北海道大学 2019年 理系 第5問 解説

方針・初手
定積分を含む関数列の漸化式の問題である。積分区間が定数であるため、$\int_0^\pi f_n(t) \sin t dt$ や $\int_0^\pi f_n(t) \cos t dt$ は $x$ に無関係な定数として扱える。 まずは $f_{n+1}(x)$ に含まれる $\sin(x-t)$ を加法定理で展開し、$a_n, b_n$ を用いて $f_{n+1}(x)$ を表すことから始める。その後、$a_{n+1}, b_{n+1}$ の定義式に代入して漸化式を導く。
解法1
(1)
漸化式中の定積分の被積分関数を加法定理を用いて展開する。
$$ f_{n+1}(x) = 2 \cos x + \frac{2}{\pi} \int_0^\pi f_n(t) (\sin x \cos t - \cos x \sin t) dt $$
積分変数は $t$ であるから、$x$ は積分の外に出すことができる。
$$ f_{n+1}(x) = 2 \cos x + \left( \frac{2}{\pi} \int_0^\pi f_n(t) \cos t dt \right) \sin x - \left( \frac{2}{\pi} \int_0^\pi f_n(t) \sin t dt \right) \cos x $$
与えられた $a_n, b_n$ の定義を用いると、上式は次のように表せる。
$$ f_{n+1}(x) = 2 \cos x + b_n \sin x - a_n \cos x = b_n \sin x + (2 - a_n) \cos x $$
次に、$a_{n+1}, b_{n+1}$ の定義式にこの $f_{n+1}(t)$ を代入する。
$$ a_{n+1} = \frac{2}{\pi} \int_0^\pi f_{n+1}(t) \sin t dt $$
$$ a_{n+1} = \frac{2}{\pi} \int_0^\pi \{ b_n \sin t + (2 - a_n) \cos t \} \sin t dt $$
$$ a_{n+1} = \frac{2}{\pi} \left( b_n \int_0^\pi \sin^2 t dt + (2 - a_n) \int_0^\pi \sin t \cos t dt \right) $$
ここで、半角の公式および2倍角の公式を用いて定積分を計算する。
$$ \int_0^\pi \sin^2 t dt = \int_0^\pi \frac{1 - \cos 2t}{2} dt = \left[ \frac{t}{2} - \frac{\sin 2t}{4} \right]_0^\pi = \frac{\pi}{2} $$
$$ \int_0^\pi \sin t \cos t dt = \int_0^\pi \frac{\sin 2t}{2} dt = \left[ -\frac{\cos 2t}{4} \right]_0^\pi = 0 $$
したがって、$a_{n+1}$ は次のようになる。
$$ a_{n+1} = \frac{2}{\pi} \left( b_n \cdot \frac{\pi}{2} + (2 - a_n) \cdot 0 \right) = b_n $$
同様にして、$b_{n+1}$ を計算する。
$$ b_{n+1} = \frac{2}{\pi} \int_0^\pi f_{n+1}(t) \cos t dt $$
$$ b_{n+1} = \frac{2}{\pi} \int_0^\pi \{ b_n \sin t + (2 - a_n) \cos t \} \cos t dt $$
$$ b_{n+1} = \frac{2}{\pi} \left( b_n \int_0^\pi \sin t \cos t dt + (2 - a_n) \int_0^\pi \cos^2 t dt \right) $$
ここで、
$$ \int_0^\pi \cos^2 t dt = \int_0^\pi \frac{1 + \cos 2t}{2} dt = \left[ \frac{t}{2} + \frac{\sin 2t}{4} \right]_0^\pi = \frac{\pi}{2} $$
であるから、$b_{n+1}$ は次のようになる。
$$ b_{n+1} = \frac{2}{\pi} \left( b_n \cdot 0 + (2 - a_n) \cdot \frac{\pi}{2} \right) = 2 - a_n $$
