九州大学 1997年 理系 第8問 解説

方針・初手
各袋からカードを1枚引くとき、それぞれの袋から金色のカードが出る確率は独立である。まずは1つの袋から金色のカードが出る確率を求め、全体の事象が反復試行(二項分布)として扱えることを見抜く。期待値は二項分布の公式または線形性を利用して計算し、極限計算では自然対数の底 $e$ に関連する基本極限を活用する。
解法1
(1)
$n$ 個の袋のそれぞれにおいて、金色のカード3枚、銀色のカード $(3n-3)$ 枚の合計 $3n$ 枚が入っている。 1つの袋から1枚カードを抜き出すとき、金色のカードが出る確率 $p$ は、
$$p = \frac{3}{3n} = \frac{1}{n}$$
である。 各袋からカードを引く事象は独立であるから、抜き出された金色のカードの総枚数 $X_n$ は、二項分布 $B\left(n, \frac{1}{n}\right)$ に従う。 $n=4$ のとき、$X_4$ は二項分布 $B\left(4, \frac{1}{4}\right)$ に従うので、
$$P(X_4 = 3) = {}_4\text{C}_3 \left(\frac{1}{4}\right)^3 \left(1 - \frac{1}{4}\right)^{4-3} = 4 \times \frac{1}{64} \times \frac{3}{4} = \frac{3}{64}$$
$$P(X_4 = 2) = {}_4\text{C}_2 \left(\frac{1}{4}\right)^2 \left(1 - \frac{1}{4}\right)^{4-2} = 6 \times \frac{1}{16} \times \frac{9}{16} = \frac{27}{128}$$
(2)
金色のカードを1枚抜き出すごとに100円を受け取るため、賞金は $100 X_4$ 円と表される。 求めるものはその期待値 $E(100 X_4)$ である。 期待値の線形性より、
$$E(100 X_4) = 100 E(X_4)$$
二項分布 $B\left(4, \frac{1}{4}\right)$ に従う確率変数 $X_4$ の期待値は $4 \times \frac{1}{4} = 1$ であるから、
$$100 E(X_4) = 100 \times 1 = 100$$
(3)
一般の $n$ ($n \geqq 3$) について、$X_n$ は二項分布 $B\left(n, \frac{1}{n}\right)$ に従うので、
$$P(X_n = 3) = {}_n\text{C}_3 \left(\frac{1}{n}\right)^3 \left(1 - \frac{1}{n}\right)^{n-3} = \frac{n(n-1)(n-2)}{6n^3} \left(1 - \frac{1}{n}\right)^{n-3}$$
(4)
(3) の式を変形して極限をとる。
$$P(X_n = 3) = \frac{1}{6} \cdot \frac{n}{n} \cdot \frac{n-1}{n} \cdot \frac{n-2}{n} \cdot \left(1 - \frac{1}{n}\right)^{n-3} = \frac{1}{6} \left(1 - \frac{1}{n}\right) \left(1 - \frac{2}{n}\right) \left(1 - \frac{1}{n}\right)^n \left(1 - \frac{1}{n}\right)^{-3}$$
ここで、$n \to \infty$ のとき、
$$1 - \frac{1}{n} \to 1$$
$$1 - \frac{2}{n} \to 1$$
$$\left(1 - \frac{1}{n}\right)^{-3} \to 1^{-3} = 1$$
であり、自然対数の底 $e$ の定義より、
$$\lim_{n \to \infty} \left(1 - \frac{1}{n}\right)^n = \lim_{n \to \infty} \left\{ \left( 1 + \left( -\frac{1}{n} \right) \right)^{-n} \right\}^{-1} = e^{-1} = \frac{1}{e}$$
となる。 したがって、求める極限は、
$$\lim_{n \to \infty} P(X_n = 3) = \frac{1}{6} \cdot 1 \cdot 1 \cdot \frac{1}{e} \cdot 1 = \frac{1}{6e}$$
解説
各袋からカードを引く試行が独立であり、結果が「金色のカードが出る」「銀色のカードが出る」の2通りに分けられるため、典型的な二項分布のモデルとなる。期待値計算においては、定義に従って和を計算するよりも、二項分布の期待値の公式 $E(X) = np$ や期待値の線形性を用いると素早く求められる。 (4) における極限の計算は、二項分布のポアソン近似(ポアソンの極限定理)の背景となる計算を具体的に行っている。$\lim_{n \to \infty} \left(1 - \frac{1}{n}\right)^n = \frac{1}{e}$ の極限計算を丁寧に示すことが重要である。
答え
(1) $P(X_4 = 3) = \frac{3}{64}$, $P(X_4 = 2) = \frac{27}{128}$
(2) 100 (円)
(3) $\frac{n(n-1)(n-2)}{6n^3} \left(1 - \frac{1}{n}\right)^{n-3}$
(4) $\frac{1}{6e}$
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