九州大学 2009年 文系 第1問 解説

方針・初手
直角二等辺三角形の対称性に着目して各線分の長さや角度を求めていく図形的なアプローチと、直角を利用して座標軸を導入し、ベクトルとして処理するアプローチのいずれも有効である。
本問は辺の長さの比と角度のみに依存するため、扱いやすい長さ(例えば $AM = a$ など)を文字で置いて計算を進めると見通しが良くなる。求める角度の大小判定については、直接角度を求めることは難しいため、余弦($\cos$)の値を計算し、三角関数の単調性を利用して比較する。
解法1
(1)
直角二等辺三角形 $ABC$ は $\angle A = 90^\circ$ であり、$AB = AC$ である。 点 $M$ は辺 $BC$ の中点であるから、$AM \perp BC$ であり、$AM = BM = CM$ が成り立つ。 ここで $AM = a$ ($a > 0$) とおく。
点 $P$ は線分 $AM$ を $1:3$ に内分する点であるから、$AP = \frac{1}{4}a$、$PM = \frac{3}{4}a$ である。
直線 $QR$ は辺 $BC$ に平行であるから、$QR \perp AM$ であり、$\triangle AQR \sim \triangle ABC$ となる。 その相似比は $AP : AM = \frac{1}{4}a : a = 1 : 4$ である。 よって、底辺 $QR$ の長さは $BC$ の $\frac{1}{4}$ となる。
$$ QR = \frac{1}{4}BC = \frac{1}{4}(2a) = \frac{1}{2}a $$
直線 $AM$ は二等辺三角形 $ABC$ の対称軸であるから、点 $P$ は線分 $QR$ の中点となる。 したがって、$PQ = PR = \frac{1}{4}a$ である。
$\triangle MPQ$ と $\triangle MPR$ は、$\angle MPQ = \angle MPR = 90^\circ$ の直角三角形であるから、三平方の定理より
$$ MQ = MR = \sqrt{PM^2 + PQ^2} = \sqrt{\left(\frac{3}{4}a\right)^2 + \left(\frac{1}{4}a\right)^2} = \frac{\sqrt{10}}{4}a $$
$\triangle MQR$ において、余弦定理を用いると
$$ \begin{aligned} \cos \angle QMR &= \frac{MQ^2 + MR^2 - QR^2}{2 \cdot MQ \cdot MR} \\ &= \frac{\frac{10}{16}a^2 + \frac{10}{16}a^2 - \left(\frac{1}{2}a\right)^2}{2 \cdot \frac{\sqrt{10}}{4}a \cdot \frac{\sqrt{10}}{4}a} \\ &= \frac{\frac{20}{16}a^2 - \frac{4}{16}a^2}{\frac{20}{16}a^2} \\ &= \frac{16}{20} \\ &= \frac{4}{5} \end{aligned} $$
(2)
$\theta = \angle QMR$ とおく。 (1) より $\cos \theta = \frac{4}{5}$ である。 $\cos \theta > 0$ であるから、$\theta$ は鋭角($0 < \theta < \frac{\pi}{2}$)であり、$0 < 2\theta < \pi$ である。
2倍角の公式より
$$ \begin{aligned} \cos 2\theta &= 2\cos^2 \theta - 1 \\ &= 2 \left(\frac{4}{5}\right)^2 - 1 \\ &= \frac{32}{25} - \frac{25}{25} \\ &= \frac{7}{25} \end{aligned} $$
次に、$\alpha = \angle QMB$ とおく。 点 $Q$ から直線 $BC$(またはその延長)に垂線 $QH$ を下ろすと、$QR \parallel BC$ より $QH = PM = \frac{3}{4}a$ である。 また、$AM \perp BC$ より四角形 $PQHM$ は長方形となるため、$MH = PQ = \frac{1}{4}a$ である。
$\triangle QMH$ は $\angle QHM = 90^\circ$ の直角三角形であるから、
$$ \cos \alpha = \cos \angle QMH = \frac{MH}{MQ} = \frac{\frac{1}{4}a}{\frac{\sqrt{10}}{4}a} = \frac{1}{\sqrt{10}} $$
$\cos \alpha > 0$ であるから、$0 < \alpha < \frac{\pi}{2}$ である。
ここで、$\cos 2\theta$ と $\cos \alpha$ の大小を比較する。両者ともに正であるため、2乗して比較する。
$$ \cos^2 2\theta = \left(\frac{7}{25}\right)^2 = \frac{49}{625} $$
$$ \cos^2 \alpha = \left(\frac{1}{\sqrt{10}}\right)^2 = \frac{1}{10} = \frac{62.5}{625} $$
よって、$\cos^2 2\theta < \cos^2 \alpha$ であり、$\cos 2\theta < \cos \alpha$ が成り立つ。 関数 $y = \cos x$ は区間 $(0, \pi)$ において単調減少であるから、$2\theta > \alpha$ が成り立つ。
したがって、$\angle QMR$ の2倍は $\angle QMB$ より大きい。
解法2
(1)
