京都大学 1987年 理系 第4問 解説

方針・初手
(1) 3次関数の接線の本数は、導関数 $f'(x) = m$ となる実数 $x$(接点の $x$ 座標)の個数に一致する。$f'(x) - m = 0$ という2次方程式の判別式を用いて、$m$ の値によって場合分けをして接線の本数を求める。 (2) は(1)で求めた2つの接点 $P_1, P_2$ の $x$ 座標を文字でおき、接線の方程式と $y = f(x)$ を連立して交点 $Q_1, Q_2$ の座標を求める。3次方程式の「接点では重解をもつ」という性質を利用すると、解と係数の関係からスムーズに交点の $x$ 座標が求まり、線分の長さの等証明に持ち込める。
解法1
(1)
$f(x) = x^3 + ax^2 + bx + c$ を微分すると、
$$ f'(x) = 3x^2 + 2ax + b $$
となる。 グラフ $y = f(x)$ の接線で傾きが $m$ であるものの本数は、方程式 $f'(x) = m$ すなわち
$$ 3x^2 + 2ax + b - m = 0 \quad \cdots (*) $$
の異なる実数解の個数に等しい。 方程式 $(*)$ の判別式を $D$ とすると、
$$ \frac{D}{4} = a^2 - 3(b - m) = 3m + a^2 - 3b $$
である。実数解の個数は $D$ の符号によって決まるため、以下のようになる。
- $\frac{D}{4} > 0$ すなわち $m > -\frac{1}{3}a^2 + b$ のとき、$(*)$ は異なる2つの実数解をもつため、接線は 2本
- $\frac{D}{4} = 0$ すなわち $m = -\frac{1}{3}a^2 + b$ のとき、$(*)$ は重解をもつため、接線は 1本
- $\frac{D}{4} < 0$ すなわち $m < -\frac{1}{3}a^2 + b$ のとき、$(*)$ は実数解をもたないため、接線は 0本
(2)
傾き $m$ の接線が2本ある場合なので、(1)より $m > -\frac{1}{3}a^2 + b$ であり、方程式 $(*)$ は異なる2つの実数解をもつ。 それらを $p_1, p_2$ とし、接点 $P_1, P_2$ の $x$ 座標をそれぞれ $p_1, p_2$ とする。 解と係数の関係より、
$$ p_1 + p_2 = -\frac{2a}{3} \quad \cdots (1) $$
$$ p_1 p_2 = \frac{b-m}{3} \quad \cdots (2) $$
が成り立つ。
接線 $l_1$ の方程式は、傾きが $m$ で点 $P_1(p_1, f(p_1))$ を通るので、
$$ y - f(p_1) = m(x - p_1) $$
$$ y = mx - mp_1 + f(p_1) $$
これを $y = mx + n_1$ ($n_1 = -mp_1 + f(p_1)$)とおく。 $l_1$ と $y = f(x)$ の交点の $x$ 座標は、方程式
$$ x^3 + ax^2 + bx + c = mx + n_1 $$
$$ x^3 + ax^2 + (b-m)x + c - n_1 = 0 \quad \cdots (**) $$
の解である。 $l_1$ は $x = p_1$ で接するため、方程式 $(**)$ は $x = p_1$ を重解にもつ。もう一つの解が交点 $Q_1$ の $x$ 座標であり、これを $q_1$ とすると、解と係数の関係(3次方程式)より、
$$ 2p_1 + q_1 = -a \quad \cdots (3) $$
となる。
同様に、接線 $l_2$ についても、その方程式を $y = mx + n_2$ とおき、$y = f(x)$ と連立して得られる3次方程式は $x = p_2$ を重解にもち、もう一つの解が交点 $Q_2$ の $x$ 座標 $q_2$ となるため、解と係数の関係より、
$$ 2p_2 + q_2 = -a \quad \cdots (4) $$
となる。
線分 $P_1Q_1, P_2Q_2$ の長さを比べる。 $l_1$ 上の2点 $P_1(p_1, mp_1 + n_1), Q_1(q_1, mq_1 + n_1)$ 間の距離の2乗は、
$$ \begin{aligned} {P_1Q_1}^2 &= (q_1 - p_1)^2 + \{ (mq_1 + n_1) - (mp_1 + n_1) \}^2 \\ &= (q_1 - p_1)^2 + m^2(q_1 - p_1)^2 \\ &= (1+m^2)(q_1 - p_1)^2 \end{aligned} $$
(3)より $q_1 = -a - 2p_1$ であるから、
$$ q_1 - p_1 = -a - 3p_1 $$
よって、${P_1Q_1}^2 = (1+m^2)(-a - 3p_1)^2 = (1+m^2)(3p_1 + a)^2$ である。
同様に、線分 $P_2Q_2$ の距離の2乗は、
$$ {P_2Q_2}^2 = (1+m^2)(q_2 - p_2)^2 = (1+m^2)(3p_2 + a)^2 $$
である。
ここで、${P_1Q_1}^2$ と ${P_2Q_2}^2$ の差を計算する。
$$ \begin{aligned} {P_1Q_1}^2 - {P_2Q_2}^2 &= (1+m^2) \{ (3p_1 + a)^2 - (3p_2 + a)^2 \} \\ &= (1+m^2) \{ (3p_1 + a) + (3p_2 + a) \} \{ (3p_1 + a) - (3p_2 + a) \} \\ &= (1+m^2) (3p_1 + 3p_2 + 2a) (3p_1 - 3p_2) \end{aligned} $$
(1)より $p_1 + p_2 = -\frac{2a}{3}$ であるから、
$$ 3p_1 + 3p_2 + 2a = 3 \left( -\frac{2a}{3} \right) + 2a = -2a + 2a = 0 $$
となる。 したがって、${P_1Q_1}^2 - {P_2Q_2}^2 = 0$ すなわち ${P_1Q_1}^2 = {P_2Q_2}^2$ である。 $P_1Q_1 > 0, P_2Q_2 > 0$ より、$P_1Q_1 = P_2Q_2$ が成り立つ。(証明終)
解説
3次関数の接線に関する標準的な問題である。 (1)は導関数が2次関数になることを利用し、判別式で解の個数を調べるだけである。 (2)は、3次方程式の解と係数の関係($x^3 + px^2 + qx + r = 0$ の3解を $\alpha, \beta, \gamma$ とすると $\alpha + \beta + \gamma = -p$ など)を活用すると計算量を大幅に減らすことができる。特に、「直線と $x = \alpha$ で接する」という条件が「連立した方程式が $x = \alpha$ を重解にもつ」と言い換えられることは、微積分と方程式を結びつける非常に重要な考え方である。 本問は、3次関数のグラフが変曲点(本問では $x = -\frac{a}{3}$)に関して点対称であることを背景に持っている。計算結果の $p_1 + p_2 = -\frac{2a}{3}$ などからもその対称性を垣間見ることができる。
答え
(1)
$m > -\frac{1}{3}a^2 + b$ のとき、2本
$m = -\frac{1}{3}a^2 + b$ のとき、1本
$m < -\frac{1}{3}a^2 + b$ のとき、0本
(2)
略(解法1の証明を参照)
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