九州大学 2023年 理系 第3問 解説

方針・初手
- (1) は任意の $\vec{q}=(x, y)$ に対して連立方程式が実数解を持つ条件を考える。$D=0$ と仮定して矛盾を導く背理法を用いるとよい。
- (2) は与えられた内積の条件から連立方程式を立てて成分を求める。
- (3) は (2) で求めた $\vec{v}, \vec{w}$ を用いると、条件 II の整数 $r, s$ を内積を用いて簡潔に表すことができる。
解法1
(1)
$\vec{q} = (x, y)$ とおくと、条件 I より
$$r\vec{m} + s\vec{n} = (x, y)$$
を満たす実数 $r, s$ が存在する。$\vec{m} = (a, c), \vec{n} = (b, d)$ を代入して成分ごとに比較すると、
$$\begin{cases} ar + bs = x \\ cr + ds = y \end{cases}$$
が任意の $(x, y)$ に対して実数解 $(r, s)$ を持つことになる。
ここで、$D = ad - bc = 0$ と仮定する。
上の第1式に $d$、第2式に $b$ をかけて辺々引くと、
$$(ad - bc)r = dx - by$$
$D = 0$ より $0 = dx - by$ となる。
これが任意の $x, y$ で成り立つためには、$d = 0$ かつ $b = 0$ が必要である。
同様に、第1式に $c$、第2式に $a$ をかけて辺々引くと、
$$(bc - ad)s = cx - ay$$
$D = 0$ より $0 = cx - ay$ となる。
これが任意の $x, y$ で成り立つためには、$c = 0$ かつ $a = 0$ が必要である。
以上より $a = b = c = d = 0$ となり、$\vec{m} = \vec{n} = \vec{0}$ となるが、これは $\vec{m}, \vec{n}$ が $\vec{0}$ でないベクトルであることに矛盾する。
したがって、$D \neq 0$ である。
(2)
$\vec{v} = (v_1, v_2), \vec{w} = (w_1, w_2)$ とおく。
条件 $\vec{m} \cdot \vec{v} = 1, \vec{n} \cdot \vec{v} = 0$ より、
$$\begin{cases} av_1 + cv_2 = 1 \\ bv_1 + dv_2 = 0 \end{cases}$$
$D \neq 0$ であるから、この連立方程式を解くと、
$$v_1 = \frac{d}{ad - bc} = \frac{d}{D}, \quad v_2 = \frac{-b}{ad - bc} = -\frac{b}{D}$$
よって、
$$\vec{v} = \left( \frac{d}{D}, -\frac{b}{D} \right)$$
同様に、条件 $\vec{m} \cdot \vec{w} = 0, \vec{n} \cdot \vec{w} = 1$ より、
$$\begin{cases} aw_1 + cw_2 = 0 \\ bw_1 + dw_2 = 1 \end{cases}$$
この連立方程式を解くと、
$$w_1 = \frac{-c}{ad - bc} = -\frac{c}{D}, \quad w_2 = \frac{a}{ad - bc} = \frac{a}{D}$$
よって、
$$\vec{w} = \left( -\frac{c}{D}, \frac{a}{D} \right)$$
(3)
条件 II より、任意の整数 $x, y$ を成分にもつベクトル $\vec{q} = (x, y)$ に対して、
$$\vec{q} = r\vec{m} + s\vec{n}$$
を満たす整数 $r, s$ が存在する。
この両辺について、(2) で求めた $\vec{v}$ との内積をとると、
$$\vec{v} \cdot \vec{q} = r(\vec{v} \cdot \vec{m}) + s(\vec{v} \cdot \vec{n})$$
(2) の条件 $\vec{m} \cdot \vec{v} = 1, \vec{n} \cdot \vec{v} = 0$ より、
$$\vec{v} \cdot \vec{q} = r \cdot 1 + s \cdot 0 = r$$
同様に、$\vec{w}$ との内積をとると、
$$\vec{w} \cdot \vec{q} = r(\vec{w} \cdot \vec{m}) + s(\vec{w} \cdot \vec{n}) = r \cdot 0 + s \cdot 1 = s$$
$\vec{q} = (x, y)$ であるから、内積の成分計算を行うと、
$$r = \frac{d}{D}x - \frac{b}{D}y = \frac{dx - by}{D}$$
$$s = -\frac{c}{D}x + \frac{a}{D}y = \frac{-cx + ay}{D}$$
これらが任意の整数 $x, y$ に対して整数となる。
$\vec{q} = (1, 0)$ (すなわち $x = 1, y = 0$)のとき、$r = \frac{d}{D}, s = -\frac{c}{D}$ は整数である。
$\vec{q} = (0, 1)$ (すなわち $x = 0, y = 1$)のとき、$r = -\frac{b}{D}, s = \frac{a}{D}$ は整数である。
ここで、$a, b, c, d$ が整数であることから $D = ad - bc$ も整数である。
さらに、$\frac{d}{D}, -\frac{c}{D}, -\frac{b}{D}, \frac{a}{D}$ がすべて整数であるから、それらの積や和も整数となる。したがって、
$$\frac{d}{D} \cdot \frac{a}{D} - \left(-\frac{c}{D}\right) \cdot \left(-\frac{b}{D}\right) = \frac{ad - bc}{D^2} = \frac{D}{D^2} = \frac{1}{D}$$
も整数である。
整数 $D$ に対して $\frac{1}{D}$ が整数となるのは、$D = 1$ または $D = -1$ のときに限られる。
逆に $D = \pm 1$ のとき、任意の整数 $x, y$ に対して、
$$r = \pm (dx - by), \quad s = \pm (-cx + ay)$$
は整数となり、条件 II を満たす。
以上より、$D$ のとりうる値は $1, -1$ である。
解説
- この問題は、1次独立な2つのベクトルがなす「斜交座標系」を背景としている。(1) の $D=ad-bc \neq 0$ は、2つのベクトルが張る平行四辺形の面積が $0$ でない、すなわち1次独立である条件に等しい。
- (2) で定義されるベクトル $\vec{v}, \vec{w}$ は、元のベクトル $\vec{m}, \vec{n}$ に対する「双対基底」と呼ばれる。双対基底の性質 $\vec{v} \cdot \vec{q} = r$ などを利用することで、(3) の成分計算が極めて見通しよく処理できる。
- (3) では、「任意の整数 $x, y$ で成り立つ」という条件から、$x=1, y=0$ や $x=0, y=1$ のような都合の良い具体的な値を代入して必要条件を絞り込むのが定石である。必要条件として $D = \pm 1$ を得た後は、十分性の確認を忘れないようにしたい。
答え
(1) 略(証明問題) (2) $\vec{v} = \left( \frac{d}{D}, -\frac{b}{D} \right), \quad \vec{w} = \left( -\frac{c}{D}, \frac{a}{D} \right)$ (3) $D = 1, -1$
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