東京大学 1996年 理系 第5問 解説

方針・初手
水面の上昇について、水の体積が不変であることを利用して等式を立てる。時刻 $t$ において水面が $z = f(t)$ に上昇したということは、元の水面 $z = 0$ から現在の水面 $z = f(t)$ の間にある容器の空間(断面積 $\pi R^2$ の円柱部分)の体積が、水中に沈んでいる回転体の体積と等しくなっていることを意味する。 回転体の降下による座標の変化に注意して、水中に沈んでいる部分の体積を積分で表し、両辺を $t$ で微分することで $r(z)$ を求める。
解法1
時刻 $t \geqq 0$ において、回転体は毎秒 $1$ の速さで下に動くため、初期に $z = 0$ にあった回転体の先端は $z = -t$ にある。 したがって、空間内の座標 $z$ にある回転体の部分は、回転体自身の座標系では $z + t$ の高さに対応する。 ゆえに、高さ $z$ における回転体の断面積は $\pi \{r(z+t)\}^2$ である。
時刻 $t$ において、水面は $z = f(t)$ にあり、回転体が水に沈んでいる部分は $-t \leqq z \leqq f(t)$ の範囲である。 この水に沈んでいる回転体の体積 $V(t)$ は、
$$ V(t) = \int_{-t}^{f(t)} \pi \{r(z+t)\}^2 \, dz $$
ここで、$u = z + t$ と置換すると、$du = dz$ であり、積分区間は $z = -t \to f(t)$ のとき $u = 0 \to f(t)+t$ となるから、
$$ V(t) = \int_{0}^{f(t)+t} \pi \{r(u)\}^2 \, du $$
と表せる。
一方、水自身の体積は変化しない。水面が $z=0$ から $z=f(t)$ に上昇したことによる見かけの体積の増加分は、容器の断面積が $\pi R^2$ であることから $\pi R^2 f(t)$ である。 これが水に沈んでいる回転体の体積 $V(t)$ に等しいので、
$$ \pi R^2 f(t) = \pi \int_{0}^{f(t)+t} \{r(u)\}^2 \, du $$
すなわち、
$$ R^2 f(t) = \int_{0}^{f(t)+t} \{r(u)\}^2 \, du $$
が成り立つ。
与えられた $f(t) = e^t - t - 1$ を代入すると、$f(t) + t = e^t - 1$ であるから、
$$ R^2 (e^t - t - 1) = \int_{0}^{e^t - 1} \{r(u)\}^2 \, du $$
となる。
この両辺を $t$ について微分する。右辺の微分には合成関数の微分法を用いると、
$$ R^2 (e^t - 1) = \{r(e^t - 1)\}^2 \cdot \frac{d}{dt}(e^t - 1) $$
$$ R^2 (e^t - 1) = \{r(e^t - 1)\}^2 e^t $$
が得られる。
ここで、$z = e^t - 1$ とおくと、$t \geqq 0$ のとき $z \geqq 0$ のすべての実数値をとり、$e^t = z + 1$ となる。これを上の式に代入して、
$$ R^2 z = \{r(z)\}^2 (z + 1) $$
$$ \{r(z)\}^2 = \frac{R^2 z}{z + 1} $$
問題の条件より、$z \geqq 0$ に対して $r(z) \geqq 0$、$R > 0$ であるから、
$$ r(z) = R \sqrt{\frac{z}{z + 1}} $$
となる。
最後に条件の確認を行う。 $r(0) = R \sqrt{0} = 0$ となり、$r(0) = 0$ を満たす。 また、$z \geqq 0$ において、
$$ \frac{z}{z + 1} = 1 - \frac{1}{z + 1} $$
であり、$0 < \frac{1}{z+1} \leqq 1$ より $0 \leqq 1 - \frac{1}{z+1} < 1$ であるから、
$$ 0 \leqq \sqrt{\frac{z}{z+1}} < 1 $$
これに $R > 0$ を掛けて、
$$ 0 \leqq R \sqrt{\frac{z}{z + 1}} < R $$
となり、$0 \leqq r(z) < R$ も満たす。さらに $r(z)$ は $z \geqq 0$ で連続である。
以上より、求める関数 $r(z)$ は条件をすべて満たす。
解説
「水に物体を沈めたときの水面の上昇」という物理的な状況を、数学の積分と体積の式に翻訳する定石問題である。 ポイントは以下の2点である。
- 回転体の座標変換:回転体が毎秒 $1$ で降下するため、時刻 $t$ での空間座標 $z$ が回転体におけるどの高さに対応するかを正しく把握し、$z+t$ と表現できるか。
- 体積保存の法則:水が増えたり減ったりしないことから、「上昇した水面の体積(円柱形)=沈んだ部分の回転体の体積」という等式を立てられるか。
積分区間に変数 $t$ が含まれる関数の微分では、$\frac{d}{dt} \int_{a}^{g(t)} h(u) \, du = h(g(t))g'(t)$ を用いる。本問は $f(t) + t = e^t - 1$ となり、微分した後の式が非常に綺麗にまとまるように作問されている。最後に問題文で要求されている $r(z)$ の条件を満たすかの確認も忘れないようにしたい。
答え
$$ r(z) = R \sqrt{\frac{z}{z + 1}} $$
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