直角二等辺三角形の対称性を利用し、点 $M$ を原点とする座標平面を設定する。 点 $A$ を $y$ 軸の正の部分に、点 $C$ を $x$ 軸の正の部分にとる。 $AM = a$ ($a > 0$) とすると、$\angle A = 90^\circ$、$AM = BM = CM$ であることから、各点の座標は次のように表せる。
$$ A(0, a), \quad B(-a, 0), \quad C(a, 0) $$
点 $P$ は線分 $AM$ を $1:3$ に内分する点であるから、$P$ の座標は $\left(0, \frac{3}{4}a\right)$ となる。
直線 $QR$ は点 $P$ を通り $x$ 軸(辺 $BC$)に平行な直線であるから、その方程式は $y = \frac{3}{4}a$ である。
直線 $AB$ は点 $A(0, a)$ と点 $B(-a, 0)$ を通るから、傾きは $1$ であり、方程式は $y = x + a$ である。 直線 $AC$ は点 $A(0, a)$ と点 $C(a, 0)$ を通るから、傾きは $-1$ であり、方程式は $y = -x + a$ である。
点 $Q$ は直線 $AB$ と直線 $QR$ の交点であるから、
$$ x + a = \frac{3}{4}a \quad \iff \quad x = -\frac{1}{4}a $$
よって、$Q\left(-\frac{1}{4}a, \frac{3}{4}a\right)$ となる。 点 $R$ は直線 $AC$ と直線 $QR$ の交点であるから、
$$ -x + a = \frac{3}{4}a \quad \iff \quad x = \frac{1}{4}a $$
よって、$R\left(\frac{1}{4}a, \frac{3}{4}a\right)$ となる。
ベクトル $\vec{MQ}$, $\vec{MR}$ の成分はそれぞれ
$$ \vec{MQ} = \left(-\frac{1}{4}a, \frac{3}{4}a\right), \quad \vec{MR} = \left(\frac{1}{4}a, \frac{3}{4}a\right) $$
である。これらの内積と大きさを計算する。
$$ \begin{aligned} \vec{MQ} \cdot \vec{MR} &= \left(-\frac{1}{4}a\right) \left(\frac{1}{4}a\right) + \left(\frac{3}{4}a\right) \left(\frac{3}{4}a\right) \\ &= -\frac{1}{16}a^2 + \frac{9}{16}a^2 \\ &= \frac{8}{16}a^2 = \frac{1}{2}a^2 \end{aligned} $$
$$ |\vec{MQ}| = \sqrt{\left(-\frac{1}{4}a\right)^2 + \left(\frac{3}{4}a\right)^2} = \sqrt{\frac{10}{16}a^2} = \frac{\sqrt{10}}{4}a $$
対称性から $|\vec{MR}| = |\vec{MQ}| = \frac{\sqrt{10}}{4}a$ である。
したがって、求める余弦は
$$ \begin{aligned} \cos \angle QMR &= \frac{\vec{MQ} \cdot \vec{MR}}{|\vec{MQ}| |\vec{MR}|} \\ &= \frac{\frac{1}{2}a^2}{\left(\frac{\sqrt{10}}{4}a\right)^2} \\ &= \frac{\frac{1}{2}}{\frac{10}{16}} \\ &= \frac{8}{10} = \frac{4}{5} \end{aligned} $$
(2)
$\theta = \angle QMR$、$\alpha = \angle QMB$ とおく。 (1) と同様の計算により、$\cos 2\theta = \frac{7}{25}$ を得る。
ベクトル $\vec{MB}$ の成分は $\vec{MB} = (-a, 0)$ であり、$|\vec{MB}| = a$ である。 $\vec{MQ}$ と $\vec{MB}$ の内積は
$$ \vec{MQ} \cdot \vec{MB} = \left(-\frac{1}{4}a\right)(-a) + \left(\frac{3}{4}a\right)(0) = \frac{1}{4}a^2 $$
よって、$\cos \alpha$ は
$$ \cos \alpha = \frac{\vec{MQ} \cdot \vec{MB}}{|\vec{MQ}| |\vec{MB}|} = \frac{\frac{1}{4}a^2}{\frac{\sqrt{10}}{4}a \cdot a} = \frac{1}{\sqrt{10}} $$
以後の $\cos 2\theta$ と $\cos \alpha$ の大小比較、および角度の大小判定については、解法1の (2) と全く同様であるため省略する。
解説
図形の性質を利用して長さの比を出し、三角比を適用する解法と、座標軸を設定してベクトルで処理する解法の2通りを示した。直角が条件に含まれる図形問題や、対称性が高い問題では、解法2のように座標を導入することで機械的な計算に落とし込めることが多い。
角度の大小を比較する際には、その角度が属する範囲(ここでは $0 < 2\theta < \pi$ および $0 < \alpha < \pi$)を明記した上で、関数 $\cos x$ がその範囲で単調減少であることを理由として述べる記述が必須である。
答え
(1) $\frac{4}{5}$
(2) $\angle QMR$ の2倍の方が大きい。($2\angle QMR > \angle QMB$)
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