北海道大学 1962年 理系 第2問 解説

方針・初手
与えられた連等式を $= k$ とおき、各文字についての関係式を導出する。そこから辺々の差をとることで因数分解可能な形を作り、$abc$ の値や対称式の値を求めていく。また、冒頭の $(a-b)^2 + (b-c)^2 + (c-a)^2 \neq 0$ は、「$a, b, c$ がすべて同時に等しくなることはない」ということを意味する重要な条件であるため、途中の場合分けや解の吟味で活用する。
解法1
(1)
与えられた連等式の値を $k$ とおく。
$$ a(1+c) = b(1+a) = c(1+b) = k $$
これを展開して整理すると、以下の3式を得る。
$$ \begin{cases} a + ac = k & \cdots \text{①} \\ b + ab = k & \cdots \text{②} \\ c + bc = k & \cdots \text{③} \end{cases} $$
① $-$ ② より、
$$ a - b + a(c - b) = 0 $$
$$ a - b = a(b - c) \quad \cdots \text{④} $$
同様にして、② $-$ ③ および ③ $-$ ① より、
$$ b - c = b(c - a) \quad \cdots \text{⑤} $$
$$ c - a = c(a - b) \quad \cdots \text{⑥} $$
④、⑤、⑥の辺々を掛け合わせると、
$$ (a-b)(b-c)(c-a) = abc(b-c)(c-a)(a-b) \quad \cdots \text{⑦} $$
ここで、$a=b$ と仮定する。⑤より $b-c = b(c-b)$ すなわち $(b-c)(b+1) = 0$ となる。 もし $b=c$ であれば $a=b=c$ となり、条件 $(a-b)^2 + (b-c)^2 + (c-a)^2 \neq 0$ に反する。 よって $b-c \neq 0$ となり、$b = -1$ を得る。このとき仮定より $a = b = -1$ である。 ①に $a = -1, b = -1$ を代入すると $-1 - c = k$ となり、③に代入すると $c - c = k$ すなわち $k = 0$ となる。 $k = 0$ より $-1 - c = 0$ すなわち $c = -1$ となり、結局 $a=b=c=-1$ となって条件に反する。 ゆえに $a \neq b$ である。対称性から同様の議論により、$b \neq c$ かつ $c \neq a$ も成り立つ。
したがって、$(a-b)(b-c)(c-a) \neq 0$ であるから、⑦の両辺を $(a-b)(b-c)(c-a)$ で割って、
$$ abc = 1 \quad \cdots \text{⑧} $$
次に、①、②、③の辺々を足し合わせると、
$$ a + b + c + ab + bc + ca = 3k \quad \cdots \text{⑨} $$
また、①、②、③の元の形である $a(1+c)=k$ などの辺々を掛け合わせると、
$$ abc(1+a)(1+b)(1+c) = k^3 $$
左辺を展開して⑧を用いると、
$$ 1 \cdot (1 + a + b + c + ab + bc + ca + abc) = k^3 $$
$$ 2 + (a + b + c + ab + bc + ca) = k^3 $$
これに⑨を代入すると、
$$ 2 + 3k = k^3 $$
$$ k^3 - 3k - 2 = 0 $$
$$ (k+1)^2 (k-2) = 0 $$
よって、$k = -1, 2$ を得る。
$k = 2$ と仮定する。①を変形すると $a + ac = 2$ すなわち $c = \frac{2-a}{a}$ である(⑧より $a \neq 0$)。 同様に②より $b(1+a) = 2$ すなわち $b = \frac{2}{1+a}$ である($a = -1$ とすると $0 = 2$ となり不適なので $a \neq -1$)。 これらを③に代入すると、
$$ \frac{2-a}{a} \left( 1 + \frac{2}{1+a} \right) = 2 $$
$$ \frac{2-a}{a} \cdot \frac{a+3}{a+1} = 2 $$
$$ (2-a)(a+3) = 2a(a+1) $$
$$ -a^2 - a + 6 = 2a^2 + 2a $$
