大阪大学 2006年 理系 第5問 解説

方針・初手
正方形を座標平面上に置き、各頂点や点の座標を $t$ を用いて表すことで代数的に処理するのが見通しが良い。 光の反射の法則(入射角と反射角が等しいこと)から、各線分の傾きが符号を変えながら連鎖的に定まることに着目する。 (1) は求めた各点の座標が、対応する辺の内部にあるための条件を連立不等式として解く。 (2) は、四角形の向かい合う辺の傾きが等しいことから平行四辺形になることを見抜き、底辺と高さ、あるいは座標を用いた面積公式から関数 $f(t)$ を導出する。最大値は相加平均と相乗平均の大小関係を用いて求める。
解法1
(1)
座標平面上に正方形 $ABCD$ を設定し、$A(0,1), B(0,0), C(1,0), D(1,1)$ とする。 点 $P$ は辺 $BC$ 上(頂点を除く)にあるため、その座標は $P(t, 0)$ とおける。このとき、条件より $0 < t < 1$ である。 直線 $AP$ の傾きは $\frac{0-1}{t-0} = -\frac{1}{t}$ である。
$\angle APB = \angle QPC$ より、直線 $PQ$ は直線 $AP$ と $y$ 軸(または $x$ 軸の法線)に関して対称な傾きを持つため、直線 $PQ$ の傾きは $\frac{1}{t}$ である。 したがって、直線 $PQ$ の方程式は $y = \frac{1}{t}(x-t)$ となる。 点 $Q$ は辺 $CD$ (直線 $x=1$)上にあるため、$x=1$ を代入して $y = \frac{1}{t}(1-t) = \frac{1}{t}-1$ となる。 点 $Q$ が辺 $CD$ の内部にある条件は $0 < \frac{1}{t}-1 < 1$ である。 これを解くと、
$$ 1 < \frac{1}{t} < 2 \iff \frac{1}{2} < t < 1 $$
次に、$\angle PQC = \angle RQD$ より、直線 $QR$ の傾きは直線 $PQ$ の傾き $\frac{1}{t}$ の符号を反転させた $-\frac{1}{t}$ となる。 直線 $QR$ の方程式は $y - \left(\frac{1}{t}-1\right) = -\frac{1}{t}(x-1)$ である。 点 $R$ は辺 $DA$ (直線 $y=1$)上にあるため、$y=1$ を代入すると、
$$ 1 - \left(\frac{1}{t}-1\right) = -\frac{1}{t}(x-1) $$
$$ 2 - \frac{1}{t} = -\frac{1}{t}(x-1) $$
$$ -2t + 1 = x - 1 \iff x = 2 - 2t $$
点 $R$ が辺 $DA$ の内部にある条件は $0 < 2 - 2t < 1$ である。 これを解くと、
$$ -2 < -2t < -1 \iff \frac{1}{2} < t < 1 $$
さらに、$\angle QRD = \angle SRA$ より、直線 $RS$ の傾きは直線 $QR$ の傾き $-\frac{1}{t}$ の符号を反転させた $\frac{1}{t}$ となる。 直線 $RS$ の方程式は $y - 1 = \frac{1}{t}(x - (2-2t))$ である。 点 $S$ は辺 $AB$ (直線 $x=0$)上にあるため、$x=0$ を代入すると、
$$ y - 1 = \frac{1}{t}(-2+2t) = -\frac{2}{t} + 2 \iff y = 3 - \frac{2}{t} $$
点 $S$ が辺 $AB$ の内部にある条件は $0 < 3 - \frac{2}{t} < 1$ である。 これを解くと、
$$ -3 < -\frac{2}{t} < -2 \iff 2 < \frac{2}{t} < 3 \iff \frac{2}{3} < t < 1 $$
すべての点が各辺の内部に存在するためには、これらすべての $t$ の条件を同時に満たす必要がある。 したがって、求める範囲は求めた範囲の共通部分となり、
$$ \frac{2}{3} < t < 1 $$
(2)
(1) で求めた直線の傾きより、四角形 $PQRT$ について以下が成り立つ。 直線 $PQ$ の傾きは $\frac{1}{t}$、直線 $RT$(直線 $RS$)の傾きも $\frac{1}{t}$ である。 直線 $QR$ の傾きは $-\frac{1}{t}$、直線 $TP$(直線 $AP$)の傾きも $-\frac{1}{t}$ である。 向かい合う辺がそれぞれ平行であるため、四角形 $PQRT$ は平行四辺形である。
