九州大学 2023年 理系 第2問 解説

方針・初手
与えられた漸化式 $a_{n+1} = |a_n - 1| + a_n - 1$ の絶対値を外し、数列の項がどのような値の範囲にあるかによって漸化式の形がどう変わるかを把握する。
$$ \begin{cases} a_n \geqq 1 \text{ のとき} & a_{n+1} = (a_n - 1) + a_n - 1 = 2a_n - 2 \\ a_n < 1 \text{ のとき} & a_{n+1} = -(a_n - 1) + a_n - 1 = 0 \end{cases} $$
この性質から、数列の項が一度でも $1$ より小さくなると、その次の項は $0$ となり、以降ずっと $0$ が続くことがわかる。この点に着目して各場合を調べる。
解法1
(1) $\alpha \leqq 1$ のとき
(i) $\alpha = 1$ のとき $a_1 = 1$ であるから、漸化式より $$a_2 = |1 - 1| + 1 - 1 = 0$$ $a_2 < 1$ となるため、 $$a_3 = |0 - 1| + 0 - 1 = 0$$ 帰納的に、 $n \geqq 2$ のすべての自然数 $n$ について $a_n = 0$ となる。
(ii) $\alpha < 1$ のとき $a_1 = \alpha < 1$ であるから、漸化式より $$a_2 = -(\alpha - 1) + \alpha - 1 = 0$$ 同様に、 $n \geqq 2$ のすべての自然数 $n$ について $a_n = 0$ となる。
(i), (ii) より、数列 $\{a_n\}$ は $0$ に収束する。
(2) $\alpha > 2$ のとき
すべての自然数 $n$ に対して $a_n > 2$ であることを、数学的帰納法を用いて示す。
(I) $n = 1$ のとき $a_1 = \alpha > 2$ より成り立つ。
(II) $n = k$ のとき $a_k > 2$ であると仮定する。 $a_k > 1$ を満たすから、漸化式は $a_{k+1} = 2a_k - 2$ となる。 仮定より $a_k > 2$ なので、 $$a_{k+1} = 2a_k - 2 > 2 \cdot 2 - 2 = 2$$ となり、$n = k+1$ のときも成り立つ。
(I), (II) より、すべての自然数 $n$ について $a_n > 2$ (すなわち $a_n \geqq 1$)であることが示された。 このとき、漸化式は常に $a_{n+1} = 2a_n - 2$ となる。これを変形して、 $$a_{n+1} - 2 = 2(a_n - 2)$$ 数列 $\{a_n - 2\}$ は、初項 $a_1 - 2 = \alpha - 2$、公比 $2$ の等比数列であるから、 $$a_n - 2 = 2^{n-1}(\alpha - 2)$$ すなわち $$a_n = 2 + 2^{n-1}(\alpha - 2)$$ ここで、$\alpha > 2$ より $\alpha - 2 > 0$ であるから、 $$\lim_{n \to \infty} a_n = \lim_{n \to \infty} \{2 + 2^{n-1}(\alpha - 2)\} = \infty$$ よって、数列 $\{a_n\}$ は正の無限大に発散する。
(3) $1 < \alpha < \frac{3}{2}$ のとき
$a_1 = \alpha$ より $1 < a_1 < \frac{3}{2}$ である。 $a_1 \geqq 1$ を満たすので、漸化式より $$a_2 = 2a_1 - 2 = 2\alpha - 2$$ 条件 $1 < \alpha < \frac{3}{2}$ の各辺を $2$ 倍して $2$ を引くと、 $$0 < 2\alpha - 2 < 1$$ すなわち $0 < a_2 < 1$ となる。 $a_2 < 1$ であるから、漸化式より $$a_3 = -(a_2 - 1) + a_2 - 1 = 0$$ 以降、帰納的に $n \geqq 3$ のすべての自然数 $n$ について $a_n = 0$ となる。 よって、数列 $\{a_n\}$ は $0$ に収束する。
(4) $\frac{3}{2} \leqq \alpha < 2$ のとき
すべての自然数 $n$ に対して $a_n \geqq 1$ であると仮定して矛盾を導く(背理法)。
すべての $n$ で $a_n \geqq 1$ ならば、常に $a_{n+1} = 2a_n - 2$ が成り立つ。 (2) と同様に変形すると、 $$a_n = 2 + 2^{n-1}(\alpha - 2)$$ となる。 ここで、条件 $\alpha < 2$ より $\alpha - 2 < 0$ であるため、 $$\lim_{n \to \infty} 2^{n-1}(\alpha - 2) = -\infty$$ となり、$\lim_{n \to \infty} a_n = -\infty$ となる。 しかし、これはすべての $n$ に対して $a_n \geqq 1$ であるという仮定に矛盾する。
したがって、ある自然数 $N$ が存在して $a_N < 1$ となる。 $a_N < 1$ となると、漸化式より $$a_{N+1} = -(a_N - 1) + a_N - 1 = 0$$ 以降、帰納的に $n \geqq N+1$ のすべての自然数 $n$ について $a_n = 0$ となる。 よって、数列 $\{a_n\}$ は $0$ に収束する。
解説
関数 $f(x) = |x - 1| + x - 1$ とおくと、$a_{n+1} = f(a_n)$ と表せます。このグラフ $y = f(x)$ を描くと、
- $x < 1$ の範囲では $y = 0$ (一定)
- $x \geqq 1$ の範囲では $y = 2x - 2$ (傾き $2$ の直線) となります。
直線 $y = x$ との交点は $(2, 2)$ です。 このグラフによる視覚的イメージを持つと、各問題の状況が見えやすくなります。
- $\alpha > 2$ の場合は、点 $(2, 2)$ より右側に初期値があるため、値はどんどん大きくなり発散します。
- $\alpha < 2$ の場合は、値が徐々に小さくなり、いずれ必ず $x < 1$ の領域に落ち込みます。一度 $x < 1$ の領域に入ると、次の値はただちに $0$ となり、以後ずっと $0$ にとどまります。
(4) のような「いずれ条件を満たさなくなる」ことの証明には、背理法を用いて一般項の極限から矛盾を導く手法が極めて有効です。
答え
(1) 0 に収束する (2) 正の無限大に発散する (3) 0 に収束する (4) 0 に収束する
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