九州大学 1985年 理系 第3問 解説

方針・初手
(1) は動点 $P$ の位置に対する $a, b$ の関係式を導くために、$AP=x, PB=y$ とおいて $\triangle APB$ で余弦定理を用いる。円周角の定理により、定点 $A, B$ に対する $\angle APB$ は $P$ が優弧にあるか劣弧にあるかで2つの値をとることに注意して場合分けを行う。 (2) は (1) の結果である「$P$ が弧の中点にあるとき $AP+PB$ が最大になる」ことを活用する。和が最大となる配列が正 $n$ 角形でないと仮定し、背理法を用いて証明を構成する。
解法1
(1) 円 $O$ の半径は $1$ である。定点 $A, B$ の間の距離を $AB = 2l$ ($0 < l \le 1$) とおく。 動点 $P$ に対し、$AP = x, PB = y$ とおくと、定義より
$$x + y = a, \quad x - y = b$$
これより、$x = \frac{a+b}{2}, y = \frac{a-b}{2}$ である。$x \ge 0, y \ge 0$ より $a \ge |b|$ である。
$\triangle APB$ において余弦定理を適用すると、
$$AB^2 = AP^2 + PB^2 - 2AP \cdot PB \cos \angle APB$$
すなわち
$$4l^2 = x^2 + y^2 - 2xy \cos \angle APB$$
が成り立つ。ここで、$x^2 + y^2 = \frac{a^2+b^2}{2}, 2xy = \frac{a^2-b^2}{2}$ を代入すると、
$$4l^2 = \frac{a^2+b^2}{2} - \frac{a^2-b^2}{2} \cos \angle APB$$
整理して、
$$8l^2 = a^2 (1 - \cos \angle APB) + b^2 (1 + \cos \angle APB)$$
を得る。
弦 $AB$ に対する円周角 $\angle APB$ を考える。 直線 $AB$ によって分割される円周のうち、弧の長さが半周以上のものを優弧、半周以下のものを劣弧とする($AB$ が直径のときはどちらも半周となる)。 正弦定理により、$\sin \angle APB = \frac{AB}{2 \cdot 1} = l$ である。 $0 < l \le 1$ より、$\angle APB$ は優弧上にあるとき $\theta$ ($0 < \theta \le \frac{\pi}{2}$, $\sin \theta = l$)、劣弧上にあるとき $\pi - \theta$ となる。 なお、このとき $\cos \theta = \sqrt{1-l^2}$ である。
(i) $P$ が優弧上にあるとき
$\angle APB = \theta$ であり、
$$a^2 (1 - \cos \theta) + b^2 (1 + \cos \theta) = 8l^2$$
$$\frac{a^2}{\frac{8l^2}{1-\cos\theta}} + \frac{b^2}{\frac{8l^2}{1+\cos\theta}} = 1$$
これは原点を中心とする楕円の一部である。
(ii) $P$ が劣弧上にあるとき
$\angle APB = \pi - \theta$ であり、$\cos(\pi - \theta) = -\cos \theta$ となるから、
$$a^2 (1 + \cos \theta) + b^2 (1 - \cos \theta) = 8l^2$$
$$\frac{a^2}{\frac{8l^2}{1+\cos\theta}} + \frac{b^2}{\frac{8l^2}{1-\cos\theta}} = 1$$
これも原点を中心とする楕円の一部である。
点 $P$ が円周上を動くとき、$P$ が $A, B$ に近づく限界を考える。 $P = A$ のとき $x = 0, y = 2l$ より $(a, b) = (2l, -2l)$ である。 $P = B$ のとき $x = 2l, y = 0$ より $(a, b) = (2l, 2l)$ である。 これらはいずれの楕円上にも存在し、2つの楕円弧はこの2点で接続される。
以上より、$(a, b)$ の表す図形は、上記2つの楕円の $a \ge |b|$ を満たす部分を合わせたものとなる。
また、$a$ が最大となるのは、$a^2$ の分母が大きい方、すなわち (i) の楕円において $b = 0$ となるときである。 このとき $a = \sqrt{\frac{8l^2}{1-\cos\theta}}$ となる。 $b = 0$ とは $AP - PB = 0$、すなわち $AP = PB$ となることである。 したがって、$a$ が最大となるのは、点 $P$ が優弧 $AB$ の中点(線分 $AB$ の垂直二等分線と円周の交点のうち、$A, B$ から遠い方)にあるときである。
(2) 円の周上の $n$ 個の点を順に $P_1, P_2, \cdots, P_n$ とする。 これらの点がなす多角形の周の長さを $L$ とおく。
$$L = P_1P_2 + P_2P_3 + \cdots + P_{n-1}P_n + P_nP_1$$
$L$ が最大となるとき、多角形 $P_1P_2 \cdots P_n$ は正 $n$ 角形であることを背理法によって示す。
$L$ が最大である配列において、正 $n$ 角形ではないと仮定する。 このとき、隣り合う2辺の長さが異なる箇所が少なくとも1つ存在する。 一般性を失わず、その2辺を $P_{n-1}P_n$ と $P_nP_1$ とし、$P_{n-1}P_n \neq P_nP_1$ であるとする。