平行四辺形 $PQRT$ の面積 $f(t)$ を、底辺 $PQ$ の長さと、点 $R$ から直線 $PQ$ に下ろした垂線の長さ(高さ $h$)から求める。 直角三角形 $PCQ$ において $PC = 1-t$、$CQ = \frac{1}{t}-1$ であるから、三平方の定理より
$$ PQ = \sqrt{(1-t)^2 + \left(\frac{1}{t}-1\right)^2} = \sqrt{(1-t)^2 + \frac{(1-t)^2}{t^2}} = (1-t)\sqrt{1+\frac{1}{t^2}} = (1-t)\frac{\sqrt{t^2+1}}{t} $$
($0 < t < 1$ より $1-t > 0$、$t > 0$ である)
直線 $PQ$ の方程式は $y = \frac{1}{t}(x-t) \iff x - ty - t = 0$ である。 点 $R(2-2t, 1)$ と直線 $x - ty - t = 0$ の距離 $h$ は、点と直線の距離の公式より
$$ h = \frac{|(2-2t) - t\cdot 1 - t|}{\sqrt{1^2 + (-t)^2}} = \frac{|2-4t|}{\sqrt{t^2+1}} $$
ここで、(1) より $\frac{2}{3} < t < 1$ であるから、$4t > \frac{8}{3} > 2$ となり $2-4t < 0$ である。 よって絶対値を外すと $h = \frac{4t-2}{\sqrt{t^2+1}}$ となる。
平行四辺形の面積 $f(t)$ は底辺と高さの積であるから、
$$ f(t) = PQ \cdot h = \frac{(1-t)\sqrt{t^2+1}}{t} \cdot \frac{4t-2}{\sqrt{t^2+1}} = \frac{(1-t)(4t-2)}{t} $$
これを展開して整理すると、
$$ f(t) = \frac{-4t^2 + 6t - 2}{t} = 6 - \left(\frac{2}{t} + 4t\right) $$
$f(t)$ が最大となるのは、$\frac{2}{t} + 4t$ が最小となるときである。 $t > 0$ であるから、相加平均と相乗平均の大小関係より、
$$ \frac{2}{t} + 4t \ge 2\sqrt{\frac{2}{t} \cdot 4t} = 2\sqrt{8} = 4\sqrt{2} $$
等号が成立するのは $\frac{2}{t} = 4t$、すなわち $t^2 = \frac{1}{2}$ より $t = \frac{1}{\sqrt{2}}$ のときである。 この $t$ の値は、$\left(\frac{2}{3}\right)^2 = \frac{4}{9} < \frac{1}{2}$ より $\frac{2}{3} < \frac{1}{\sqrt{2}} < 1$ を満たすため、定義域内にある。
ゆえに、$f(t)$ の最大値は $6 - 4\sqrt{2}$ である。
解法2
(1)
直角三角形の相似に着目して幾何的に解く。 $\angle APB = \theta$ とすると、直角三角形 $ABP$ において $\tan \theta = \frac{AB}{BP} = \frac{1}{t}$ である。
点 $P, Q, R, S$ がそれぞれ辺の内部にあるとする。 直角三角形 $PCQ$ において、$\angle QPC = \angle APB = \theta$ より、
$$ \frac{CQ}{PC} = \tan \theta = \frac{1}{t} $$
$PC = 1 - BP = 1 - t$ であるから、
$$ CQ = \frac{1 - t}{t} = \frac{1}{t} - 1 $$
点 $Q$ が辺 $CD$ の内部にあるため $0 < CQ < 1$ を満たす。よって、
$$ 0 < \frac{1}{t} - 1 < 1 \iff 1 < \frac{1}{t} < 2 \iff \frac{1}{2} < t < 1 $$
直角三角形 $QDR$ において、$\angle RQD = \angle PQC = 90^\circ - \theta$ より、
$$ \frac{DR}{QD} = \tan(90^\circ - \theta) = \frac{1}{\tan \theta} = t $$
$QD = 1 - CQ = 1 - \left(\frac{1}{t} - 1\right) = 2 - \frac{1}{t}$ であるから、
$$ DR = t\left(2 - \frac{1}{t}\right) = 2t - 1 $$
点 $R$ が辺 $DA$ の内部にあるため $0 < DR < 1$ を満たす。よって、
$$ 0 < 2t - 1 < 1 \iff \frac{1}{2} < t < 1 $$
