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東京大学 1988年 理系 第2問 解説

数学1/立体図形数学C/空間ベクトルテーマ/空間図形テーマ/面積・体積テーマ/最大・最小
東京大学 1988年 理系 第2問 解説

方針・初手

空間内の凸多面体をある平面 $\alpha$ に正射影したときの面積 $S$ は、多面体の各面の面積と法線ベクトルを用いて計算できるという性質(コーシーの表面積公式の特殊な場合)を利用する。正四面体を立方体に内接するように座標空間に配置し、法線ベクトルを成分表示することで、面積 $S$ を投影方向を表す単位ベクトルの成分の関数として定式化する。

解法1

空間内の閉じた凸多面体を、単位法線ベクトル $\vec{n}$ をもつ平面 $\alpha$ に正射影することを考える。多面体の各面の面積を $S_i$、外向き単位法線ベクトルを $\vec{n_i}$ とすると、投影された図形の面積 $S$ は、光の進行方向から見て表側にある面の正射影の面積の和に等しく、また裏側にある面の正射影の面積の和にも等しい。したがって、すべての面の正射影の面積の絶対値の和の半分として次のように表せる。

$$ S = \frac{1}{2} \sum S_i |\vec{n} \cdot \vec{n_i}| $$

一辺の長さが 1 の正四面体 $V$ は、一辺の長さが $\frac{1}{\sqrt{2}}$ の立方体に内接する。この立方体の中心を原点 $\mathrm{O}$ とし、各辺が座標軸に平行になるように置くと、正四面体の 4 つの頂点は以下のように設定できる。

$$ \mathrm{A}\left(a, a, a\right), \quad \mathrm{B}\left(a, -a, -a\right), \quad \mathrm{C}\left(-a, a, -a\right), \quad \mathrm{D}\left(-a, -a, a\right) \quad \left(ただし a = \frac{1}{2\sqrt{2}}\right) $$

このとき、正四面体の 4 つの面はすべて合同な正三角形であり、各面の面積 $S_0$ は

$$ S_0 = \frac{\sqrt{3}}{4} \times 1^2 = \frac{\sqrt{3}}{4} $$

である。各面の外向き単位法線ベクトル $\vec{n_1}, \vec{n_2}, \vec{n_3}, \vec{n_4}$ は、原点 $\mathrm{O}$ から正四面体の各頂点とは逆の方向(立方体の残りの 4 頂点の方向)を向くため、成分表示すると以下のようになる。

$$ \vec{n_1} = \frac{1}{\sqrt{3}}(1, 1, 1), \quad \vec{n_2} = \frac{1}{\sqrt{3}}(1, -1, -1), \quad \vec{n_3} = \frac{1}{\sqrt{3}}(-1, 1, -1), \quad \vec{n_4} = \frac{1}{\sqrt{3}}(-1, -1, 1) $$

平面 $\alpha$ の単位法線ベクトルを $\vec{n} = (x, y, z)$ とする。$|\vec{n}| = 1$ より $x^2 + y^2 + z^2 = 1$ である。正射影の面積 $S$ は

$$ \begin{aligned} S &= \frac{1}{2} \times \frac{\sqrt{3}}{4} \sum_{i=1}^4 |\vec{n} \cdot \vec{n_i}| \\ &= \frac{\sqrt{3}}{8} \cdot \frac{1}{\sqrt{3}} \left( |x+y+z| + |x-y-z| + |-x+y-z| + |-x-y+z| \right) \\ &= \frac{1}{8} \left( |x+y+z| + |x-y-z| + |x-y+z| + |x+y-z| \right) \end{aligned} $$

となる。ここで関数 $f(x,y,z) = |x+y+z| + |x-y-z| + |x-y+z| + |x+y-z|$ とおく。$x, y, z$ の符号の反転や順序の入れ替えに対して $f(x,y,z)$ の値は不変であるため、最大値および最小値を求めるにあたっては対称性より $x \ge y \ge z \ge 0$ と仮定してよい。このとき、$x \ge y, z \ge 0$ より

$$ x+y+z \ge 0, \quad x-y+z \ge 0, \quad x+y-z \ge 0 $$

が成り立つから、絶対値を外して整理すると

$$ f(x,y,z) = 3x + y + z + |x-y-z| $$

となる。ここで $x$ と $y+z$ の大小関係により場合分けを行う。

(i)

