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北海道大学 2002年 理系 第4問 解説

数学C/複素数平面数学2/三角関数テーマ/整式の証明
北海道大学 2002年 理系 第4問 解説

方針・初手

(1) はド・モアブルの定理を用いて $\alpha^k$ を極形式で表し、共役複素数との和を計算して示す。

(2) は方程式 $z^n - 1 = 0$ の解が $z = 1, \alpha, \alpha^2, \dots, \alpha^{n-1}$ の $n$ 個であることを利用して因数分解し、両辺を $z - 1$ で割ってから $z = 1$ を代入するという典型的な手法を用いる。

(3) は (2) で得られた等式の両辺の絶対値をとり、各因数の絶対値を (1) の結果と半角の公式を用いて三角関数で表す。

解法1

(1)

ド・モアブルの定理より、$\alpha^k$ は次のように表せる。

$$ \alpha^k = \left( \cos\frac{2\pi}{n} + i\sin\frac{2\pi}{n} \right)^k = \cos\frac{2\pi k}{n} + i\sin\frac{2\pi k}{n} $$

また、$\bar{\alpha}^k$ は $\alpha^k$ の共役複素数であるから、虚部の符号を反転させて次のように表せる。

$$ \bar{\alpha}^k = \cos\frac{2\pi k}{n} - i\sin\frac{2\pi k}{n} $$

これら2つの式を辺々足し合わせると、虚部が打ち消し合って以下のようになる。

$$ \alpha^k + \bar{\alpha}^k = \left( \cos\frac{2\pi k}{n} + i\sin\frac{2\pi k}{n} \right) + \left( \cos\frac{2\pi k}{n} - i\sin\frac{2\pi k}{n} \right) = 2\cos\frac{2\pi k}{n} $$

よって、示された。

(2)

$\alpha = \cos\frac{2\pi}{n} + i\sin\frac{2\pi}{n}$ は方程式 $z^n = 1$ の解の1つである。

方程式 $z^n - 1 = 0$ の解は、複素数平面上の単位円を $n$ 等分する点であり、それらは $z = 1, \alpha, \alpha^2, \dots, \alpha^{n-1}$ の $n$ 個である。

したがって、因数定理により $z^n - 1$ は次のように因数分解できる。

$$ z^n - 1 = (z - 1)(z - \alpha)(z - \alpha^2)\cdots(z - \alpha^{n-1}) $$

一方で、等比数列の和の公式から、$z^n - 1$ は以下のようにも因数分解できる。

$$ z^n - 1 = (z - 1)(z^{n-1} + z^{n-2} + \cdots + z + 1) $$

この2つの式を比較すると、以下の等式が得られる。

$$ (z - 1)(z^{n-1} + z^{n-2} + \cdots + z + 1) = (z - 1)(z - \alpha)(z - \alpha^2)\cdots(z - \alpha^{n-1}) $$

$z \neq 1$ のとき、両辺を $z - 1$ で割ることで次式を得る。

$$ z^{n-1} + z^{n-2} + \cdots + z + 1 = (z - \alpha)(z - \alpha^2)\cdots(z - \alpha^{n-1}) $$

この等式は $z$ についての恒等式であるため、$z \neq 1$ という制限を外して $z = 1$ を代入しても成り立つ。

左辺に $z = 1$ を代入すると、$1$ が $n$ 個足されることになるので $n$ となる。右辺に $z = 1$ を代入すると $(1 - \alpha)(1 - \alpha^2)\cdots(1 - \alpha^{n-1})$ となる。

よって、以下の等式が示された。

$$ n = (1 - \alpha)(1 - \alpha^2)\cdots(1 - \alpha^{n-1}) $$

(3)

