京都大学 1988年 理系 第3問 解説

方針・初手
(1) 行列の積を計算して $x', y'$ を $x, y$ の式で表し、条件式に代入して計算する。不等式の証明では、条件式 $x^2 = 3y^2 + 1$ を利用して次数を揃え、平方の差の符号を調べるのが基本方針である。
(2) (1) の結果から、行列 $A$ を掛けるという操作は「関係式を満たしたまま $y$ の値を真に小さくする(ただし $0$ 以上に保つ)」という働きを持つことが分かる。$y$ が整数であることから、この操作を繰り返すと $y$ はいつか必ず $0$ に到達するはずである、という「無限降下法」の考え方を用いて証明する。
解法1
(1)
行列の計算より、
$$ \begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2 & -3 \\ -1 & 2 \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 2x - 3y \\ -x + 2y \end{pmatrix} $$
すなわち $x' = 2x - 3y$, $y' = -x + 2y$ である。 まず、$x'^2 - 3y'^2 = 1$ を示す。
$$ \begin{aligned} x'^2 - 3y'^2 &= (2x - 3y)^2 - 3(-x + 2y)^2 \\ &= (4x^2 - 12xy + 9y^2) - 3(x^2 - 4xy + 4y^2) \\ &= 4x^2 - 12xy + 9y^2 - 3x^2 + 12xy - 12y^2 \\ &= x^2 - 3y^2 \end{aligned} $$
仮定より $x^2 - 3y^2 = 1$ であるから、$x'^2 - 3y'^2 = 1$ が成り立つ。
次に、$0 \leqq y' < y$ を示す。 仮定より $x^2 = 3y^2 + 1$ であり、$x > 0, y \geqq 1$ より $x, y$ は共に正である。
$$ y - y' = y - (-x + 2y) = x - y $$
ここで、$x^2 - y^2 = (3y^2 + 1) - y^2 = 2y^2 + 1 > 0$ である。 $x > 0, y > 0$ より $x > y$ となるので、$x - y > 0$ すなわち $y' < y$ である。
また、$y' = -x + 2y$ について、
$$ (2y)^2 - x^2 = 4y^2 - (3y^2 + 1) = y^2 - 1 $$
$y \geqq 1$ より $y^2 - 1 \geqq 0$ であるから、$(2y)^2 \geqq x^2$ となる。 $2y > 0, x > 0$ より $2y \geqq x$ となるので、$2y - x \geqq 0$ すなわち $y' \geqq 0$ である。 以上より、$0 \leqq y' < y$ が成立する。(証明終)
(2)
$\begin{pmatrix} x_0 \\ y_0 \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$ とし、自然数 $k$ に対して $\begin{pmatrix} x_k \\ y_k \end{pmatrix} = A \begin{pmatrix} x_{k-1} \\ y_{k-1} \end{pmatrix} = A^k \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$ で定まる数列 $(x_k, y_k)$ を考える。 行列 $A$ の成分が整数で $x, y$ は自然数(整数)であるから、すべての非負整数 $k$ について $x_k, y_k$ は整数である。
$x_{k-1}^2 - 3y_{k-1}^2 = 1, x_{k-1} > 0, y_{k-1} \geqq 1$ が成り立つとき、(1) より $x_k^2 - 3y_k^2 = 1$ かつ $0 \leqq y_k < y_{k-1}$ となる。 さらにこのとき、$x_k > 0$ となることを示す。 $x_k = 2x_{k-1} - 3y_{k-1}$ であり、
$$ (2x_{k-1})^2 - (3y_{k-1})^2 = 4x_{k-1}^2 - 9y_{k-1}^2 = 4(3y_{k-1}^2 + 1) - 9y_{k-1}^2 = 3y_{k-1}^2 + 4 > 0 $$
$x_{k-1} > 0, y_{k-1} > 0$ より $2x_{k-1} > 3y_{k-1}$ であるから、$x_k > 0$ が成り立つ。
初項について、$x, y$ は自然数かつ $x^2 - 3y^2 = 1$ を満たすので、$x_0^2 - 3y_0^2 = 1, x_0 > 0, y_0 \geqq 1$ が成立している。 よって、$y_k \geqq 1$ である限り、上記より(1)の操作を繰り返し適用することができ、
$$ y_0 > y_1 > y_2 > \dots \geqq 0 $$
という整数の狭義単調減少列が得られる。 $y_0$ は有限の整数であるため、この減少列は無限に続くことはなく、必ずある自然数 $n$ において $y_n = 0$ となる。
$y_n = 0$ のとき、常に保たれている関係式 $x_n^2 - 3y_n^2 = 1$ より $x_n^2 = 1$ となる。 同時に $x_n > 0$ も保たれているため、$x_n = 1$ である。 したがって $\begin{pmatrix} x_n \\ y_n \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix}$ であり、 数列の定義から $\begin{pmatrix} 1 \\ 0 \end{pmatrix} = A^n \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix}$ が成り立つ。(証明終)
解説
本問は $x^2 - 3y^2 = 1$ というペル方程式(Pell's equation)の解の構造を、行列を用いて考察する誘導問題である。 ペル方程式の自然数解は無数に存在するが、解となる $(x, y)$ の組に対し、適切な変換(本問の行列 $A$ を掛ける操作)を施すと、より値の小さい解 $(x', y')$ を作り出すことができる。 この操作を繰り返すと、最終的に「自明な解(基本解)」である $(1, 0)$ に行き着くこと(無限降下法)が、この問題を通じて証明されている。 なお、(2) で繰り返し操作を行う際、暗黙のうちに「$x$ の正」が保たれていることをきちんと論証できるかが、厳密な答案を作成する上でのポイントとなる。
答え
略(解法1の証明を参照)
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