$x \ge y+z$ のとき

$|x-y-z| = x-y-z$ より

$$ f(x,y,z) = 3x + y + z + (x-y-z) = 4x $$

条件 $x^2 + y^2 + z^2 = 1$、$y \ge z \ge 0$ のもとで $x$ の範囲を考える。最大値は $y=z=0$ のとき $x=1$ となり、$f(x,y,z) = 4$ である。最小値は $x$ が最小となるとき、すなわち $y^2+z^2$ が最大となるときである。$x \ge y+z$ の両辺を2乗して $x^2 \ge (y+z)^2$ となり、$1 - y^2 - z^2 \ge y^2 + 2yz + z^2$ から $2(y^2+yz+z^2) \le 1$ となる。等号が成立する境界上で $y^2+z^2 = \frac{1}{2} - yz$ であり、$y \ge z \ge 0$ より $yz \ge 0$ だから、$y^2+z^2$ の最大値は $z=0$ のとき $\frac{1}{2}$ である。このとき $x^2 = \frac{1}{2}$ より $x = \frac{1}{\sqrt{2}}$ であり、$f(x,y,z)$ の最小値は $4 \times \frac{1}{\sqrt{2}} = 2\sqrt{2}$ となる。

(ii)

$x \le y+z$ のとき

$|x-y-z| = -x+y+z$ より

$$ f(x,y,z) = 3x + y + z + (-x+y+z) = 2(x+y+z) $$

条件 $x^2 + y^2 + z^2 = 1$ のもとで $x+y+z$ の最大値は $x=y=z=\frac{1}{\sqrt{3}}$ のとき $\sqrt{3}$ であり、この点は $x \le y+z$ を満たす。よって $f(x,y,z)$ の最大値は $2\sqrt{3}$ である。最小値は領域の境界においてとる。境界 $x=y+z$ 上では (i) と接続するため $2\sqrt{2}$ である。もう一つの境界 $x=y$ (このとき $2x^2+z^2=1$)では、$f = 2(2x+z)$ となり、区間の端点 $z=0$(すなわち $x=y=\frac{1}{\sqrt{2}}$)で最小値 $2\sqrt{2}$ をとる。したがって、この場合の最小値は $2\sqrt{2}$ である。

以上 (i), (ii) より、$f(x,y,z)$ の最大値は $4$、最小値は $2\sqrt{2}$ である。 $S = \frac{1}{8} f(x,y,z)$ であるから、面積 $S$ の最大値と最小値は以下のようになる。

$$ S_{\mathrm{max}} = \frac{1}{8} \times 4 = \frac{1}{2} $$

$$ S_{\mathrm{min}} = \frac{1}{8} \times 2\sqrt{2} = \frac{\sqrt{2}}{4} $$

解法2

正四面体を平面 $\alpha$ に正射影したときの図形は、正四面体の向きによって四角形または三角形になる。この幾何学的な特徴を利用して面積 $S$ を求める。正四面体の 6 つの辺のうち、対向する 2 辺(ねじれの位置にある辺)は 3 組あり、各組の辺のベクトルを空間ベクトルとして外積をとる。一辺の長さが 1 の正四面体では、対向する 2 辺は互いに直交し、その距離は $\frac{1}{\sqrt{2}}$ である。

3 組の対向辺の組から作られる 3 つの外積ベクトルを $\vec{N_1}, \vec{N_2}, \vec{N_3}$ とすると、これらは互いに直交する長さ 1 の単位ベクトルとなる。これらを座標軸として、平面 $\alpha$ の単位法線ベクトルを $\vec{n} = (x, y, z)$ とする($x^2+y^2+z^2=1$)。対称性から $x \ge y \ge z \ge 0$ としてよい。

