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京都大学 2021年 文系 第3問 解説

数学A/確率数学B/数列テーマ/漸化式テーマ/確率漸化式
京都大学 2021年 文系 第3問 解説

方針・初手

最終的に番号1の箱に赤玉と白玉が1個ずつ入っている状態に戻るためには、最初の操作で箱1から取り出された玉の色と、最後の操作で箱nから箱1に入れられた玉の色が一致している必要があります。 各操作において「ある箱から次の箱へ移動する玉が赤玉である確率」を考え、漸化式を立てることでn番目の箱から出る玉の確率を求めます。

解法1

$k=1, 2, \dots, n-1$ に対して、操作 $(*)$ で番号 $k$ の箱から取り出され、番号 $k+1$ の箱に入れられる玉が赤玉である事象を $R_k$、白玉である事象を $W_k$ とします。 また、一連の操作が終了した後、番号 $n$ の箱から取り出され、番号1の箱に入れられる玉が赤玉である事象を $R_n$、白玉である事象を $W_n$ とします。

初期状態において、番号1の箱には赤玉と白玉が1個ずつ入っているため、最初に取り出される玉の色について以下の確率が成り立ちます。

$$ P(R_1) = \frac{1}{2}, \quad P(W_1) = \frac{1}{2} $$

最終的に番号1の箱に赤玉と白玉が1個ずつ入っているのは、以下の2つのいずれかの場合です。

これらは互いに排反であるため、求める確率は $P(R_1 \cap R_n) + P(W_1 \cap W_n)$ となります。

$k$ 回目の操作($k=1, 2, \dots, n-1$)の直前において、番号 $k+1$ の箱には赤玉と白玉が1個ずつ入っています。ここに番号 $k$ の箱から玉が1個入れられます。

この関係は、最後の操作で番号 $n$ の箱から玉を取り出す際にも同様に成り立ちます。

ここで、事象 $R_1$ が起きたという条件のもとで、事象 $R_k$ が起きる条件付き確率を $p_k = P(R_k \mid R_1)$ とおくと、$p_k$ は全確率の定理から以下の漸化式を満たします。

$$ p_{k+1} = \frac{2}{3} p_k + \frac{1}{3}(1 - p_k) = \frac{1}{3} p_k + \frac{1}{3} $$

この条件付き確率の世界では、$R_1$ が起きていることを前提としているため、初項は $p_1 = P(R_1 \mid R_1) = 1$ です。

漸化式 $p_{k+1} = \dfrac{1}{3}p_k + \dfrac{1}{3}$ を変形すると、

$$ p_{k+1} - \frac{1}{2} = \frac{1}{3}\left(p_k - \frac{1}{2}\right) $$

となります。数列 $\left\{ p_k - \dfrac{1}{2} \right\}$ は初項 $p_1 - \dfrac{1}{2} = 1 - \dfrac{1}{2} = \dfrac{1}{2}$、公比 $\dfrac{1}{3}$ の等比数列であるから、

$$ p_k - \frac{1}{2} = \frac{1}{2} \cdot \left(\frac{1}{3}\right)^{k-1} $$

すなわち、

$$ p_k = \frac{1}{2} + \frac{1}{2} \cdot \left(\frac{1}{3}\right)^{k-1} $$

したがって、事象 $R_1$ が起きた条件のもとで、事象 $R_n$ が起きる確率は

$$ P(R_n \mid R_1) = p_n = \frac{1}{2} + \frac{1}{2} \cdot \left(\frac{1}{3}\right)^{n-1} $$

となります。

一方、事象 $W_1$ が起きた(最初が白玉だった)条件のもとで、最後に白玉を取り出す確率 $P(W_n \mid W_1)$ を考えます。 初期状態の玉の構成や操作のルールは、赤玉と白玉をすべて入れ替えても完全に同一です(対称性)。そのため、「最初に白玉が移動した世界で最後に白玉が移動する確率」は、「最初に赤玉が移動した世界で最後に赤玉が移動する確率」と等しくなります。

$$ P(W_n \mid W_1) = P(R_n \mid R_1) = \frac{1}{2} + \frac{1}{2} \cdot \left(\frac{1}{3}\right)^{n-1} $$

以上より、求める確率は

$$\begin{aligned} P(R_1 \cap R_n) + P(W_1 \cap W_n) &= P(R_1) \cdot P(R_n \mid R_1) + P(W_1) \cdot P(W_n \mid W_1) \\ &= \frac{1}{2} \cdot \left(\frac{1}{2} + \frac{1}{2} \cdot \left(\frac{1}{3}\right)^{n-1}\right) + \frac{1}{2} \cdot \left(\frac{1}{2} + \frac{1}{2} \cdot \left(\frac{1}{3}\right)^{n-1}\right) \\ &= \frac{1}{2} + \frac{1}{2} \cdot \left(\frac{1}{3}\right)^{n-1} \end{aligned}$$

解説

確率漸化式を用いた典型的な問題です。玉の移動が連鎖していく構造を見抜き、状態間の遷移確率を漸化式に落とし込めるかがポイントです。

単なる無条件の確率 $P(R_k)$ で漸化式を立ててしまうと、つねに $P(R_k) = \dfrac{1}{2}$ となってしまい、最後の箱1の判定に必要な「最初の玉の色との一致」という情報が失われてしまいます。本解法のように、「最初に赤玉が出た」という条件のもとでの条件付き確率 $P(R_k \mid R_1)$ を用いて数列を定義するのが、最も見通しの良い確実なアプローチとなります。

また、赤玉と白玉の対称性を利用することで、白玉側の場合の漸化式計算を省略し、記述量と計算ミスを減らすことができます。

答え

$$ \frac{1}{2} + \frac{1}{2} \cdot \left(\frac{1}{3}\right)^{n-1} $$

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