東京大学 1996年 理系 第4問 解説

方針・初手
$a_n$ が $0$ 以外の値 $i$ ($1 \leqq i \leqq 6$) をとるための条件を、各回の出目 $c_1, c_2, \cdots, c_n$ に関する条件に言い換えて確率を求める。 (1) では定義に従って期待値 $E(n)$ を立式し、極限をとる。 (2) では「条件を満たすものの個数の期待値」を求めるため、期待値の線形性(和の期待値は期待値の和になる性質)を利用する。
解法1
(1)
$a_n = i$ ($i = 1, 2, 3, 4, 5, 6$) となるのは、$c_n = i$ であり、かつ $1 \leqq k \leqq n-1$ を満たすすべての $k$ に対して $c_k \leqq i$ となるときである。 サイコロを振る各回の試行は独立であるから、
$$ P(a_n = i) = P(c_n = i) \prod_{k=1}^{n-1} P(c_k \leqq i) $$
となる。 サイコロの目について $P(c_n = i) = \frac{1}{6}$ であり、$P(c_k \leqq i) = \frac{i}{6}$ であるから、
$$ P(a_n = i) = \frac{1}{6} \left(\frac{i}{6}\right)^{n-1} $$
と表せる。(これは $n=1$ のとき $P(a_1 = i) = \frac{1}{6}$ となり成立する。) したがって、$a_n$ の期待値 $E(n)$ は、
$$ E(n) = \sum_{i=1}^{6} i \cdot P(a_n = i) = \sum_{i=1}^{6} i \cdot \frac{1}{6} \left(\frac{i}{6}\right)^{n-1} $$
ここで、$n \to \infty$ の極限を考える。 $1 \leqq i \leqq 5$ のとき、$0 < \frac{i}{6} < 1$ であるから、$\lim_{n \to \infty} \left(\frac{i}{6}\right)^{n-1} = 0$ となる。 $i = 6$ のときは、常に $\frac{i}{6} = 1$ であるから、$\lim_{n \to \infty} \left(\frac{6}{6}\right)^{n-1} = 1$ となる。 ゆえに、
$$ \lim_{n \to \infty} E(n) = \lim_{n \to \infty} \left\{ \sum_{i=1}^{5} \frac{i}{6} \left(\frac{i}{6}\right)^{n-1} + 6 \cdot \frac{1}{6} \left(\frac{6}{6}\right)^{n-1} \right\} = 0 + 1 = 1 $$
(2)
各 $k$ ($1 \leqq k \leqq n$) について、$a_k = 2$ となるとき $1$、そうでないとき $0$ となる確率変数 $X_k$ を導入する。 $N(n)$ は $a_1, a_2, \cdots, a_n$ のうち $2$ に等しいものの個数の期待値であるから、期待値の線形性より、
$$ N(n) = E\left(\sum_{k=1}^{n} X_k\right) = \sum_{k=1}^{n} E(X_k) $$
ここで、$X_k$ は $1$ または $0$ の値をとるので、
$$ E(X_k) = 1 \cdot P(X_k = 1) + 0 \cdot P(X_k = 0) = P(a_k = 2) $$
である。 (1) の結果より、
$$ P(a_k = 2) = \frac{1}{6} \left(\frac{2}{6}\right)^{k-1} = \frac{1}{6} \left(\frac{1}{3}\right)^{k-1} $$
よって、$N(n)$ は、
$$ N(n) = \sum_{k=1}^{n} \frac{1}{6} \left(\frac{1}{3}\right)^{k-1} $$
これは初項 $\frac{1}{6}$、公比 $\frac{1}{3}$ の等比数列の第 $n$ 項までの和である。 $n \to \infty$ のとき、公比の絶対値は $1$ より小さいため、無限等比級数として収束する。
$$ \lim_{n \to \infty} N(n) = \sum_{k=1}^{\infty} \frac{1}{6} \left(\frac{1}{3}\right)^{k-1} = \frac{\frac{1}{6}}{1 - \frac{1}{3}} = \frac{\frac{1}{6}}{\frac{2}{3}} = \frac{1}{4} $$
解説
(1) は確率変数の定義に従って $P(a_n = i)$ を正しく立式できるかが問われている。各回の試行が独立であることを利用して、積の形で確率を求めるのが定石である。極限の計算では、公比の大きさによって収束先が変わることに注意して処理する。
(2) は「条件を満たすものの個数の期待値」を求める問題であり、指示関数(ある条件を満たすときに $1$、満たさないときに $0$ をとる確率変数)を利用し、期待値の線形性(和の期待値は期待値の和)を用いることで計算を大幅に簡略化できる。直接的に「ちょうど $m$ 回だけ $a_k=2$ となる確率」を求めて期待値を計算しようとすると非常に複雑になるため、この発想は難関大の確率分野において必須のテクニックである。
答え
(1)
$\lim_{n \to \infty} E(n) = 1$
(2)
$\lim_{n \to \infty} N(n) = \frac{1}{4}$
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