北海道大学 1983年 文系 第3問 解説

方針・初手
対数の底を $2$ に統一し、$x = \log_2 t$ とおくことで代数的な式に帰着させるのが基本方針である。 (1) では相加平均と相乗平均の大小関係を利用する。 (2) では (1) の結果を誘導として生かすため、定数 $k$ を分離する形に変形するアプローチ(解法1)と、2次関数の最小値問題として扱うアプローチ(解法2)が考えられる。
解法1
(1) $t > 1$ より、$\log_2 t > 0$ である。 底の変換公式を用いると、$f(t)$ は次のように変形できる。
$$ f(t) = \log_2 t + \frac{\log_2 4}{\log_2 t} = \log_2 t + \frac{2}{\log_2 t} $$
ここで、$\log_2 t > 0$ および $\frac{2}{\log_2 t} > 0$ であるから、相加平均と相乗平均の大小関係より、以下の不等式が成り立つ。
$$ \log_2 t + \frac{2}{\log_2 t} \geqq 2 \sqrt{\log_2 t \cdot \frac{2}{\log_2 t}} = 2\sqrt{2} $$
等号が成立するのは、$\log_2 t = \frac{2}{\log_2 t}$ のときである。
$$ (\log_2 t)^2 = 2 $$
$\log_2 t > 0$ より $\log_2 t = \sqrt{2}$、すなわち $t = 2^{\sqrt{2}}$ となる。 これは $t > 1$ を満たしている。 したがって、$f(t)$ の最小値は $2\sqrt{2}$ である。
(2) 与えられた不等式は以下の通りである。
$$ k \log_2 t < (\log_2 t)^2 - \log_2 t + 2 $$
$t > 1$ より $\log_2 t > 0$ であるため、両辺を $\log_2 t$ で割ると不等号の向きは変わらず、次のように変形できる。
$$ k < \log_2 t - 1 + \frac{2}{\log_2 t} $$
右辺を整理すると、以下のようになる。
$$ k < \left( \log_2 t + \frac{2}{\log_2 t} \right) - 1 $$
(1) より、$f(t) = \log_2 t + \frac{2}{\log_2 t}$ は $t > 1$ において最小値 $2\sqrt{2}$ をとる。 したがって、右辺の関数の最小値は $2\sqrt{2} - 1$ である。 $t > 1$ となるすべての $t$ に対して不等式が成り立つための条件は、定数 $k$ が右辺の最小値よりもさらに小さいことである。
$$ k < 2\sqrt{2} - 1 $$
解法2
(2) の別解 $x = \log_2 t$ とおく。$t > 1$ より $x > 0$ である。 与えられた不等式は、次のように表される。
$$ k x < x^2 - x + 2 $$
これを整理して、以下の $x$ についての2次不等式が $x > 0$ で常に成り立つ条件を求める。
$$ x^2 - (k+1)x + 2 > 0 $$
左辺を $g(x)$ とおき、平方完成する。
$$ g(x) = \left( x - \frac{k+1}{2} \right)^2 + 2 - \frac{(k+1)^2}{4} $$
$y = g(x)$ のグラフは下に凸の放物線であり、軸は $x = \frac{k+1}{2}$ である。 軸の位置によって場合分けを行う。
(i) 軸が $x \leqq 0$ の範囲にあるとき、すなわち $\frac{k+1}{2} \leqq 0$ より $k \leqq -1$ の場合
$x > 0$ の範囲において $g(x)$ は単調に増加する。 $g(0) = 2 > 0$ であるから、$x > 0$ において常に $g(x) > 0$ は成り立つ。 よって、$k \leqq -1$ は条件を満たす。
(ii) 軸が $x > 0$ の範囲にあるとき、すなわち $\frac{k+1}{2} > 0$ より $k > -1$ の場合
$x > 0$ における $g(x)$ の最小値は、頂点の $y$ 座標となる。 常に $g(x) > 0$ が成り立つための条件は、この最小値が正となることである。
$$ 2 - \frac{(k+1)^2}{4} > 0 $$
式を整理する。
$$ (k+1)^2 < 8 $$
$$ -2\sqrt{2} < k+1 < 2\sqrt{2} $$
$$ -2\sqrt{2} - 1 < k < 2\sqrt{2} - 1 $$
場合分けの条件 $k > -1$ と合わせると、$-1 < k < 2\sqrt{2} - 1$ となる。
(i) と (ii) より、求める $k$ の範囲はこれらを合わせた範囲となる。
$$ k < 2\sqrt{2} - 1 $$
解説
対数を含む関数の最大・最小や不等式の証明では、対数の底をそろえて置換し、代数的な問題に帰着させるのが定石である。 (1) は相加・相乗平均の大小関係を用いる典型的な問題である。等号成立条件の確認を忘れないようにしたい。 (2) は「すべての変数に対して不等式が成り立つ」という絶対不等式の問題である。解法1のように定数 $k$ を分離して (1) の結果を利用する(定数分離)のが最も簡素で、出題者の誘導にも沿っている。解法2のように2次関数として扱い、軸の位置で場合分けをして最小値を評価する方法も、汎用性が高い重要な考え方である。
答え
(1) $2\sqrt{2}$ (2) $k < 2\sqrt{2} - 1$
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