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九州大学 2000年 文系 第3問 解説

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九州大学 2000年 文系 第3問 解説

方針・初手

本問の「合同」とは、多項式の各項の係数の偶奇が一致すること、すなわち係数を2で割った余りが等しいこと(法2での合同)を意味します。解説では、整式 $A$ と $B$ が合同であることを $A \equiv B$ と表記します。 M多項式同士の積を考える際、各係数は $0$ または $1$ であり、最高次の係数は常に $1$ となるため、積をとっても次数は各多項式の次数の和になります。したがって、可約な多項式はより次数の低い多項式の積に分解でき、既約かどうかは低次の既約多項式から順に調べていくことで判定できます。

解法1

本解説では、2つの整式 $P(x), Q(x)$ が合同であることを $P(x) \equiv Q(x)$ と表す。これは $P(x)$ と $Q(x)$ の各次数の係数の偶奇がすべて一致することと同値である。

(1)

1次のM多項式は $x$ と $x+1$ の2つである。 2つの1次のM多項式の積として得られる整式は、以下の3通りである。

$$x \cdot x = x^2$$

$$x(x+1) = x^2+x$$

$$(x+1)^2 = x^2+2x+1 \equiv x^2+1$$

これらのうち、$x^2+x+1$ と合同になるものは存在しない。 $x^2+x+1$ は2次式であり、可約であるならば1次式の積と合同にならなければならないが、上記の通りそうならない。 したがって、$x^2+x+1$ は既約なM多項式である。

(2)

M多項式の最高次の係数は $1$ であるため、2つのM多項式の積の最高次の係数も $1 \cdot 1 = 1$ となり奇数である。よって、合同を考えても次数は下がらず、積の次数はもとの多項式の次数の和となる。 このことから、1次のM多項式は2つの1次以上のM多項式の積と合同になることはなく、すべて既約である。 すなわち、1次の既約なM多項式は $x, x+1$ の2つである。

次に、多項式 $P(x)$ が1次のM多項式と合同な因数をもつ条件を考える。 $P(x) \equiv x Q(x)$ となるのは、定数項が偶数(M多項式としては $0$)のときである。 $P(x) \equiv (x+1) Q(x)$ となるのは、$P(1) \equiv (1+1)Q(1) = 2Q(1) \equiv 0$ のとき、すなわち係数の和が偶数となるときである。 逆に、定数項が $0$ であれば $x$ を、係数の和が偶数であれば $x-1 \equiv x+1$ を因数にもつため可約となる。 よって、M多項式が1次式を因数にもたないための条件は、「定数項が $1$」かつ「係数の和が奇数」であることである。

2次のM多項式 $x^2+ax+b$ ($a, b \in \{0, 1\}$) が既約であるためには、1次式を因数にもたないことが必要十分である。 「定数項が $1$」より $b=1$。 「係数の和が奇数」より $1+a+1 = a+2$ が奇数となり、$a=1$。 よって、2次の既約なM多項式は $x^2+x+1$ のみである。

3次のM多項式が可約であるとき、「1次式と2次式の積」または「1次式3つの積」と合同になるため、必ず1次式を因数にもつ。 したがって、3次のM多項式 $x^3+ax^2+bx+c$ ($a, b, c \in \{0, 1\}$) が既約であるための条件も、1次式を因数にもたないこと、すなわち「定数項が $1$」かつ「係数の和が奇数」であることである。 「定数項が $1$」より $c=1$。 「係数の和が奇数」より $1+a+b+1 = a+b+2$ が奇数となり、$a+b$ は奇数である。 これを満たすのは $(a, b) = (1, 0), (0, 1)$ のときである。 よって、3次の既約なM多項式は $x^3+x^2+1$ と $x^3+x+1$ の2つである。

(3)

$f(x) = x^4+x+1$ とする。 これが可約であると仮定する。$f(x)$ は4次式であるから、可約ならば以下のいずれかを満たす。

(i) 1次のM多項式を因数にもつ場合

(2)で確認した通り、1次式を因数にもつならば、定数項が $0$ であるか、係数の和が偶数でなければならない。 $f(x)$ の定数項は $1$ である。 また、係数の和は $1+1+1 = 3$ であり奇数である。 よって、(i) の場合は起こり得ない。

(ii) 2次の既約なM多項式2つの積と合同になる場合

もし可約な2次式を含む積であれば、それは1次式に分解できるため (i) の場合に帰着する。したがって、ここでは既約な2次式同士の積のみを考えればよい。 (2)より、既約な2次のM多項式は $x^2+x+1$ のみである。 よって、この場合 $f(x)$ は $(x^2+x+1)^2$ と合同でなければならない。 展開すると、

$$(x^2+x+1)^2 = x^4+2x^3+3x^2+2x+1 \equiv x^4+x^2+1$$

となり、$x^4+x+1$ と合同ではないため、(ii) の場合も起こり得ない。

(i), (ii) より、$f(x)$ は2つの1次以上のM多項式の積と合同にならず、可約ではない。 したがって、$x^4+x+1$ は既約なM多項式である。

解説

本問は、大学数学における「有限体 $\mathbb{F}_2$ 上の多項式環」の理論を高校生向けに翻訳したものです。 係数の偶奇のみに注目して多項式を扱うため、実数範囲の因数定理に似た性質($x=0$ や $x=1$ を代入した値の偶奇で因数を持つか判定できる)が成り立ちます。 (3) において、4次式が可約であるパターンを「1次式を含む場合」と「既約な2次式同士の場合」に漏れなく場合分けできるかが最大のポイントです。このような「低次の既約多項式から順に求めていく考え方」は、整数問題や多項式の問題で非常に強力な武器となります。

答え

(1) 題意の通り証明された。

(2) 1次: $x, x+1$ 2次: $x^2+x+1$ 3次: $x^3+x^2+1, x^3+x+1$

(3) 既約なM多項式である。

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