大阪大学 1993年 理系 第3問 解説

方針・初手
(1) は行列の積と和を直接計算し、両辺の成分が一致することを示す。
(2) は自然数 $n$ に関する命題であるため、数学的帰納法を用いて証明する。(1) の結果を利用して漸化式を導出する。
(3) は $f(A)=f(B)$, $g(A)=g(B)$ という条件から、(2) で定まる係数 $p_n, q_n$ が行列 $A, B$ の双方で共通の数列になることに着目し、$A^n=B^n$ の等式に当てはめる。
解法1
(1)
行列 $A$ について $A^2$ を計算すると、
$$ A^2 = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a^2+bc & ab+bd \\ ac+cd & bc+d^2 \end{pmatrix} $$
一方、右辺を計算すると、
$$ \begin{aligned} f(A)A + g(A)E &= (a+d) \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} + (bc-ad) \begin{pmatrix} 1 & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} \\ &= \begin{pmatrix} a^2+ad+bc-ad & ab+bd \\ ac+cd & ad+d^2+bc-ad \end{pmatrix} \\ &= \begin{pmatrix} a^2+bc & ab+bd \\ ac+cd & d^2+bc \end{pmatrix} \end{aligned} $$
両辺の成分が一致するため、$A^2 = f(A)A + g(A)E$ が成り立つ。(証明終)
(2)
$A^{n+1} = p_n A + q_n E$ を満たす数 $p_n, q_n$ が存在することを、数学的帰納法によって示す。
(i)
$n=1$ のとき (1) より $A^2 = f(A)A + g(A)E$ が成り立つため、$p_1 = f(A), q_1 = g(A)$ とおけば条件を満たす数 $p_1, q_1$ は存在する。
(ii)
$n=k$ ($k \geqq 1$) のとき $A^{k+1} = p_k A + q_k E$ を満たす数 $p_k, q_k$ が存在すると仮定する。 このとき、両辺に $A$ を掛けると、
$$ A^{k+2} = p_k A^2 + q_k A $$
ここで、(1) より $A^2 = f(A)A + g(A)E$ であるから、これを代入して整理すると、
$$ \begin{aligned} A^{k+2} &= p_k \{ f(A)A + g(A)E \} + q_k A \\ &= \{ p_k f(A) + q_k \} A + p_k g(A) E \end{aligned} $$
したがって、$p_{k+1} = p_k f(A) + q_k$, $q_{k+1} = p_k g(A)$ とおけば、$n=k+1$ のときも条件を満たす数 $p_{k+1}, q_{k+1}$ が存在する。
(i), (ii) より、すべての自然数 $n \geqq 1$ に対して、条件を満たす $p_n, q_n$ が存在することが示された。(証明終)
(3)
条件より $f(A) = f(B) = s$, $g(A) = g(B) = t$ とおくと、$s > 0, t \geqq 0$ である。
行列 $A$ において、(2) で構成した数列 $\{p_n\}, \{q_n\}$ は、初期値が
$$ p_1 = s, \quad q_1 = t $$
漸化式が
$$ p_{n+1} = s p_n + q_n, \quad q_{n+1} = t p_n \quad (n \geqq 1) $$
として一意に定まる。
行列 $B$ についても、(2) と全く同様にして $B^{n+1} = p'_n B + q'_n E$ と表せるが、$f(B)=s, g(B)=t$ であるため、数列 $\{p'_n\}, \{q'_n\}$ は $\{p_n\}, \{q_n\}$ と初期値および漸化式が完全に一致する。 したがって、任意の $n \geqq 1$ について $p'_n = p_n, q'_n = q_n$ となり、数列は $A, B$ の双方で共通となる。
ある $n \geqq 2$ に対して $A^n = B^n$ が成り立つとき、$n-1 \geqq 1$ であるから、
$$ p_{n-1} A + q_{n-1} E = p_{n-1} B + q_{n-1} E $$
$$ p_{n-1} (A - B) = O $$
ここで、すべての自然数 $m \geqq 1$ に対して $p_m > 0$ かつ $q_m \geqq 0$ であることを数学的帰納法で示す。
(i)
$m=1$ のとき $p_1 = s > 0$, $q_1 = t \geqq 0$ であり、成立する。
(ii)
$m=k$ のとき $p_k > 0, q_k \geqq 0$ と仮定する。 このとき、漸化式と $s > 0, t \geqq 0$ より、
$$ p_{k+1} = s p_k + q_k > 0 $$
$$ q_{k+1} = t p_k \geqq 0 $$
よって $m=k+1$ のときも成立する。
したがって、すべての自然数 $m \geqq 1$ について $p_m > 0$ であることが示された。 とくに $p_{n-1} > 0$ (すなわち $p_{n-1} \neq 0$) であるから、$p_{n-1} (A - B) = O$ の両辺を $p_{n-1}$ で割ることができ、
$$ A - B = O $$
すなわち $A = B$ が成り立つことが示された。(証明終)
解説
2次正方行列におけるケーリー・ハミルトンの定理を題材にした問題である。 $g(A)$ の符号が通常の行列式 $-\det(A)$ に一致するように設定されているため、$A^2 = (a+d)A - (ad-bc)E$ の形がそのまま問題の記号に落とし込まれている。 高次式 $A^n$ を1次式で表すのは典型的な処理であるが、今回はそこで得られる係数の数列が $f(A), g(A)$ のみに依存することに着目できるかが鍵となる。 (3) では、$A-B=O$ を導くために $p_{n-1} \neq 0$ を示す必要があるが、ここで $f(A)>0, g(A)\geqq 0$ という条件を効かせて帰納法を回す論理展開が求められる。
答え
(1)
題意の通り証明された。
(2)
題意の通り証明された。
(3)
題意の通り証明された。
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