北海道大学 2014年 理系 第3問 解説

方針・初手
(1) は、与えられた漸化式 $A_{n+1}A_n = A_n + 2E$ から、目標の式に含まれる $(A_{n+1} + E)$ や $(A_n + E)$ の形を作り出すことが第一歩である。式の両辺に $A_n$ を加えることで因数分解の形に持ち込める。逆行列をもつことの証明は、数学的帰納法と行列の積の正則性(正則行列の積は正則であること)を利用する。
(2) は、$B_{n+1}$ の定義式に (1) で証明した $(A_{n+1} + E)^{-1}$ の関係式を代入し、計算を進める。途中で再び与えられた漸化式 $A_{n+1}A_n = A_n + 2E$ を用いて次数(添え字)を下げることで、$B_n$ の定数倍という形が導かれる。
解法1
(1)
与えられた関係式 $A_{n+1}A_n = A_n + 2E$ の両辺に $A_n$ を加えると、
$$ A_{n+1}A_n + A_n = 2A_n + 2E $$
$$ (A_{n+1} + E)A_n = 2(A_n + E) $$
条件より、すべての自然数 $n$ について $A_n$ は逆行列をもつので、両辺の右から $A_n^{-1}$ を掛けると、
$$ A_{n+1} + E = 2(A_n + E)A_n^{-1} \quad \cdots \text{①} $$
を得る。次に、「すべての自然数 $n$ に対して $A_n + E$ は逆行列をもつ」ことを数学的帰納法で示す。
(i) $n=1$ のとき 問題の条件より、$A_1 + E$ は逆行列をもつ。
(ii) $n=k$($k$ は自然数)のとき、$A_k + E$ が逆行列をもつと仮定する。 ①式で $n=k$ とすると、
$$ A_{k+1} + E = 2(A_k + E)A_k^{-1} $$
となる。右辺は、逆行列をもつ行列 $A_k + E$ と $A_k^{-1}$ の積の定数倍である。正則行列(逆行列をもつ行列)同士の積もまた正則行列であるため、右辺の行列は逆行列をもつ。したがって、左辺の $A_{k+1} + E$ も逆行列をもつ。
(i), (ii) より、すべての自然数 $n$ に対して $A_n + E$ は逆行列をもつことが示された。
さらに、すべての自然数 $n$ に対して $A_n + E$ が逆行列をもつことが分かったので、①式の両辺の逆行列をとることができる。逆行列の性質 $(PQ)^{-1} = Q^{-1}P^{-1}$ および $(kP)^{-1} = \frac{1}{k}P^{-1}$($k \neq 0$)を用いると、
$$ (A_{n+1} + E)^{-1} = \left\{ 2(A_n + E)A_n^{-1} \right\}^{-1} $$
$$ (A_{n+1} + E)^{-1} = \frac{1}{2} (A_n^{-1})^{-1} (A_n + E)^{-1} $$
$$ (A_{n+1} + E)^{-1} = \frac{1}{2} A_n (A_n + E)^{-1} $$
となり、題意の等式が成立することが示された。
(2)
$B_{n+1}$ の定義式に (1) で得られた関係式を代入する。
$$ B_{n+1} = (2E - A_{n+1})(A_{n+1} + E)^{-1} $$
$$ B_{n+1} = (2E - A_{n+1}) \left\{ \frac{1}{2} A_n (A_n + E)^{-1} \right\} $$
$$ B_{n+1} = \frac{1}{2} (2A_n - A_{n+1}A_n) (A_n + E)^{-1} $$
ここで、問題で与えられた関係式 $A_{n+1}A_n = A_n + 2E$ を代入すると、
$$ B_{n+1} = \frac{1}{2} \left\{ 2A_n - (A_n + 2E) \right\} (A_n + E)^{-1} $$
$$ B_{n+1} = \frac{1}{2} (A_n - 2E) (A_n + E)^{-1} $$
$$ B_{n+1} = - \frac{1}{2} (2E - A_n) (A_n + E)^{-1} $$
定義より $B_n = (2E - A_n)(A_n + E)^{-1}$ であるから、
$$ B_{n+1} = - \frac{1}{2} B_n $$
が成り立つ。これは、行列の列 $\{ B_n \}$ が公比 $-\frac{1}{2}$ の等比数列であることを意味する。したがって、一般項 $B_n$ は $B_1$ と $n$ を用いて次のように表せる。
$$ B_n = \left( - \frac{1}{2} \right)^{n-1} B_1 $$
解説
行列の積は一般に交換法則が成り立たないため、掛ける順序(左から掛けるか、右から掛けるか)に細心の注意を払う必要がある。 本問の (1) では、「右から $A_n^{-1}$ を掛ける」ことや、逆行列の公式 $(PQ)^{-1} = Q^{-1}P^{-1}$ を用いて順序が入れ替わることを正確に処理できるかが問われている。 (2) では、行列であっても、定数倍の関係式 $X_{n+1} = c X_n$ が導かれれば、実数の数列と同様に $X_n = c^{n-1} X_1$ として扱えるという性質を利用している。全体を通して、行列の演算規則と数列の基本事項を組み合わせた良問である。
答え
(1) $A_n+E$ は可逆であり、 $$ (A_{n+1}+E)^{-1}=\frac12A_n(A_n+E)^{-1} $$
(2) 関係式:$B_{n+1} = - \frac{1}{2} B_n$ 一般項:$B_n = \left( - \frac{1}{2} \right)^{n-1} B_1$
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