九州大学 2019年 文系 第1問 解説

方針・初手
硬貨を投げて表が出る回数を文字でおき、出た10個の数字の積をその文字を用いた式で表す。積が8桁の数になるという条件を、常用対数を用いた不等式に翻訳し、条件を満たす表の出る回数を特定する。その後、反復試行の確率の公式を用いて確率を計算する。
解法1
10回硬貨を投げるとき、表が出る回数を $k$ ($k$ は $0 \le k \le 10$ を満たす整数)とする。このとき、裏が出る回数は $10-k$ 回となる。
出た数字10個の積を $P$ とすると、$P$ は次のように表される。
$$ P = 3^k \cdot 8^{10-k} = 3^k \cdot (2^3)^{10-k} = 3^k \cdot 2^{30-3k} $$
積 $P$ が8桁の整数になるための条件は、
$$ 10^7 \le P < 10^8 $$
である。底が10の対数をとると、底 $10 > 1$ より大小関係は変わらないため、
$$ 7 \le \log_{10} P < 8 $$
となる。ここで $\log_{10} P$ を計算すると、
$$ \begin{aligned} \log_{10} P &= \log_{10} \left( 3^k \cdot 2^{30-3k} \right) \\ &= k \log_{10} 3 + (30-3k) \log_{10} 2 \\ &= k \cdot 0.4771 + (30-3k) \cdot 0.3010 \\ &= 0.4771k + 9.030 - 0.9030k \\ &= 9.030 - 0.4259k \end{aligned} $$
となる。これを不等式に代入して、
$$ 7 \le 9.030 - 0.4259k < 8 $$
各辺から $9.030$ を引くと、
$$ -2.030 \le -0.4259k < -1.030 $$
各辺を $-0.4259$ で割ると、負の数で割るため不等号の向きが変わり、
$$ \frac{1.030}{0.4259} < k \le \frac{2.030}{0.4259} $$
分母と分子をそれぞれ10000倍して計算すると、
$$ \frac{10300}{4259} < k \le \frac{20300}{4259} $$
ここで、境界の値を評価する。
$$ \frac{10300}{4259} = 2.41\cdots $$
$$ \frac{20300}{4259} = 4.76\cdots $$
したがって、$k$ の満たすべき条件は、
$$ 2.41\cdots < k \le 4.76\cdots $$
$k$ は $0 \le k \le 10$ を満たす整数であるから、この不等式を満たす $k$ は $k = 3, 4$ のみである。
硬貨を1回投げたとき、表が出る確率と裏が出る確率はともに $\frac{1}{2}$ である。求める確率は、10回の試行のうち表がちょうど3回、またはちょうど4回出る確率なので、反復試行の確率より、
$$ {}_{10}\text{C}_3 \left(\frac{1}{2}\right)^3 \left(\frac{1}{2}\right)^7 + {}_{10}\text{C}_4 \left(\frac{1}{2}\right)^4 \left(\frac{1}{2}\right)^6 = \frac{{}_{10}\text{C}_3 + {}_{10}\text{C}_4}{2^{10}} $$
分子の組合せの数を計算する。
$$ {}_{10}\text{C}_3 = \frac{10 \cdot 9 \cdot 8}{3 \cdot 2 \cdot 1} = 120 $$
$$ {}_{10}\text{C}_4 = \frac{10 \cdot 9 \cdot 8 \cdot 7}{4 \cdot 3 \cdot 2 \cdot 1} = 210 $$
よって、求める確率は、
$$ \frac{120 + 210}{1024} = \frac{330}{1024} = \frac{165}{512} $$
解説
「桁数」と「確率(反復試行)」を融合した標準的な問題である。 ある自然数 $N$ が $m$ 桁であるための必要十分条件は $10^{m-1} \le N < 10^m$ である。この各辺の常用対数をとった $m-1 \le \log_{10} N < m$ という不等式は頻出なので確実に使いこなせるようにしておきたい。 本問では、表が出る回数 $k$ についての一次不等式に帰着される。小数の割り算が現れるが、整数 $k$ の値を絞り込むことだけが目的なので、正確な小数展開を最後まで求める必要はなく、大まかな値の評価(2より大きく3より小さい、など)ができれば十分である。 また、問題文には硬貨の表裏が出る確率が明記されていないが、特に断りがない限りそれぞれ $\frac{1}{2}$ として扱うのが数学の問題における暗黙の了解である。
答え
$$ \frac{165}{512} $$
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