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京都大学 1971年 文系 第5問 解説

数学C/空間ベクトル数学2/三角関数数学2/図形と式テーマ/面積・体積テーマ/図形総合
京都大学 1971年 文系 第5問 解説

方針・初手

(i) については、正射影後の平面図形である「平行四辺形」の幾何的な条件が完全に与えられているため、空間図形として考える必要はなく、平面上の余弦定理あるいはベクトルの内積を用いて直ちに計算できる。

(ii) については、正射影の問題に対する2つのアプローチが考えられる。 1つは、空間に座標軸を設定し、正方形の条件(辺の等長・直交)を代数的な連立方程式に帰着させる手法である。 もう1つは、正射影と図形の関係を幾何的な性質から処理する手法である。

解法1

空間に直交座標系を設定し、正射影を行う平面を $xy$ 平面とする。 正方形の隣り合う2辺を表す空間ベクトルを $\vec{u}, \vec{v}$ とし、正方形の1辺の長さを $L$ (面積は $L^2$)とする。正方形であることから、

$$ |\vec{u}| = |\vec{v}| = L $$

$$ \vec{u} \cdot \vec{v} = 0 $$

が成り立つ。 $\vec{u}, \vec{v}$ の $xy$ 平面への正射影($z$ 成分を $0$ としたベクトル)をそれぞれ $\vec{u}', \vec{v}'$ とすると、これらは題意の平行四辺形の隣り合う2辺をなす。 条件より、$|\vec{u}'| = 2\sqrt{2}$、$|\vec{v}'| = \sqrt{6}$ であり、そのなす角は $30^\circ$ または $150^\circ$ であるから、内積は次のように計算できる。

$$ \vec{u}' \cdot \vec{v}' = |\vec{u}'||\vec{v}'| \cos(\pm 30^\circ) = 2\sqrt{2} \cdot \sqrt{6} \cdot \left(\pm \frac{\sqrt{3}}{2}\right) = \pm 6 $$

(i)

平行四辺形の2つの対角線を表すベクトルは $\vec{u}' + \vec{v}'$ および $\vec{u}' - \vec{v}'$ である。 これらの大きさの2乗を展開すると、

$$ |\vec{u}' \pm \vec{v}'|^2 = |\vec{u}'|^2 + |\vec{v}'|^2 \pm 2\vec{u}' \cdot \vec{v}' $$

$$ = (2\sqrt{2})^2 + (\sqrt{6})^2 \pm 2(\pm 6) $$

$$ = 8 + 6 \pm 12 $$

$$ = 14 \pm 12 $$

したがって、対角線の長さの2乗は $2$ と $26$ である。 対角線の長さは正であるから、求める長さは $\sqrt{2}$ と $\sqrt{26}$ である。

(ii)

もとのベクトル $\vec{u}, \vec{v}$ の $z$ 成分をそれぞれ $u_z, v_z$ とおく。 空間ベクトルの大きさおよび内積は、$xy$ 平面への正射影成分と $z$ 成分とを用いて次のように表せる。

$$ |\vec{u}|^2 = |\vec{u}'|^2 + u_z^2 = 8 + u_z^2 $$

$$ |\vec{v}|^2 = |\vec{v}'|^2 + v_z^2 = 6 + v_z^2 $$

$$ \vec{u} \cdot \vec{v} = \vec{u}' \cdot \vec{v}' + u_z v_z = \pm 6 + u_z v_z $$

これらを正方形の条件 $|\vec{u}|^2 = |\vec{v}|^2 = L^2$ および $\vec{u} \cdot \vec{v} = 0$ に代入すると、

$$ 8 + u_z^2 = L^2 $$

$$ 6 + v_z^2 = L^2 $$

$$ \pm 6 + u_z v_z = 0 $$

それぞれを変形すると、

$$ u_z^2 = L^2 - 8 $$

$$ v_z^2 = L^2 - 6 $$

$$ u_z v_z = \mp 6 $$

$u_z v_z = \mp 6$ の両辺を2乗して $u_z^2 v_z^2 = 36$ とし、上の2式を代入する。

$$ (L^2 - 8)(L^2 - 6) = 36 $$

$$ L^4 - 14L^2 + 48 = 36 $$

$$ L^4 - 14L^2 + 12 = 0 $$

これを $L^2$ についての2次方程式とみて解くと、

$$ L^2 = 7 \pm \sqrt{49 - 12} = 7 \pm \sqrt{37} $$

ここで、$u_z, v_z$ は実数であるから $u_z^2 \ge 0$ かつ $v_z^2 \ge 0$ が必要であり、これより $L^2 \ge 8$ でなければならない。 $7 - \sqrt{37} < 7 - 6 = 1 < 8$ より、$L^2 = 7 - \sqrt{37}$ は不適である。 一方、$7 + \sqrt{37} > 7 + 6 = 13 > 8$ より、$L^2 = 7 + \sqrt{37}$ は条件を満たす。

もとの正方形の面積は $L^2$ に等しいから、求める面積は $7 + \sqrt{37}$ である。

解法2

(i)

解法1と同様に、余弦定理を用いて平面図形として対角線の長さを求めることもできる。 平行四辺形の隣り合う2辺の長さは $2\sqrt{2}$ と $\sqrt{6}$ であり、その間の角は $30^\circ$ または $150^\circ$ である。 対角線の長さを $x, y$ とすると、余弦定理より、

$$ x^2 = (2\sqrt{2})^2 + (\sqrt{6})^2 - 2(2\sqrt{2})(\sqrt{6})\cos 30^\circ = 14 - 2\sqrt{48} \cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = 14 - 12 = 2 $$

$$ y^2 = (2\sqrt{2})^2 + (\sqrt{6})^2 - 2(2\sqrt{2})(\sqrt{6})\cos 150^\circ = 14 - 2\sqrt{48} \cdot \left( - \frac{\sqrt{3}}{2} \right) = 14 + 12 = 26 $$

