名古屋大学 1986年 文系 第2問 解説

方針・初手
まず、与えられた対数不等式を解き、$x$ の値の範囲を求める。このとき、真数条件と底の条件による大小関係の逆転に注意する。 次に、求まった $x$ の範囲にあるすべての $x$ について $x^2 - 2ax \geqq 1$ が成り立つような $a$ の条件を求める。この後半部分は、変数を分離して定数 $a$ についての条件に帰着させる「定数分離」を用いると見通しが良い。
解法1
まず、対数不等式を満たす $x$ の範囲を求める。 真数条件は $3x^2 - 10x + 7 > 0$ すなわち $(3x-7)(x-1) > 0$ である。 これを解くと $x < 1, \frac{7}{3} < x$ となり、前提条件 $0 < x < 1$ のもとで常に成り立つ。
底 $x$ について $0 < x < 1$ であるから、不等式 $\log_x(3x^2 - 10x + 7) \geqq 2$ は次のように変形できる。
$$ \log_x(3x^2 - 10x + 7) \geqq \log_x x^2 $$
底が $1$ より小さいので真数の大小関係は逆転し、
$$ 3x^2 - 10x + 7 \leqq x^2 $$
$$ 2x^2 - 10x + 7 \leqq 0 $$
$2x^2 - 10x + 7 = 0$ の解は $x = \frac{5 \pm \sqrt{11}}{2}$ であるから、この不等式の解は
$$ \frac{5 - \sqrt{11}}{2} \leqq x \leqq \frac{5 + \sqrt{11}}{2} $$
ここで、$3 < \sqrt{11} < 4$ より $1 < 5 - \sqrt{11} < 2$ であるため、$\frac{1}{2} < \frac{5 - \sqrt{11}}{2} < 1$ となる。 また、$8 < 5 + \sqrt{11} < 9$ より $4 < \frac{5 + \sqrt{11}}{2} < \frac{9}{2}$ となる。 よって、$0 < x < 1$ との共通範囲をとると、対数不等式を満たす $x$ の範囲は
$$ \frac{5 - \sqrt{11}}{2} \leqq x < 1 $$
となる。以下、$\alpha = \frac{5 - \sqrt{11}}{2}$ とおく。
次に、$\alpha \leqq x < 1$ を満たすすべての $x$ に対して $x^2 - 2ax \geqq 1$ が成り立つような $a$ の範囲を求める。 $x > 0$ であるから、不等式を $2a$ について解く形に変形すると、
$$ 2a \leqq x - \frac{1}{x} $$
となる。 $g(x) = x - \frac{1}{x}$ とおくと、$\alpha \leqq x < 1$ を満たすすべての $x$ に対して $2a \leqq g(x)$ が成り立つ条件は、
$$ 2a \leqq (\alpha \leqq x < 1 \text{ における } g(x) \text{ の最小値}) $$
である。 $x > 0$ において、$g'(x) = 1 + \frac{1}{x^2} > 0$ であるから、$g(x)$ は単調増加関数である。 よって、$g(x)$ は $x = \alpha$ のとき最小値 $g(\alpha)$ をとる。したがって求める条件は
$$ 2a \leqq g(\alpha) $$
である。ここで、
$$ \frac{1}{\alpha} = \frac{2}{5 - \sqrt{11}} = \frac{2(5 + \sqrt{11})}{25 - 11} = \frac{5 + \sqrt{11}}{7} $$
であるから、
$$ \begin{aligned} g(\alpha) &= \frac{5 - \sqrt{11}}{2} - \frac{5 + \sqrt{11}}{7} \\ &= \frac{7(5 - \sqrt{11}) - 2(5 + \sqrt{11})}{14} \\ &= \frac{35 - 7\sqrt{11} - 10 - 2\sqrt{11}}{14} \\ &= \frac{25 - 9\sqrt{11}}{14} \end{aligned} $$
となる。ゆえに、
$$ 2a \leqq \frac{25 - 9\sqrt{11}}{14} $$
$$ a \leqq \frac{25 - 9\sqrt{11}}{28} $$
これが求める $a$ の範囲である。
解法2
後半部分($a$ の範囲を求める部分)についての別解を示す。
$\alpha \leqq x < 1$ (ただし $\alpha = \frac{5 - \sqrt{11}}{2}$)を満たすすべての $x$ に対して、不等式 $x^2 - 2ax - 1 \geqq 0$ が成り立つような $a$ の範囲を求める。 $f(x) = x^2 - 2ax - 1$ とおく。 $y = f(x)$ は下に凸の放物線であり、$f(0) = -1 < 0$ であるから、方程式 $f(x) = 0$ は正の解と負の解を $1$ つずつもつ。 その正の解を $\beta$ とすると、$x > 0$ において $f(x) \geqq 0$ となる $x$ の範囲は $x \geqq \beta$ である。
したがって、$\alpha \leqq x < 1$ を満たすすべての $x$ に対して $f(x) \geqq 0$ が常に成り立つための条件は、 $\beta \leqq \alpha$ が成り立つこと、すなわち
$$ f(\alpha) \geqq 0 $$
となることである。 $f(\alpha) = \alpha^2 - 2a\alpha - 1 \geqq 0$ より、$\alpha > 0$ であることに注意して $a$ について解くと、
$$ 2a \leqq \alpha - \frac{1}{\alpha} $$
となる。以下、解法1と同様の計算により、
$$ a \leqq \frac{25 - 9\sqrt{11}}{28} $$
を得る。
解説
本問は「対数不等式の解法」と「絶対不等式の成立条件」の融合問題である。 対数不等式を解く際は、底が $0 < x < 1$ であるため、真数の大小関係が逆転することに注意が必要である。また、真数条件の確認も忘れてはならない。 後半の「すべての $x$ に対して不等式が成り立つ」という条件の処理については、変数を分離して「(定数) $\leqq$ (関数の最小値)」に帰着させる定数分離の考え方(解法1)が非常に有効である。 解法2のように2次関数のグラフの配置問題として考えることも可能であるが、その際は $y$ 切片が負($f(0) < 0$)であることに気づくことで、煩雑な軸の位置による場合分けを回避できる。
答え
$$ a \leqq \frac{25 - 9\sqrt{11}}{28} $$
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