に、$W < 10$ であることを示す。 円周率について $\pi < 3.15 = \frac{63}{20}$ が成り立つことを用いると、
$$ W = \frac{19}{6}\pi < \frac{19}{6} \cdot \frac{63}{20} = \frac{19 \cdot 21}{2 \cdot 20} = \frac{399}{40} = 9.975 $$
$$ 9.975 < 10 $$
であるから、$V$ の体積は $10$ より小さいことが示された。
解説
- 2つの球面の交線を含む平面の方程式は、2つの球面の方程式を引き算することで簡潔に導出できる。空間図形における円を含む平面の方程式を求める際の定石である。
- 単に大球の体積から小球の体積を引き算するだけでなく、大球の中に小球が完全に含まれていること(包含関係)を式で示して証明を補強することが論理的に重要である。
- $\frac{19}{6}\pi < 10$ の評価において、$\pi < 3.15$ などの適切な近似値を用いて示す手法は、計算評価問題における典型的な処理である。
答え
点 $P$ の動く範囲 $V$ は、
$$ x^2+y^2+\left(z-\frac{1}{2}\right)^2 \leqq \frac{9}{4} \quad \text{かつ} \quad x^2+y^2+z^2 > 1 $$
を満たす領域である。
略(解法1の証明を参照)
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