ここで、$P_n$ 以外の $n-1$ 個の点 $P_1, P_2, \cdots, P_{n-1}$ の位置を固定し、点 $P_n$ のみを弧 $P_{n-1}P_1$(他の固定された点を含まない方の弧)上で動かすことを考える。 周の長さ $L$ のうち、$P_n$ の位置に依存するのは $P_{n-1}P_n + P_nP_1$ のみである。
(1) の結果より、固定された2定点(ここでは $P_{n-1}$ と $P_1$)に対して、円周上の動点 $P_n$ との距離の和 $P_{n-1}P_n + P_nP_1$ が最大となるのは、点 $P_n$ が定点間の距離を二等分する位置、すなわち弧 $P_{n-1}P_1$ の中点にあるときである。 仮定より $P_{n-1}P_n \neq P_nP_1$ であるため、現在の $P_n$ は弧の中点にはない。 したがって、$P_n$ を弧 $P_{n-1}P_1$ の中点に移動させることで、$P_{n-1}P_n + P_nP_1$ の値は真に大きくなる。
これは、最初の配列において $L$ が最大であったという前提に矛盾する。 ゆえに、$L$ が最大となるとき、任意の隣り合う2辺の長さは等しくなければならない。 円に内接し、すべての辺の長さが等しい $n$ 角形は正 $n$ 角形である。
よって、$P_1, P_2, \cdots, P_n$ は正 $n$ 角形の頂点として配列されている。
解法2
(2) の別解(凸関数とイェンゼンの不等式を用いた証明)
円の半径を $R$ とする。 隣り合う2点 $P_k, P_{k+1}$ (ただし $P_{n+1} = P_1$) が円の中心に対して張る中心角を $\theta_k$ ($1 \le k \le n$) とする。 点 $P_1, P_2, \cdots, P_n$ は円周上に順に並んでいるため、
$$\sum_{k=1}^n \theta_k = 2\pi, \quad 0 < \theta_k < 2\pi$$
である。このとき、辺 $P_k P_{k+1}$ の長さは、正弦定理より $2R \sin \frac{\theta_k}{2}$ と表される。 したがって、周の長さの総和 $L$ は
$$L = \sum_{k=1}^n 2R \sin \frac{\theta_k}{2}$$
となる。
関数 $f(x) = \sin x$ は $0 < x < \pi$ の範囲で上に凸な関数である。 イェンゼンの不等式より、
$$\frac{1}{n} \sum_{k=1}^n f\left(\frac{\theta_k}{2}\right) \le f\left( \frac{1}{n} \sum_{k=1}^n \frac{\theta_k}{2} \right)$$
が成り立つ。これに $f(x) = \sin x$ と $\sum_{k=1}^n \frac{\theta_k}{2} = \pi$ を代入すると、
$$\frac{1}{n} \sum_{k=1}^n \sin \frac{\theta_k}{2} \le \sin \left( \frac{\pi}{n} \right)$$
$$\sum_{k=1}^n 2R \sin \frac{\theta_k}{2} \le 2nR \sin \frac{\pi}{n}$$
すなわち
$$L \le 2nR \sin \frac{\pi}{n}$$
となる。 等号が成立するのは、$\frac{\theta_1}{2} = \frac{\theta_2}{2} = \cdots = \frac{\theta_n}{2}$ のとき、すなわち $\theta_1 = \theta_2 = \cdots = \theta_n = \frac{2\pi}{n}$ のときである。 これはすべての中心角が等しいことを意味し、$P_1, P_2, \cdots, P_n$ が正 $n$ 角形の頂点として配列されていることを示している。
解説
(1) は動点から2定点までの距離の和と差を座標とみなしたときの軌跡を求める問題である。余弦定理と円周角の定理を結びつけることで、2つの楕円の方程式が導出できる。優弧と劣弧で円周角が異なるため、場合分けが必要になる点に注意して立式する。 (2) は図形の極値問題の典型である。(1) で「2点からの距離の和が最大になるのは中点のとき」という結果を証明しているため、これを背理法に組み込んで (2) を証明するのが出題者の意図に沿った自然な解法である。解法2として示した凸不等式を用いる方法は、(1) を経由せずに独立して証明できる強力な手法である。
答え
(1) 線分 $AB$ の長さを $2l$ ($0 < l \le 1$)、$\cos \theta = \sqrt{1-l^2}$ とする。 $(a, b)$ の表す図形は、2つの楕円
$$\frac{a^2}{\frac{8l^2}{1-\cos\theta}} + \frac{b^2}{\frac{8l^2}{1+\cos\theta}} = 1$$
および
$$\frac{a^2}{\frac{8l^2}{1+\cos\theta}} + \frac{b^2}{\frac{8l^2}{1-\cos\theta}} = 1$$
のうち、$a \ge |b|$ を満たす部分を合わせた図形である。 また、$a$ が最大となるのは、点 $P$ が優弧 $AB$ の中点(線分 $AB$ の垂直二等分線と円周の交点のうち、$A, B$ から遠い方)にあるときである。
(2) $P_1, P_2, \cdots, P_n$ が正 $n$ 角形の頂点として配列されているとき。(証明は解法を参照)
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