(2) で示された等式の両辺の絶対値をとる。

$$ |n| = |(1 - \alpha)(1 - \alpha^2)\cdots(1 - \alpha^{n-1})| $$

$n$ は自然数であるから $|n| = n$ である。また、複素数の積の絶対値は絶対値の積に等しいので、右辺を展開する。

$$ n = |1 - \alpha| |1 - \alpha^2| \cdots |1 - \alpha^{n-1}| $$

ここで、各因数 $|1 - \alpha^k|$ ($k=1, 2, \dots, n-1$)の2乗を計算する。共役複素数の性質 $|z|^2 = z\bar{z}$ を用いる。

$$ \begin{aligned} |1 - \alpha^k|^2 &= (1 - \alpha^k)(\overline{1 - \alpha^k}) \\ &= (1 - \alpha^k)(1 - \bar{\alpha}^k) \\ &= 1 - (\alpha^k + \bar{\alpha}^k) + \alpha^k \bar{\alpha}^k \\ &= 1 - (\alpha^k + \bar{\alpha}^k) + |\alpha^k|^2 \end{aligned} $$

$|\alpha| = 1$ より $|\alpha^k|^2 = 1$ であり、(1) の結果 $\alpha^k + \bar{\alpha}^k = 2\cos\frac{2\pi k}{n}$ を代入する。

$$ |1 - \alpha^k|^2 = 1 - 2\cos\frac{2\pi k}{n} + 1 = 2\left(1 - \cos\frac{2\pi k}{n}\right) $$

三角関数の半角の公式 $\sin^2\frac{\theta}{2} = \frac{1 - \cos\theta}{2}$ より、$1 - \cos\frac{2\pi k}{n} = 2\sin^2\frac{\pi k}{n}$ と変形できるので、これを代入する。

$$ |1 - \alpha^k|^2 = 2 \left( 2\sin^2\frac{\pi k}{n} \right) = 4\sin^2\frac{\pi k}{n} $$

$1 \leqq k \leqq n-1$ のとき、$0 < \frac{\pi k}{n} < \pi$ であるため、$\sin\frac{\pi k}{n} > 0$ である。したがって、平方根をとると以下のようになる。

$$ |1 - \alpha^k| = 2\sin\frac{\pi k}{n} $$

これを先ほどの絶対値の積の等式に代入する。

$$ n = \left(2\sin\frac{\pi}{n}\right) \left(2\sin\frac{2\pi}{n}\right) \cdots \left(2\sin\frac{(n-1)\pi}{n}\right) $$

右辺には $2$ が $n-1$ 個掛けられているので、整理する。

$$ n = 2^{n-1} \sin\frac{\pi}{n} \sin\frac{2\pi}{n} \cdots \sin\frac{n-1}{n}\pi $$

最後に両辺を $2^{n-1}$ で割ることで、求める等式が得られる。

$$ \frac{n}{2^{n-1}} = \sin\frac{\pi}{n} \sin\frac{2\pi}{n} \cdots \sin\frac{n-1}{n}\pi $$

よって、示された。

解説

1の $n$ 乗根に関する方程式 $z^n - 1 = 0$ の性質を用いた、非常に有名な頻出問題である。 (1)はド・モアブルの定理の基本的な確認である。 (2)における「方程式の解から因数分解の形を作り、両辺を $z-1$ で割ってから $z=1$ を代入する」という操作は、1の $n$ 乗根を扱う問題における常套手段であるため、必ず習得しておきたい。 (3)では、(2)の複素数の等式から実数の等式(今回は三角関数の積)を導くために、両辺の「絶対値」をとるという発想が重要である。絶対値の計算において(1)の結果と半角の公式が自然に利用できる、非常に美しい構成となっている。

答え

(1)

$$ \alpha^k+\bar{\alpha}^k=2\cos\frac{2k\pi}{n} $$

(2)

$$ n=(1-\alpha)(1-\alpha^2)\cdots(1-\alpha^{n-1}) $$

(3)

$$ \frac{n}{2^{n-1}}=\sin\frac{\pi}{n}\sin\frac{2\pi}{n}\cdots\sin\frac{(n-1)\pi}{n} $$

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