$$ 3a^2 + 3a - 6 = 0 $$
$$ (a+2)(a-1) = 0 $$
したがって $a = 1, -2$ である。 $a = 1$ のとき、対称の操作から $a = b = c = 1$ となり、条件 $(a-b)^2 + (b-c)^2 + (c-a)^2 \neq 0$ に反する。 $a = -2$ のとき、同様に計算すると $a = b = c = -2$ となり、やはり条件に反する。 ゆえに $k = 2$ は不適である。
以上より、$k = -1$ と定まる。求める値は $a(1+c) = -1$ である。
(2)
条件より $a+b+c = ab+bc+ca$ である。 (1)の⑨に $k = -1$ を代入すると、
$$ (a+b+c) + (ab+bc+ca) = -3 $$
これと $a+b+c = ab+bc+ca$ を連立すると、
$$ 2(a+b+c) = -3 $$
$$ a+b+c = -\frac{3}{2} $$
よって、$ab+bc+ca = -\frac{3}{2}$ も成り立つ。 さらに(1)の⑧より $abc = 1$ であるから、$a, b, c$ は $t$ についての3次方程式
$$ t^3 - (a+b+c)t^2 + (ab+bc+ca)t - abc = 0 $$
すなわち
$$ t^3 + \frac{3}{2}t^2 - \frac{3}{2}t - 1 = 0 $$
の3つの解である。両辺を2倍して整理すると、
$$ 2t^3 + 3t^2 - 3t - 2 = 0 $$
因数定理を用いると $t=1$ を解にもつことがわかるため、左辺を因数分解して、
$$ (t-1)(2t^2 + 5t + 2) = 0 $$
$$ (t-1)(2t+1)(t+2) = 0 $$
これより、$t = 1, -\frac{1}{2}, -2$ を得る。 $a, b, c$ はこれら3つの値の並べ替えであるが、元の連等式 $a(1+c) = -1$、$b(1+a) = -1$、$c(1+b) = -1$ を満たすように対応を決定する。
(i) $a = 1$ のとき
$1 \cdot (1+c) = -1$ より $c = -2$。残る $b$ は $-\frac{1}{2}$ となる。 このとき $b(1+a) = -\frac{1}{2} \cdot 2 = -1$ となり、条件をすべて満たす。 よって、$(a, b, c) = \left( 1, -\frac{1}{2}, -2 \right)$。
(ii) $a = -\frac{1}{2}$ のとき
$-\frac{1}{2}(1+c) = -1$ より $1+c = 2$ すなわち $c = 1$。残る $b$ は $-2$ となる。 このとき $b(1+a) = -2 \cdot \frac{1}{2} = -1$ となり、条件をすべて満たす。 よって、$(a, b, c) = \left( -\frac{1}{2}, -2, 1 \right)$。
(iii) $a = -2$ のとき
$-2(1+c) = -1$ より $1+c = \frac{1}{2}$ すなわち $c = -\frac{1}{2}$。残る $b$ は $1$ となる。 このとき $b(1+a) = 1 \cdot (-1) = -1$ となり、条件をすべて満たす。 よって、$(a, b, c) = \left( -2, 1, -\frac{1}{2} \right)$。
解説
与えられた対称性の崩れた連等式を扱う典型的な問題である。式全体を定数 $k$ とおくことで扱いやすくなる。差をとって因数分解する手技や、積をとって基本対称式を出現させる手技は難関大の代数問題で頻出である。 また、冒頭の $(a-b)^2 + (b-c)^2 + (c-a)^2 \neq 0$ という条件が「$a, b, c$ がすべて等しいわけではない」ことを意味している点を見落とさないことが重要である。この条件によって、$k=2$ などの不適な解を正確に除外することができる。
答え
(1) $-1$
(2) $(a, b, c) = \left(1, -\frac{1}{2}, -2\right), \left(-\frac{1}{2}, -2, 1\right), \left(-2, 1, -\frac{1}{2}\right)$
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