よって、対角線の長さは $\sqrt{2}$ と $\sqrt{26}$ である。

(ii)

正射影される平面を $\alpha$、正方形を含む平面を $\beta$ とし、$\alpha$ と $\beta$ のなす角を $\theta$ ($0^\circ \le \theta < 90^\circ$) とする。 正方形の面積を $S = L^2$、その正射影である平行四辺形の面積を $S'$ とすると、$S' = S \cos \theta$ が成り立つ。 平行四辺形の面積 $S'$ は、

$$ S' = (2\sqrt{2})(\sqrt{6})\sin 30^\circ = 2\sqrt{12} \cdot \frac{1}{2} = 2\sqrt{3} $$

面積の関係式より、

$$ L^2 \cos \theta = 2\sqrt{3} \quad \cdots \text{①} $$

次に、正方形の対角線の正射影について考える。 平面 $\beta$ 上で、平面 $\alpha$ との交線に平行な単位ベクトルを $\vec{e}_1$、$\beta$ 上で $\vec{e}_1$ に垂直な単位ベクトルを $\vec{e}_2$ とする。 $\beta$ 上の任意のベクトル $\vec{p} = X \vec{e}_1 + Y \vec{e}_2$ について、その $\alpha$ への正射影 $\vec{p}'$ の長さの2乗は、$\vec{e}_1$ 方向の成分はそのまま、$\vec{e}_2$ 方向の成分が $\cos\theta$ 倍になるため、

$$ |\vec{p}'|^2 = X^2 + (Y \cos\theta)^2 $$

となる。 正方形の2つの対角線ベクトル $\vec{d}_1, \vec{d}_2$ は、長さが等しく($|\vec{d}_1| = |\vec{d}_2| = \sqrt{2}L$)互いに直交する。 これらが $\vec{e}_1$ となす角をそれぞれ $\phi, \phi + 90^\circ$ とおくと、

$$ \vec{d}_1 = \sqrt{2}L (\cos\phi \vec{e}_1 + \sin\phi \vec{e}_2) $$

$$ \vec{d}_2 = \sqrt{2}L (-\sin\phi \vec{e}_1 + \cos\phi \vec{e}_2) $$

と表せる。それぞれの正射影 $\vec{d}_1', \vec{d}_2'$ の長さの2乗の和をとると、

$$ |\vec{d}_1'|^2 + |\vec{d}_2'|^2 = 2L^2 (\cos^2\phi + \sin^2\phi\cos^2\theta) + 2L^2 (\sin^2\phi + \cos^2\phi\cos^2\theta) $$

$$ = 2L^2 (\cos^2\phi + \sin^2\phi) + 2L^2 (\sin^2\phi + \cos^2\phi)\cos^2\theta $$

$$ = 2L^2 (1 + \cos^2\theta) $$

となる。一方、これら正射影は平行四辺形の対角線であり、(i) よりその長さは $\sqrt{2}, \sqrt{26}$ であるから、

$$ |\vec{d}_1'|^2 + |\vec{d}_2'|^2 = (\sqrt{2})^2 + (\sqrt{26})^2 = 28 $$

よって、次の方程式が得られる。

$$ 2L^2 (1 + \cos^2\theta) = 28 $$

$$ L^2 (1 + \cos^2\theta) = 14 \quad \cdots \text{②} $$

①より $\cos\theta = \frac{2\sqrt{3}}{L^2}$ であり、これを②に代入して整理する。

$$ L^2 \left( 1 + \frac{12}{L^4} \right) = 14 $$

$$ L^2 + \frac{12}{L^2} = 14 $$

$$ (L^2)^2 - 14L^2 + 12 = 0 $$

これを解いて $L^2 = 7 \pm \sqrt{37}$ を得る。 $\theta$ は $0^\circ \le \theta < 90^\circ$ であるから $0 < \cos\theta \le 1$ となり、①より $L^2 = \frac{2\sqrt{3}}{\cos\theta} \ge 2\sqrt{3} = \sqrt{12} \approx 3.46$ が必要である。 $7 - \sqrt{37} < 7 - 6 = 1 < \sqrt{12}$ より不適であり、$7 + \sqrt{37} > 13 > \sqrt{12}$ より適する。 求める正方形の面積は $7 + \sqrt{37}$ である。

解説

正射影の問題において、よく用いられる2つのアプローチを提示した。

解法1の「空間ベクトルの成分を用いる方法」は、正射影を行う平面を $xy$ 平面としてしまうことで、空間のベクトルを「平面図形をなすベクトル $(x,y)$」と「見えない高さ成分 $z$」に分割して処理する汎用性の高いテクニックである。図形的な位置関係を想像するのが難しい問題でも、直交条件や長さの条件を代数的な連立方程式に帰着させることができるため強力である。

解法2の「面と線の正射影の性質を用いる方法」は、面積の公式 $S'=S\cos\theta$ に加え、直交する同長の2つの線分を正射影したときの長さの2乗和が一定になるという幾何的性質を導出して利用している。こちらのアプローチは、本問の (i) の誘導(対角線の長さを求めさせること)と綺麗に接続する形になっている。

答え

(i)

$\sqrt{2}, \sqrt{26}$

(ii)

$7 + \sqrt{37}$

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