よって、$a_{n+1} = b_n, \quad b_{n+1} = 2 - a_n$ である。
(2)
(1) の結果から $a_{n+2}$ を計算する。
$$ a_{n+2} = b_{n+1} = 2 - a_n $$
$c_n = a_n - 1$ より $a_n = c_n + 1$ であるから、これを上の式に代入する。
$$ c_{n+2} + 1 = 2 - (c_n + 1) $$
$$ c_{n+2} = -c_n $$
これにより、$c_{n+2} = -c_n$ が成立することが示された。
この関係式は、数列 $\{ c_n \}$ の項が2つ進むごとに符号が反転することを示している。自然数 $k$ を用いて $n$ が奇数の場合と偶数の場合に分けて一般項を求める。
(i) $n$ が奇数のとき
$n = 2k - 1$ とおくと、$c_{2k-1}$ は初項 $c_1$、公比 $-1$ の等比数列の第 $k$ 項となる。
$$ c_{2k-1} = c_1 (-1)^{k-1} = (a_1 - 1) (-1)^{\frac{n-1}{2}} $$
(ii) $n$ が偶数のとき
$n = 2k$ とおくと、$c_{2k}$ は初項 $c_2$、公比 $-1$ の等比数列の第 $k$ 項となる。ここで、(1) の結果から $c_2 = a_2 - 1 = b_1 - 1$ である。
$$ c_{2k} = c_2 (-1)^{k-1} = (b_1 - 1) (-1)^{\frac{n-2}{2}} $$
以上により、一般項 $c_n$ が求められた。
(3)
$a_n, b_n$ が $n$ によらない定数となるとき、すべての自然数 $n$ に対して $a_{n+1} = a_n$ かつ $b_{n+1} = b_n$ が成り立つ。 (1) の結果を用いると、次の関係式が得られる。
$$ a_n = b_n $$
$$ b_n = 2 - a_n $$
これらを連立して解くと、$a_n = 2 - a_n$ より $2a_n = 2$、すなわち $a_n = 1$ となる。このとき $b_n = 1$ である。 したがって、$a_1 = 1$ かつ $b_1 = 1$ となるような $f(x)$ を見つければよい。
条件式は次のように書き換えられる。
$$ \frac{2}{\pi} \int_0^\pi f(t) \sin t dt = 1 $$
$$ \frac{2}{\pi} \int_0^\pi f(t) \cos t dt = 1 $$
このような関数 $f(x)$ の一つとして、$f(x) = p \sin x + q \cos x$ ($p, q$ は定数) の形を予想する。これを積分に代入すると、(1) での計算結果から次のように整理できる。
$$ \frac{2}{\pi} \left( p \cdot \frac{\pi}{2} + q \cdot 0 \right) = 1 \implies p = 1 $$
$$ \frac{2}{\pi} \left( p \cdot 0 + q \cdot \frac{\pi}{2} \right) = 1 \implies q = 1 $$
よって、$p = 1, q = 1$ とすれば条件を満たす。 ゆえに、$f(x) = \sin x + \cos x$ は求める関数の一つである。
解説
定積分を含む関数・漸化式問題の典型的な解法を問う問題である。被積分関数に含まれる $x$ や定数として扱える積分部分を適切に分離することが重要である。 (1) では、$\sin(x-t)$ を加法定理で展開し、$a_n, b_n$ の形を作り出すことが定石である。(2) は添字が2つ飛ぶ漸化式であり、偶奇で数列が異なる振る舞いをすることに注意して場合分けを行う。(3) は定数となる条件を逆算し、積分方程式を満たす関数を1つ構成する問題であるが、(1) の計算過程から $a_n, b_n$ がそれぞれ $\sin x, \cos x$ の係数に対応している構造を見抜けば、$f(x)$ の形を容易に推測できる。
答え
(1) $a_{n+1} = b_n, \quad b_{n+1} = 2 - a_n$
(2) $c_{n+2} = -c_n$
後半: $n$ が奇数のとき $c_n = (a_1 - 1) (-1)^{\frac{n-1}{2}}$ $n$ が偶数のとき $c_n = (b_1 - 1) (-1)^{\frac{n-2}{2}}$
(3) $f(x) = \sin x + \cos x$
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