京都大学 1990年 文系 第5問 解説

方針・初手
確率変数 $X$ と $Y$ の独立性の定義 $(*)$ を満たすかどうかを調べます。 1回目のサイコロの目を $D_1$、2回目のサイコロの目を $D_2$ とすると、$X$ は $D_1$ を $N$ で割った余り、$Y$ は $D_1+D_2$ を $N$ で割った余りとなります。 (1) の $N=5$ の場合は、特定の $(i, j)$ の組(例えば $i=0, j=0$)について計算し、 $(*)$ が成り立たない反例を一つ見つければ十分です。 (2) の $N=6$ の場合は、サイコロの目が $1 \sim 6$ の $6$ 通りであり、それを $6$ で割った余りが $0 \sim 5$ のすべてに均等に $1$ 通りずつ対応するという綺麗な性質(一様性)を利用して、任意の $i, j$ について $(*)$ が成り立つことを一般的に示します。
解法1
1回目のサイコロの目を $D_1$、2回目のサイコロの目を $D_2$ とする。$D_1, D_2 \in \{1, 2, 3, 4, 5, 6\}$ であり、それぞれ確率 $\frac{1}{6}$ で出現し、互いに独立である。 問題の移動ルールより、$X, Y$ はそれぞれ $D_1, D_1+D_2$ を $N$ で割った余りとなるため、合同式を用いて表すと
$$ X \equiv D_1 \pmod N $$
$$ Y \equiv X + D_2 \pmod N $$
となる。事象 $\{X=i\}$ は $D_1$ のみによって決まり、事象 $\{D_2 \equiv j-i \pmod N\}$ は $D_2$ のみによって決まるため、これら2つの事象は独立である。したがって、
$$ \begin{aligned} P(X=i, Y=j) &= P(X=i \text{ かつ } X + D_2 \equiv j \pmod N) \\ &= P(X=i \text{ かつ } D_2 \equiv j-i \pmod N) \\ &= P(X=i) P(D_2 \equiv j-i \pmod N) \quad \cdots (A) \end{aligned} $$
が任意の $i, j \in \{0, 1, \dots, N-1\}$ で成り立つ。
(1)
$N=5$ のとき、$X, Y$ が独立であると仮定すると、任意の $i, j \in \{0, 1, 2, 3, 4\}$ に対して $P(X=i, Y=j) = P(X=i)P(Y=j)$ が成り立つはずである。 ここで、$i=0, j=0$ の場合について調べる。 $X=0$ となるのは $D_1=5$ のときのみであるから、
$$ P(X=0) = P(D_1=5) = \frac{1}{6} $$
$Y=0$ となるのは $D_1 + D_2 \equiv 0 \pmod 5$ のときであり、$D_1 + D_2$ のとりうる値は $2$ 以上 $12$ 以下なので、$D_1+D_2=5$ または $10$ のときである。 これを満たす $(D_1, D_2)$ の組は $(1,4), (2,3), (3,2), (4,1), (4,6), (5,5), (6,4)$ の $7$ 通りあるので、
$$ P(Y=0) = \frac{7}{36} $$
また、$X=0$ かつ $Y=0$ となるのは、$X=0$ (すなわち $D_1=5$) であり、かつ $0+D_2 \equiv 0 \pmod 5$ (すなわち $D_2=5$) のときのみであるから、
$$ P(X=0, Y=0) = P(D_1=5, D_2=5) = \frac{1}{36} $$
ここで、$P(X=0)P(Y=0) = \frac{1}{6} \cdot \frac{7}{36} = \frac{7}{216}$ となり、$P(X=0, Y=0) \neq P(X=0)P(Y=0)$ である。 よって、$N=5$ のとき $X$ と $Y$ は互いに独立ではない。
(2)
$N=6$ のとき
$D_1, D_2$ を $6$ で割った余りは、$1$ から $6$ までの目がそれぞれ $1, 2, 3, 4, 5, 0$ と対応するため、$0$ から $5$ の値が等確率 $\frac{1}{6}$ で現れる。 したがって、任意の $i \in \{0, 1, \dots, 5\}$ に対して
$$ P(X=i) = \frac{1}{6} $$
であり、任意の $k \in \{0, 1, \dots, 5\}$ に対して
$$ P(D_2 \equiv k \pmod 6) = \frac{1}{6} $$
である。 式 (A) より、任意の $i, j \in \{0, 1, \dots, 5\}$ に対して
$$ P(X=i, Y=j) = P(X=i) P(D_2 \equiv j-i \pmod 6) = \frac{1}{6} \cdot \frac{1}{6} = \frac{1}{36} $$
となる。また、周辺確率 $P(Y=j)$ は、
$$ P(Y=j) = \sum_{i=0}^5 P(X=i, Y=j) = 6 \cdot \frac{1}{36} = \frac{1}{6} $$
これらより、任意の $i, j$ について
$$ P(X=i)P(Y=j) = \frac{1}{6} \cdot \frac{1}{6} = \frac{1}{36} = P(X=i, Y=j) $$
が成り立つ。 よって、$N=6$ のとき $X$ と $Y$ は互いに独立である。
解説
2つの確率変数 $X, Y$ が独立であるとは、「$X$ の結果が $Y$ の確率分布に影響を与えない(逆も然り)」ということです。 本問のルールでは、「$X$ の位置からさらにサイコロを振って $Y$ を決める」ため、$X=i$ となることが確定した上で $Y=j$ となる確率は、$2$回目のサイコロの目が $\pmod N$ で $j-i$ となる確率に他なりません。これが $X$ の値(つまり $i$)に依存しないためには、2回目のサイコロの目が $\pmod N$ において「完全に等確率」に分布していなければならない、という本質的な構造を見抜けるかが鍵となります。 $N=6$ のときはサイコロの目の数と一致するためこの「等確率」が成り立ちますが、$N=5$ のときは余りが等確率になりません(余りが $1$ になる目は $1, 6$ の2つあるのに対し、余りが $0$ になる目は $5$ の1つしかないなど)。この偏りが、独立性を崩す原因となっています。
答え
(1)
互いに独立ではない。
(2)
互いに独立である。
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