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北海道大学 1984年 文系 第2問 解説

旧課程/行列・一次変換数学1/方程式不等式テーマ/場合分け
北海道大学 1984年 文系 第2問 解説

方針・初手

変換後の点の座標が常に正であることを立式し、任意の正の数に対して成り立つ条件を考えます。変数の比を新たな変数とおいて極限を考えるか、背理法を用いると係数の符号が判定できます。 (2)では、逆変換を表す逆行列の各成分に対しても(1)の結果が適用できることを利用し、(1)で求めた条件と連立して成分の値を絞り込みます。

解法1

(1) 点 $(x, y)$ が変換 $f$ により点 $(x', y')$ に移るとする。

$$ \begin{pmatrix} x' \\ y' \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix} \begin{pmatrix} x \\ y \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} ax + by \\ cx + dy \end{pmatrix} $$

条件より、$x > 0$ かつ $y > 0$ ならば、$x' > 0$ かつ $y' > 0$ が成り立つ。すなわち、任意の正の実数 $x, y$ に対して、

$$ ax + by > 0 $$

$$ cx + dy > 0 $$

が成り立つ。 第1式について、両辺を $x (>0)$ で割ると、

$$ a + b \frac{y}{x} > 0 $$

ここで、$x, y$ は任意の正の実数であるから、$\frac{y}{x} = t$ とおくと、$t$ は任意の正の実数を取りうる。よって、任意の $t > 0$ に対して

$$ a + bt > 0 $$

が成り立つ。 ここで $t \to +0$ の極限をとると、$a \geqq 0$ となる。 また、$t > 0$ より両辺を $t$ で割ると $\frac{a}{t} + b > 0$ となり、$t \to \infty$ の極限をとると $b \geqq 0$ となる。 同様に、第2式から得られる $c + dt > 0$ についても同様の極限を考えることで、$c \geqq 0$ かつ $d \geqq 0$ が得られる。 以上より、$a \geqq 0, b \geqq 0, c \geqq 0, d \geqq 0$ であることが示された。

(2) $ad - bc \neq 0$ より、行列 $\begin{pmatrix} a & b \\ c & d \end{pmatrix}$ は逆行列をもつ。逆変換 $f^{-1}$ を表す行列は

$$ \frac{1}{ad - bc} \begin{pmatrix} d & -b \\ -c & a \end{pmatrix} = \begin{pmatrix} \frac{d}{ad-bc} & \frac{-b}{ad-bc} \\ \frac{-c}{ad-bc} & \frac{a}{ad-bc} \end{pmatrix} $$

である。 $f^{-1}$ も第1象限の任意の点を第1象限に移すので、(1)の結論がこの逆行列の各成分にも適用できる。すなわち、

$$ \frac{d}{ad-bc} \geqq 0, \quad \frac{-b}{ad-bc} \geqq 0, \quad \frac{-c}{ad-bc} \geqq 0, \quad \frac{a}{ad-bc} \geqq 0 $$

が成り立つ。 また、$f$ は第1象限の任意の点を第1象限に移すので、(1)より

$$ a \geqq 0, \quad b \geqq 0, \quad c \geqq 0, \quad d \geqq 0 $$

である。 ここで、$ad - bc$ の符号によって場合分けを行う。

(i) $ad - bc > 0$ のとき

逆行列の成分の条件から、

$$ d \geqq 0, \quad -b \geqq 0, \quad -c \geqq 0, \quad a \geqq 0 $$

これより $b \leqq 0, c \leqq 0$ となるが、(1)の結果である $b \geqq 0, c \geqq 0$ と合わせると、$b = 0$ かつ $c = 0$ を得る。 このとき、$ad - bc = ad > 0$ であるから、$a \neq 0$ かつ $d \neq 0$ である。 $a \geqq 0, d \geqq 0$ と合わせて、$a > 0$ かつ $d > 0$ となる。 したがって、この場合は $a > 0$ かつ $b = 0$ かつ $c = 0$ かつ $d > 0$ である。

(ii) $ad - bc < 0$ のとき

逆行列の成分の条件から、

$$ d \leqq 0, \quad -b \leqq 0, \quad -c \leqq 0, \quad a \leqq 0 $$

これより $a \leqq 0, d \leqq 0$ となるが、(1)の結果である $a \geqq 0, d \geqq 0$ と合わせると、$a = 0$ かつ $d = 0$ を得る。 このとき、$ad - bc = -bc < 0$ であるから、$bc > 0$ となり、$b \neq 0$ かつ $c \neq 0$ である。 $b \geqq 0, c \geqq 0$ と合わせて、$b > 0$ かつ $c > 0$ となる。 したがって、この場合は $a = 0$ かつ $b > 0$ かつ $c > 0$ かつ $d = 0$ である。

以上 (i), (ii) より、求める条件は 「$a > 0, b = 0, c = 0, d > 0$」または「$a = 0, b > 0, c > 0, d = 0$」 である。

解法2

(1)の別解(背理法による証明)

点 $(x, y)$ は変換 $f$ により点 $(ax+by, cx+dy)$ に移る。 条件より、任意の $x > 0, y > 0$ に対して

$$ ax + by > 0 $$

$$ cx + dy > 0 $$

が常に成り立つ。 $a < 0$ と仮定する。 $y=1$ と固定すると、任意の $x > 0$ に対して $ax + b > 0$ となる。 しかし、$a < 0$ であるため、$x > -\frac{b}{a}$ を満たす正の実数 $x$ (例えば $x = \left|-\frac{b}{a}\right| + 1$)をとれば、$ax + b < 0$ となり矛盾する。 ゆえに $a \geqq 0$ である。 同様に、$b < 0$ と仮定し、$x=1$ に対して $y$ を十分大きく($y > -\frac{a}{b}$ となるように)とれば $a+by < 0$ となり矛盾する。 ゆえに $b \geqq 0$ である。 第2式についても全く同様の議論を行うことで、$c \geqq 0, d \geqq 0$ が示される。 したがって、$a \geqq 0, b \geqq 0, c \geqq 0, d \geqq 0$ である。 ((2)の解法は解法1と同様のため省略する。)

解説

(1)では、「任意の正の数に対して成り立つ」という条件から、適当な変数の極限を考えるか、反例を構成して背理法に持ち込むアプローチが定石です。解法1のように変数 $x, y$ の比率を変数として一つの文字にまとめると見通しが良くなります。 (2)は、1次変換の逆変換もまた行列で表現されることと、逆行列の成分に(1)の結果をそのまま適用できることに気づけば、行列式の符号で場合分けして係数を容易に絞り込むことができます。

答え

(1) 略(解法に示した通り)

(2) $b = 0, c = 0$ かつ $a > 0, d > 0$、または $a = 0, d = 0$ かつ $b > 0, c > 0$

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