直角三角形 $RAS$ において、$\angle SRA = \angle QRD = 180^\circ - 90^\circ - (90^\circ - \theta) = \theta$ より、
$$ \frac{AS}{AR} = \tan \theta = \frac{1}{t} $$
$AR = 1 - DR = 1 - (2t - 1) = 2 - 2t$ であるから、
$$ AS = \frac{2 - 2t}{t} = \frac{2}{t} - 2 $$
点 $S$ が辺 $AB$ の内部にあるため $0 < AS < 1$ を満たす。よって、
$$ 0 < \frac{2}{t} - 2 < 1 \iff 2 < \frac{2}{t} < 3 \iff \frac{2}{3} < t < 1 $$
これらすべての条件を同時に満たす必要があるため、共通部分をとって
$$ \frac{2}{3} < t < 1 $$
(2)
解法1と同様に各座標を求め、成分による多角形の面積公式(ベクトルが張る平行四辺形の面積)を利用する。 直線 $AP$ は $y = -\frac{1}{t}x + 1$、直線 $RS$ は $y = \frac{1}{t}x - \frac{2}{t} + 3$ と表せる。 交点 $T$ の $x$ 座標は、これらを連立して
$$ -\frac{1}{t}x + 1 = \frac{1}{t}x - \frac{2}{t} + 3 \iff \frac{2}{t}x = \frac{2}{t} - 2 \iff x = 1 - t $$
これを直線 $AP$ の式に代入して $y = -\frac{1}{t}(1-t) + 1 = 2 - \frac{1}{t}$ となる。 よって、$T \left(1-t, 2-\frac{1}{t}\right)$ である。
四角形 $PQRT$ は向かい合う辺が平行な平行四辺形であり、隣り合う2辺のベクトルは
$$ \overrightarrow{PQ} = \left(1-t, \frac{1}{t}-1\right) $$
$$ \overrightarrow{PT} = \left(1-t-t, 2-\frac{1}{t}-0\right) = \left(1-2t, 2-\frac{1}{t}\right) $$
平行四辺形の面積 $f(t)$ は、これら2つの成分の外積の絶対値として求められる。
$$ f(t) = \left| (1-t)\left(2-\frac{1}{t}\right) - \left(\frac{1}{t}-1\right)(1-2t) \right| $$
中括弧の中を展開すると、
$$ (1-t)\left(2-\frac{1}{t}\right) = 2 - \frac{1}{t} - 2t + 1 = 3 - \frac{1}{t} - 2t $$
$$ \left(\frac{1}{t}-1\right)(1-2t) = \frac{1}{t} - 2 - 1 + 2t = -3 + \frac{1}{t} + 2t $$
よって、
$$ f(t) = \left| 3 - \frac{1}{t} - 2t - \left(-3 + \frac{1}{t} + 2t\right) \right| = \left| 6 - \frac{2}{t} - 4t \right| $$
(1) より $\frac{2}{3} < t < 1$ であるため、解法1の相加平均と相乗平均の大小関係の議論と同様に $6 - \frac{2}{t} - 4t > 0$ が示せる。 したがって絶対値記号はそのまま外れ、$f(t) = 6 - \frac{2}{t} - 4t$ を得る。 以降は解法1と同じ手順で最大値を求めることができる。
解説
入射角と反射角が等しいという条件から、直線の傾きが符号を変えながら推移していくことを利用する図形問題の典型テーマである。 代数的に直線の式を立てて処理するか、幾何的に直角三角形の相似($\tan \theta$ と $\frac{1}{\tan \theta}$ の関係)を利用して各辺の長さを求めるか、どちらの方針でも比較的容易に立式できる。 (2) は、同位角や錯角の関係、あるいは直線の傾きから四角形 $PQRT$ が平行四辺形であることに気づくことが最大のポイントである。それに気づけば、交点 $T$ の座標を直接求めずとも、点と直線の距離を用いて簡潔に面積を計算することが可能である。 面積の式が得られた後の最大値問題は、変数が分母と分子に散らばっている形から相加平均と相乗平均の大小関係を用いる基本処理に帰着する。
答え
(1)
$$ \frac{2}{3} < t < 1 $$
(2)
$$ 6 - 4\sqrt{2} $$
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