九州大学 2014年 理系 第5問 解説

方針・初手
与えられた関数 $f_n(x) = (x-1)(2x-1)\cdots(nx-1)$ が、$n$ 個の相異なる実数解 $x = 1, \frac{1}{2}, \cdots, \frac{1}{n}$ を持つことに着目します。 区間 $\frac{1}{k+1} < x < \frac{1}{k}$ は、これらの解のうち隣り合う2つの解に挟まれた開区間です。この区間において導関数 $f_n'(x)$ がただ1つの解を持ち、その前後で符号を変えることを示します。 積の微分法を変形した関数を考える解析的なアプローチ(解法1)と、ロルの定理と多項式の次数関係を利用するアプローチ(解法2)の2通りで示します。
解法1
関数 $f_n(x)$ を微分すると、積の導関数の公式より、
$$f_n'(x) = \sum_{j=1}^n \left\{ j \prod_{i \neq j} (ix-1) \right\}$$
となる。区間 $\frac{1}{k+1} < x < \frac{1}{k}$ (ただし $k = 1, 2, \cdots, n-1$)においては、$f_n(x) \neq 0$ である。 この区間において、新しい関数 $g(x)$ を次のように定義する。
$$g(x) = \frac{f_n'(x)}{f_n(x)} = \sum_{j=1}^n \frac{j}{jx-1}$$
$g(x)$ を $x$ で微分すると、
$$g'(x) = \sum_{j=1}^n \frac{-j^2}{(jx-1)^2}$$
となる。すべての $j$ について $\frac{-j^2}{(jx-1)^2} < 0$ であるから、$g'(x) < 0$ であり、$g(x)$ は区間 $\frac{1}{k+1} < x < \frac{1}{k}$ において単調減少である。
次に、この区間の両端における $g(x)$ の極限を調べる。 $x \to \frac{1}{k+1}+0$ のとき、和の項のうち $j = k+1$ の項は $\frac{k+1}{(k+1)x-1} \to \infty$ となり、他の項は有限の値に収束するため、
$$\lim_{x \to \frac{1}{k+1}+0} g(x) = \infty$$
となる。同様に、$x \to \frac{1}{k}-0$ のとき、和の項のうち $j = k$ の項は $\frac{k}{kx-1} \to -\infty$ となり、他の項は有限の値に収束するため、
$$\lim_{x \to \frac{1}{k}-0} g(x) = -\infty$$
となる。 $g(x)$ はこの区間で連続かつ単調減少であるから、中間値の定理より $g(c_k) = 0$ を満たす $c_k$ が区間 $\frac{1}{k+1} < c_k < \frac{1}{k}$ にただ1つ存在する。
$f_n'(x) = f_n(x) g(x)$ であり、区間 $\frac{1}{k+1} < x < \frac{1}{k}$ において $f_n(x)$ は $0$ にならず符号が一定である。 $x = c_k$ の前後で $g(x)$ の符号は正から負へと変化するため、$f_n'(x)$ の符号も $x = c_k$ を境に必ず変化する。
したがって、$f_n(x)$ は区間 $\frac{1}{k+1} < x < \frac{1}{k}$ において $x = c_k$ でただ1つの極値をとる。
解法2
$f_n(x) = (x-1)(2x-1)\cdots(nx-1)$ であるから、方程式 $f_n(x) = 0$ は相異なる $n$ 個の実数解 $x = 1, \frac{1}{2}, \cdots, \frac{1}{n}$ を持つ。
任意の $k = 1, 2, \cdots, n-1$ に対して、関数 $f_n(x)$ は閉区間 $\left[ \frac{1}{k+1}, \frac{1}{k} \right]$ で連続、開区間 $\left( \frac{1}{k+1}, \frac{1}{k} \right)$ で微分可能であり、
$$f_n\left( \frac{1}{k+1} \right) = f_n\left( \frac{1}{k} \right) = 0$$
を満たす。 ロルの定理より、$f_n'(c_k) = 0$ を満たす実数 $c_k$ が開区間 $\left( \frac{1}{k+1}, \frac{1}{k} \right)$ 内に少なくとも1つ存在する。 このような区間は $k = 1, 2, \cdots, n-1$ に対して互いに素(共通部分を持たない)であるから、$f_n'(x) = 0$ は少なくとも $n-1$ 個の異なる実数解を持つ。
一方で、$f_n(x)$ は $n$ 次多項式であるから、その導関数 $f_n'(x)$ は $n-1$ 次多項式である。 $n-1$ 次方程式の実数解は高々 $n-1$ 個であるため、$f_n'(x) = 0$ の実数解は各区間 $\left( \frac{1}{k+1}, \frac{1}{k} \right)$ に存在する $c_1, c_2, \cdots, c_{n-1}$ のちょうど $n-1$ 個に確定する。
これにより、各区間 $\frac{1}{k+1} < x < \frac{1}{k}$ に $f_n'(x) = 0$ となる点はただ1つだけ存在することがわかる。 また、$f_n'(x) = 0$ は相異なる $n-1$ 個の実数解を持つため、これらはすべて重解ではなく単解(重複度1の解)である。 したがって、$x = c_k$ の前後で $f_n'(x)$ は必ず符号を変える。
以上より、$f_n(x)$ は各区間 $\frac{1}{k+1} < x < \frac{1}{k}$ でただ1つの極値をとる。
解説
多項式の解と極値(導関数の解)の配置に関する頻出かつ重要なテーマです。
- 解法1は、積の微分を扱いやすくするために $\frac{f_n'(x)}{f_n(x)}$ という形(対数微分法から得られる形)を持ち出す定石のアプローチです。各分数の漸近線の振る舞いと単調減少性から、解の存在と一意性、符号変化を視覚的・解析的に明確に示すことができます。
- 解法2は、「ロルの定理」と「多項式の次数」を組み合わせる代数・解析の融合的アプローチです。「$n$ 次多項式が $n$ 個の異なる実数解を持てば、その導関数は元の解と解の間にそれぞれ1つずつ、合計 $n-1$ 個の実数解を持つ」という事実は非常に有名で、入試数学でもよく背景知識として問われます。
極値をもつことを証明する際は、$f'(x)=0$ となる点の存在を示すだけでなく、その点の前後で $f'(x)$ の符号が変化すること(重解でないことなど)まで確実に論及する必要があります。
答え
題意の通り証明された。(証明終)
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