九州大学 1997年 理系 第9問 解説

方針・初手
(1) は文字係数の1次方程式の解の分類についての基本的な問題です。$x$ の係数 $a$ が $0$ かどうかで場合分けを行い、さらに $a=0$ のときは定数項 $b$ が $0$ かどうかで解の存在が分かれます。
(2) 以降は、行列を用いて表された3変数の連立1次方程式を扱います。まずは行列の積を計算し、通常の連立方程式の形に書き直します。その後、加減法によって文字を減らしていき、(1) の $ax=b$ の形に帰着させるのが本問の狙いです。誘導に乗って同値変形を進めましょう。
解法1
(1)
方程式 $ax = b$ について、係数 $a$ の値によって以下のように場合分けを行う。
(i) $a \neq 0$ のとき 両辺を $a$ で割ることができ、$x = \frac{b}{a}$ となる。このとき、解はただ1つ存在する。
(ii) $a = 0$ のとき 方程式は $0 \cdot x = b$ となる。 (ア) $b = 0$ のとき 方程式は $0 \cdot x = 0$ となり、すべての実数 $x$ に対して等式が成立する。したがって、無数の解をもつ。 (イ) $b \neq 0$ のとき $0 \cdot x = b$ を満たす実数 $x$ は存在しない。したがって、解をもたない。
以上より、各条件は以下の通りである。 ただ1つの解をもつ条件:$a \neq 0$ 無数の解をもつ条件:$a = 0$ かつ $b = 0$ 解をもたない条件:$a = 0$ かつ $b \neq 0$
(2)
与えられた行列の等式を展開し、連立方程式として表すと以下のようになる。
$$\begin{cases} -3x - 2y + z = 3 & \cdots ① \\ (2a+3)x + 3y - 2z = -2 & \cdots ② \\ 2x + ay - z = 1 & \cdots ③ \end{cases}$$
まず、$z$ を消去する。 ① $+$ ③ より、
$$-x + (a-2)y = 4 \quad \cdots ④$$
① $\times 2$ $+$ ② より、
$$(-6x - 4y + 2z) + \{(2a+3)x + 3y - 2z\} = 6 - 2$$
$$(2a-3)x - y = 4 \quad \cdots ⑤$$
次に、$x$ を消去して $y$ についての方程式を導く。 ④より $x = (a-2)y - 4$ と変形し、これを⑤に代入する。
$$(2a-3)\{(a-2)y - 4\} - y = 4$$
$$\{(2a-3)(a-2) - 1\}y = 4 + 4(2a-3)$$
$$(2a^2 - 7a + 5)y = 8a - 8$$
$$(2a-5)(a-1)y = 8(a-1) \quad \cdots ⑥$$
方程式⑥は $y$ に関する1次方程式であり、(1) で考察した $ax=b$ の形となっている。 元の連立方程式がただ1つの解をもつのは、式⑥がただ1つの解 $y$ をもち、それに伴って④、③から $x, z$ がそれぞれただ1つに定まるときである。 (1) の結果より、⑥がただ1つの解をもつ条件は $y$ の係数が $0$ でないことである。
$$(2a-5)(a-1) \neq 0$$
これより、$a \neq \frac{5}{2}$ かつ $a \neq 1$ である。 このとき、⑥より $y$ は以下のように定まる。
$$y = \frac{8(a-1)}{(2a-5)(a-1)} = \frac{8}{2a-5}$$
これを④の $x = (a-2)y - 4$ に代入する。
$$x = (a-2) \cdot \frac{8}{2a-5} - 4 = \frac{8a - 16 - 8a + 20}{2a-5} = \frac{4}{2a-5}$$
さらに、③の $z = 2x + ay - 1$ に代入して $z$ を求める。
$$z = 2\left(\frac{4}{2a-5}\right) + a\left(\frac{8}{2a-5}\right) - 1 = \frac{8 + 8a - (2a-5)}{2a-5} = \frac{6a + 13}{2a-5}$$
(3)
連立方程式が無数の解をもつのは、式⑥が無数の解をもつときである。 (1) の結果より、⑥において $y$ の係数が $0$ かつ右辺が $0$ になる条件を求める。
$$(2a-5)(a-1) = 0 \quad \text{かつ} \quad 8(a-1) = 0$$
これを満たす $a$ の値は $a = 1$ のみである。 $a = 1$ のとき、方程式④は $-x - y = 4$ となり、これを満たす $(x, y)$ の組は無数に存在する。 題意より $x = u, y = v$ とおくと、$-u - v = 4$ より
$$v = -u - 4$$
また、③より $z = 2x + y - 1$ である。$z = w$ とおき、これまでの結果を代入する。
$$w = 2u + v - 1 = 2u + (-u - 4) - 1 = u - 5$$
(4)
連立方程式が解をもたないのは、式⑥が解をもたないときである。 (1) の結果より、⑥において $y$ の係数が $0$ かつ右辺が $0$ でない条件を求める。
$$(2a-5)(a-1) = 0 \quad \text{かつ} \quad 8(a-1) \neq 0$$
これを満たす $a$ の値は $a = \frac{5}{2}$ である。
解説
本問は、3変数の連立1次方程式の解の自由度(一意に定まるか、無数に存在するか、存在しないか)を文字係数 $a$ の値によって分類する問題です。 行列の形で出題されていますが、加減法を用いて文字を一つずつ消去していくことで、最終的に (1) の基本型に帰着できるという誘導が効いています。同値性を崩さないように文字を消去し、1変数の方程式に持ち込むのが最大のポイントです。 なお、線形代数の知識(クラメルの公式や行列式、拡大係数行列の階数)を用いても解くことは可能ですが、高校数学の範囲では加減法による消去が最も見通しが良く、計算ミスも防ぎやすい解法となります。
答え
(1) ただ1つの解をもつ条件:$a \neq 0$ 無数の解をもつ条件:$a = 0$ かつ $b = 0$ 解をもたない条件:$a = 0$ かつ $b \neq 0$
(2) $a$ の条件:$a \neq 1$ かつ $a \neq \frac{5}{2}$ 解:$x = \frac{4}{2a-5}, \quad y = \frac{8}{2a-5}, \quad z = \frac{6a + 13}{2a-5}$
(3) $a$ の条件:$a = 1$ $v, w$ を $u$ で表した式:$v = -u - 4, \quad w = u - 5$
(4) $a$ の条件:$a = \frac{5}{2}$
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