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京都大学 1961年 文系 第1問 解説

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京都大学 1961年 文系 第1問 解説

方針・初手

(i) 「すべての($\forall$)」と「少なくとも一つの($\exists$)」を含む命題の否定を作る問題である。述語論理の否定の規則に従い、条件を反転させる。

(ii) 合同な2つの図形をぴったり重ねるための操作手順を考える。3つの頂点を順番に目的の位置へ一致させていくように、変換を1つずつ適用して構成する。

(iii) グラフが全体として完全に一致するということは、方程式が恒等式になるということである。恒等式であると仮定し、係数比較によって矛盾を導く(背理法)。

解法1

(i)

与えられた命題「すくなくとも一つの実数値で、どの関数も0の値をとる」は、「ある実数 $x$ が存在して、すべての関数 $f$ について $f(x) = 0$ となる」と言い換えられる。

この命題の否定は、「すべての実数 $x$ に対して、ある関数 $f$ が存在して $f(x) \neq 0$ となる」である。 これを問題文の形式に当てはめると、「(イ) すべての 実数に対し、そこで (ロ) すくなくとも一つ の関数は0で (ハ) ない。」となる。

(ii)

$\triangle ABC$ を以下の手順で順次移動させる。

  1. 平行移動 ベクトル $\overrightarrow{AA'}$ による平行移動を行う。これにより、頂点 $A$ は $A'$ に重なる。移動後の $\triangle ABC$ を $\triangle A'B_1C_1$ とする。この時点で平行移動を1回用いた。

  2. 回転移動 点 $A'$ を中心として、半直線 $A'B_1$ が半直線 $A'B'$ と重なるように $\triangle A'B_1C_1$ を回転移動させる。$\triangle A'B_1C_1 \equiv \triangle A'B'C'$ より $A'B_1 = A'B'$ であるから、この操作により頂点 $B_1$ は $B'$ に重なる。移動後の三角形を $\triangle A'B'C_2$ とする。この時点で回転移動を1回(すでに重なっていれば0回)用いた。

  3. 線対称移動 頂点 $C_2$ と $C'$ の位置関係を考える。$\triangle A'B'C_2 \equiv \triangle A'B'C'$ であり、辺 $A'B'$ を共有しているため、点 $C_2$ と $C'$ は直線 $A'B'$ に関して同じ側にあるか、反対側にあるかのいずれかである。 同じ側にある場合、点 $C_2$ と $C'$ は一致しており、これ以上の移動は不要である(線対称移動は0回)。 反対側にある場合、直線 $A'B'$ を軸として $\triangle A'B'C_2$ を線対称移動させると、頂点 $C_2$ は $C'$ に重なる(線対称移動は1回)。

以上より、平行移動、回転移動、線対称移動のそれぞれを多くとも1回ずつ用いれば、$\triangle ABC$ を $\triangle A'B'C'$ の位置に移しうる。

(iii)

$y = f(x)$ のグラフを $x$ 軸方向に $h$ だけ平行移動した曲線の方程式は $y = f(x-h)$ である。 移動した曲線がもとの曲線と全体として完全に一致すると仮定すると、$x$ についての恒等式

$$ f(x) = f(x-h) $$

が成り立つ。 $f(x) = x^4 + ax^3 + bx^2 + cx + d$ であるから、右辺を展開して $x^3$ の項の係数を比較する。

$$ f(x-h) = (x-h)^4 + a(x-h)^3 + b(x-h)^2 + c(x-h) + d $$

$$ = (x^4 - 4hx^3 + \cdots) + a(x^3 - 3hx^2 + \cdots) + b(x^2 - 2hx + h^2) + c(x-h) + d $$

$$ = x^4 + (a - 4h)x^3 + \cdots $$

両辺の $x^3$ の係数が等しいことから、

$$ a = a - 4h $$

が成り立つ。これを解くと $4h = 0$ より $h = 0$ を得る。 しかし、これは条件 $h \neq 0$ に矛盾する。 したがって、移動した曲線はもとの曲線と全体として完全には一致しない。(証明終)

解法2

(iii) の別解

移動した曲線がもとの曲線と全体として完全に一致すると仮定すると、すべての実数 $x$ に対して

$$ f(x) = f(x-h) $$

が成り立つ。両辺を $x$ について微分すると、

$$ f'(x) = f'(x-h) $$

となり、さらに微分を繰り返すことで、任意の自然数 $n$ について

$$ f^{(n)}(x) = f^{(n)}(x-h) $$

が成り立つ。 ここで、$f(x) = x^4 + ax^3 + bx^2 + cx + d$ より、3次導関数は

$$ f^{(3)}(x) = 24x + 6a $$

である。これが $f^{(3)}(x) = f^{(3)}(x-h)$ を満たすので、

$$ 24x + 6a = 24(x-h) + 6a $$

$$ 24h = 0 $$

よって $h = 0$ となるが、これは $h \neq 0$ に矛盾する。 したがって、移動した曲線はもとの曲線と全体として完全には一致しない。(証明終)

解説

(i) は全称記号 $\forall$(すべての)と存在記号 $\exists$(ある)を含む命題の否定に関する問題である。「すべての $x$ について $P(x)$」と「ある $x$ について $Q(x)$」の否定の形を正確に入れ替える。

(ii) は平面図形の合同変換に関する基本的な事実の証明である。どのような合同変換も、平行移動・回転移動・対称移動の合成で表されることを、頂点を一つずつ合わせていく操作によって具体的に構成して示せばよい。

(iii) は多項式の恒等式に関する問題である。恒等的に等しいなら各次数の係数が一致するので、$x^3$ の係数を比べれば十分である。微分して次数を下げてから矛盾を出す見方でもよい。

答え

(i)

(イ)

すべての (ロ) すくなくとも一つ (ハ) ない

(ii)

平行移動・回転移動・線対称移動をそれぞれ高々1回ずつ用いればよい。

(iii)

$h \neq 0$ なら、移動した曲線はもとの曲線と完全には一致しない。

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