九州大学 1999年 文系 第6問 解説

方針・初手
(1) は定義通りに2次方程式を解き、正の解を選択する。
(2) は絶対値の中身の差を計算し因数分解する。$x$ と $a$ の値の範囲から残りの因数の最小値を評価する。
(3) はすべての $n$ に対して条件が成り立つことから、$n \to \infty$ での振る舞いを考える。(2) で示した不等式を漸化式に適用することで得られる評価式と、数列が有界であることの矛盾を導く背理法を用いる。
解法1
(1)
$f(a) = a$ より、$1 - a^2 = a$ である。整理すると
$$a^2 + a - 1 = 0$$
これを解くと
$$a = \frac{-1 \pm \sqrt{1^2 - 4 \cdot 1 \cdot (-1)}}{2} = \frac{-1 \pm \sqrt{5}}{2}$$
$a$ は正の実数であるから
$$a = \frac{\sqrt{5} - 1}{2}$$
(2)
$f(x) - f(a)$ を計算すると
$$f(x) - f(a) = (1 - x^2) - (1 - a^2) = a^2 - x^2 = -(x - a)(x + a)$$
よって、その絶対値は
$$|f(x) - f(a)| = |-(x - a)(x + a)| = |x - a||x + a|$$
となる。ここで、$x \geqq \frac{1}{2}$ であり、(1) より $a = \frac{\sqrt{5} - 1}{2}$ であるから
$$x + a \geqq \frac{1}{2} + \frac{\sqrt{5} - 1}{2} = \frac{\sqrt{5}}{2}$$
が成り立つ。$\frac{\sqrt{5}}{2} > 0$ であるから、$x + a > 0$ であり、$|x + a| = x + a \geqq \frac{\sqrt{5}}{2}$ となる。
この不等式の両辺に $|x - a| \geqq 0$ を掛けると
$$|x - a||x + a| \geqq \frac{\sqrt{5}}{2} |x - a|$$
すなわち
$$|f(x) - f(a)| \geqq \frac{\sqrt{5}}{2} |x - a|$$
が成り立つ。
(3)
$x_1 \neq a$ であると仮定する。
すべての $n$ に対して $\frac{1}{2} \leqq x_n \leqq 1$ が成り立つとすると、$x_n \geqq \frac{1}{2}$ であるため、(2) の結果から
$$|f(x_n) - f(a)| \geqq \frac{\sqrt{5}}{2} |x_n - a|$$
が成り立つ。$x_{n+1} = f(x_n)$ であり、$f(a) = a$ であるから、上式は
$$|x_{n+1} - a| \geqq \frac{\sqrt{5}}{2} |x_n - a|$$
と書き換えられる。これを繰り返し用いると
$$|x_n - a| \geqq \frac{\sqrt{5}}{2} |x_{n-1} - a| \geqq \left( \frac{\sqrt{5}}{2} \right)^2 |x_{n-2} - a| \geqq \cdots \geqq \left( \frac{\sqrt{5}}{2} \right)^{n-1} |x_1 - a|$$
となる。
ここで、$\sqrt{5} > \sqrt{4} = 2$ より $\frac{\sqrt{5}}{2} > 1$ である。また、仮定より $x_1 \neq a$ であるため $|x_1 - a| > 0$ である。
したがって、$n \to \infty$ のとき
$$\left( \frac{\sqrt{5}}{2} \right)^{n-1} |x_1 - a| \to \infty$$
となるため、$n$ が十分に大きいとき $|x_n - a|$ の値はいくらでも大きくなる。
しかし、すべての $n$ に対して $\frac{1}{2} \leqq x_n \leqq 1$ であり、また $a = \frac{\sqrt{5} - 1}{2}$ も $\frac{1}{2} \leqq a \leqq 1$ を満たすため、差の絶対値は
$$|x_n - a| \leqq 1 - \frac{1}{2} = \frac{1}{2}$$
で抑えられ、有界でなければならない。これは $|x_n - a| \to \infty$ であることに矛盾する。
したがって、$x_1 = a$ でなければならない。
解説
差分方程式(漸化式)で定まる数列の挙動を調べる問題で、不動点 $a$ の周辺での発散を示す典型的な構成である。
(2) で評価した公比にあたる $\frac{\sqrt{5}}{2}$ が $1$ より大きいことが本質的である。これにより、$x_n$ が $a$ から少しでもずれていれば、ステップを進めるごとにそのずれが等比数列的に拡大していくことが示される。
問題の条件である「すべての $n$ について数列が有界の範囲にとどまる」ことと、「ずれが無限大に発散する」ことが両立しないため、最初から一切のずれがない(すなわち初期値が不動点そのものである)という結論が導かれる。
答え
(1)
$$a = \frac{\sqrt{5} - 1}{2}$$
(2)
上記 解法1 の通り証明された。
(3)
上記 解法1 の通り証明された。
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