北海道大学 2019年 理系 第4問 解説

方針・初手
Bの得点がどのように決まるかを整理することが第一歩である。 1回目の操作で引いた札の番号によって、Bの得点の決まり方が分岐する。 (1)では、最終的な得点 $m$ が $1, 2$ の場合と $3$ 以上の場合とで、事象の起こり方が異なることに注意して場合分けを行う。 (2)では、(1)で求めたBの得点の確率分布を利用し、「Bの得点が $m$ となる事象」と「Aの得点が $m$ 未満となる事象」の積事象の確率を足し合わせる方針が有効である。
解法1
(1) Bの得点が $m$ になる事象について、$m$ の値によって場合分けを行う。
(i) $m=1, 2$ のとき Bの得点が $m$ になるのは、1回目の操作で $1$ または $2$ の札を引き、2回目の操作で $m$ の札を引く場合のみである。 1回目に $1$ または $2$ の札を引く確率は $\frac{2}{n}$ であり、引いた札を箱に戻して2回目に $m$ の札を引く確率は $\frac{1}{n}$ である。 よって、この場合の確率は $$ \frac{2}{n} \times \frac{1}{n} = \frac{2}{n^2} $$
(ii) $m=3, 4, \dots, n$ のとき Bの得点が $m$ になるのは、以下の2つの排反な事象のいずれかである。 ・1回目に $m$ の札を引く。この確率は $\frac{1}{n}$ である。 ・1回目に $1$ または $2$ の札を引き、2回目に $m$ の札を引く。この確率は $\frac{2}{n} \times \frac{1}{n} = \frac{2}{n^2}$ である。 よって、この場合の確率はこれらの和であり、 $$ \frac{1}{n} + \frac{2}{n^2} = \frac{n+2}{n^2} $$
(2) Aの得点を $X$ とする。Aは箱Xから札を1枚引くため、各 $k \in \{1, 2, \dots, n\}$ に対して $X=k$ となる確率は $\frac{1}{n}$ である。 求める確率は、Aの得点よりBの得点が大きくなる確率、すなわち $X < B$ となる確率である。 Bの得点が $m$ である事象を $B=m$ とし、その確率を $P(B=m)$ とすると、(1)の結果から以下のように表せる。 $B=m$ となったとき、$X < m$ を満たすようなAの得点 $X$ は $1, 2, \dots, m-1$ の $m-1$ 通りであるから、その条件付き確率は $\frac{m-1}{n}$ である。 したがって、求める確率 $p_n$ は、 $$ \begin{aligned} p_n &= \sum_{m=1}^{n} P(B=m) P(X < m) \\ &= \sum_{m=1}^{2} \frac{2}{n^2} \cdot \frac{m-1}{n} + \sum_{m=3}^{n} \frac{n+2}{n^2} \cdot \frac{m-1}{n} \end{aligned} $$ ここで、右辺の第1項は $$ \sum_{m=1}^{2} \frac{2}{n^2} \cdot \frac{m-1}{n} = \frac{2}{n^3}(0 + 1) = \frac{2}{n^3} $$ である。また、右辺の第2項は $$ \begin{aligned} \sum_{m=3}^{n} \frac{n+2}{n^2} \cdot \frac{m-1}{n} &= \frac{n+2}{n^3} \sum_{m=3}^{n} (m-1) \\ &= \frac{n+2}{n^3} \{ 2 + 3 + \dots + (n-1) \} \\ &= \frac{n+2}{n^3} \left( \frac{(n-1)n}{2} - 1 \right) \\ &= \frac{n+2}{n^3} \cdot \frac{n^2-n-2}{2} \\ &= \frac{n+2}{n^3} \cdot \frac{(n-2)(n+1)}{2} \\ &= \frac{(n^2-4)(n+1)}{2n^3} \\ &= \frac{n^3+n^2-4n-4}{2n^3} \end{aligned} $$ である。 これらを足し合わせると、 $$ \begin{aligned} p_n &= \frac{2}{n^3} + \frac{n^3+n^2-4n-4}{2n^3} \\ &= \frac{4 + n^3+n^2-4n-4}{2n^3} \\ &= \frac{n^3+n^2-4n}{2n^3} \\ &= \frac{n^2+n-4}{2n^2} \end{aligned} $$
解法2
(2) の別解として、操作の回数に着目して全事象から条件を満たす根元事象を数え上げる方法を示す。
Aの引いた札の番号を $x$ とする。Aの操作は1回のみなので、$x$ の選び方は $n$ 通りである。 Bの1回目の操作で引いた札の番号を $y_1$ とする。
(i) $y_1 \in \{3, 4, \dots, n\}$ のとき Bの操作は1回で終了し、得点は $y_1$ となる。 このときの試行全体は、AとBがそれぞれ1回ずつ札を引く事象として考えられ、全事象は $n^2$ 通りである。 条件 $x < y_1$ を満たす $(x, y_1)$ の組の数を考える。 $y_1 = k$ ($k = 3, 4, \dots, n$) のとき、条件を満たす $x$ は $1, 2, \dots, k-1$ の $k-1$ 通りである。 したがって、条件を満たす組の総数は $$ \sum_{k=3}^{n} (k-1) = \frac{(n-2)(n+1)}{2} $$ であり、この事象が起こる確率は $$ \frac{(n-2)(n+1)}{2n^2} $$
(ii) $y_1 \in \{1, 2\}$ のとき Bは札を戻し、2回目の操作を行う。2回目に引いた札を $y_2$ とすると、Bの得点は $y_2$ となる。 このときの試行全体は、Aが1回、Bが2回札を引く事象として考えられ、全事象は $n^3$ 通りである。 条件 $x < y_2$ を満たす $(x, y_1, y_2)$ の組の数を考える。 $y_1$ の選び方は $1, 2$ の $2$ 通りである。 $y_2 = k$ ($k = 1, 2, \dots, n$) のとき、条件を満たす $x$ は $1, 2, \dots, k-1$ の $k-1$ 通りである。 したがって、条件を満たす組の総数は $$ 2 \times \sum_{k=1}^{n} (k-1) = 2 \times \frac{n(n-1)}{2} = n(n-1) $$ であり、この事象が起こる確率は $$ \frac{n(n-1)}{n^3} = \frac{n-1}{n^2} $$
(i), **(ii)**の事象は互いに排反であるから、求める確率は $$ \begin{aligned} p_n &= \frac{(n-2)(n+1)}{2n^2} + \frac{n-1}{n^2} \\ &= \frac{n^2-n-2}{2n^2} + \frac{2n-2}{2n^2} \\ &= \frac{n^2+n-4}{2n^2} \end{aligned} $$
解説
確率の求め方として「事象を排反に分けて確率を足す」「場合の数を数え上げて全事象で割る」の2つのアプローチが存在する。 (1)はルールに沿ってBの得点という「結果」から逆算して確率を求める基本問題である。(2)について、解法1は(1)をそのまま誘導として利用し、全確率の定理の考え方を用いて計算を進める王道の手法である。解法2は、試行の独立性を利用して各状況の「全事象の総数」を切り替えることで、数え上げに帰着させる手法である。複雑な和の計算を減らすことができるため、計算ミスのリスクを抑えやすい。
答え
(1) $m=1, 2$ のとき $\frac{2}{n^2}$ $m=3, 4, \dots, n$ のとき $\frac{n+2}{n^2}$
(2) $p_n = \frac{n^2+n-4}{2n^2}$
自分の記録
誤りを報告
解説の誤り、誤字、表示崩れに気づいた場合は送信してください。ログイン不要です。