(i) 投影図が四角形になる場合

正四面体の 3 組の対向辺のうち、1 組の投影が四角形の 2 つの対角線になる。空間の 2 つの線分が平面になす四角形の面積は、元の 2 つの線分のベクトルの外積と平面の法線ベクトル $\vec{n}$ の内積の絶対値の半分となる。したがって、3 組の対向辺から得られる四角形の面積の候補はそれぞれ $S_1 = \frac{1}{2}|x|, S_2 = \frac{1}{2}|y|, S_3 = \frac{1}{2}|z|$ であり、実際の投影図の面積はこのうち最大のものになる。

$$ S = \max(S_1, S_2, S_3) = \frac{1}{2} x $$

これが成り立つのは、他の頂点が四角形の外側にあり交差しない条件、すなわち $x \ge y+z$ のときである。

(ii) 投影図が三角形になる場合

正四面体の 1 つの面が完全に表側から見え、他の 3 つの面が裏側になる場合、投影図は三角形になる。正四面体の 4 つの面の法線ベクトルは、$\vec{N_1}, \vec{N_2}, \vec{N_3}$ を用いて $\frac{1}{\sqrt{3}}(\pm 1, \pm 1, \pm 1)$ の方向にあり、面積は $\frac{\sqrt{3}}{4}$ であるから、その投影面積は

$$ S = \frac{\sqrt{3}}{4} \left| \vec{n} \cdot \frac{1}{\sqrt{3}}(1, 1, 1) \right| = \frac{1}{4}(x+y+z) $$

となる。これが成り立つのは、投影図が四角形にならない条件、すなわち $x \le y+z$ のときである。

以上の幾何学的考察から、任意の方向 $\vec{n}$ に対して面積 $S$ は

$$ S = \max\left( \frac{1}{2}x, \frac{1}{4}(x+y+z) \right) $$

と表される。この $S$ の最大値と最小値を条件 $x^2+y^2+z^2=1$($x \ge y \ge z \ge 0$)のもとで求める。

$S_A = \frac{1}{2}x$ について、最大値は $x=1$ のとき $\frac{1}{2}$ である。 $S_B = \frac{1}{4}(x+y+z)$ について、最大値は $x=y=z=\frac{1}{\sqrt{3}}$ のとき $\frac{\sqrt{3}}{4}$ である。 両者を比較して、全体での最大値は $\frac{1}{2}$ である。

最小値については、$\max(S_A, S_B)$ を最小化する。これは境界 $S_A = S_B$、すなわち $x = y+z$ のときに達成される。 $x=y+z$ のとき、$S = \frac{1}{2}x$ である。さらに

$$ 1 = x^2 + y^2 + z^2 = (y+z)^2 + y^2 + z^2 = 2x^2 - 2yz $$

となる。$y \ge z \ge 0$ より $yz \ge 0$ であるから

$$ 1 = 2x^2 - 2yz \le 2x^2 $$

したがって

$$ x \ge \frac{1}{\sqrt{2}} $$

を得る。等号は $yz=0$、すなわち $z=0$ かつ $x=y$ のときに成立する。よって、$x$ の最小値は $\frac{1}{\sqrt{2}}$ である。 このとき、最小値は $S = \frac{1}{2} \times \frac{1}{\sqrt{2}} = \frac{\sqrt{2}}{4}$ となる。

解説

空間図形の正射影の面積を求めるにあたり、解法1のように「多面体の正射影の面積は、各面の面積と法線ベクトルから計算される」という事実(コーシーの表面積公式)を知っていると、極めて機械的かつ確実に見通しよく計算を進めることができる。立体の設定においても、正四面体を直接扱うのではなく立方体に内接させて座標をとる工夫が計算量を大幅に削減する。 解法2は、投影される図形が四角形になるか三角形になるかで場合分けを行う、幾何学的直感に基づくアプローチである。対向辺の外積ベクトルが正規直交基底をなすという正四面体の美しい性質を用いることで、これも代数的な最大最小問題に帰着できる。

答え

最大値 $\frac{1}{2}$、最小値 $\frac{\sqrt{2}}{4}$

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