名古屋大学 1965年 文系 第1問 解説

方針・初手
- 与えられた条件 $a, b, c, d \geqq 2$ を用いて、左辺の積 $abcd$ が右辺の和 $a+b+c+d$ よりも大きいことを示す。
- 解法1は、$2$ 変数ずつペアにして評価していく方法である。$(a-1)(b-1)$ などの因数分解の形を利用して、積を和で下から評価する。
- 解法2は、両辺を $abcd$ で割り、各変数の逆数が $\frac{1}{2}$ 以下であることを利用して評価する方法である。見通しが良く、簡潔に証明できる。
解法1
$a \geqq 2, b \geqq 2$ より、$a-1 \geqq 1, b-1 \geqq 1$ である。 よって、積について以下の不等式が成り立つ。
$$ (a-1)(b-1) \geqq 1 \cdot 1 = 1 $$
これを展開して整理する。
$$ ab - a - b + 1 \geqq 1 $$
$$ ab \geqq a+b $$
同様に、$c \geqq 2, d \geqq 2$ であるから、以下の不等式が成り立つ。
$$ cd \geqq c+d $$
次に、$X = ab, Y = cd$ とおく。 $a \geqq 2, b \geqq 2$ より $X \geqq 4$ であり、$c \geqq 2, d \geqq 2$ より $Y \geqq 4$ である。したがって、$X-1 \geqq 3, Y-1 \geqq 3$ となる。 これらを用いて $XY$ と $X+Y$ の大小を比較する。
$$ \begin{aligned} XY - (X+Y) &= X(Y-1) - Y \\ &= (X-1)(Y-1) - 1 \end{aligned} $$
ここで、$(X-1)(Y-1) \geqq 3 \cdot 3 = 9$ であるから、次のように評価できる。
$$ (X-1)(Y-1) - 1 \geqq 9 - 1 = 8 > 0 $$
よって、$XY - (X+Y) > 0$ であり、以下の不等式を得る。
$$ XY > X+Y $$
すなわち、変数を元に戻すと次のようになる。
$$ abcd > ab + cd $$
さらに、先に示した $ab \geqq a+b$ および $cd \geqq c+d$ を用いると、次のように評価できる。
$$ abcd > ab + cd \geqq (a+b) + (c+d) = a+b+c+d $$
したがって、求める不等式が成り立つ。
$$ abcd > a+b+c+d $$
解法2
$a \geqq 2, b \geqq 2, c \geqq 2, d \geqq 2$ より、$a, b, c, d$ はすべて正である。 したがって、$abcd > 0$ であるから、示すべき不等式の両辺を $abcd$ で割ると、次の不等式と同値になる。
$$ 1 > \frac{a+b+c+d}{abcd} $$
すなわち、以下の不等式を示せばよい。
$$ 1 > \frac{1}{bcd} + \frac{1}{acd} + \frac{1}{abd} + \frac{1}{abc} $$
仮定より、$a \geqq 2$ だから $\frac{1}{a} \leqq \frac{1}{2}$ である。$b, c, d$ についても同様に $\frac{1}{2}$ 以下であるから、各項について次のように評価できる。
$$ \frac{1}{bcd} = \frac{1}{b} \cdot \frac{1}{c} \cdot \frac{1}{d} \leqq \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{2} \cdot \frac{1}{2} = \frac{1}{8} $$
他の項についても同様に $\frac{1}{8}$ 以下であるため、右辺全体は次のように評価できる。
$$ \begin{aligned} \frac{1}{bcd} + \frac{1}{acd} + \frac{1}{abd} + \frac{1}{abc} &\leqq \frac{1}{8} + \frac{1}{8} + \frac{1}{8} + \frac{1}{8} \\ &= \frac{4}{8} \\ &= \frac{1}{2} \end{aligned} $$
$\frac{1}{2} < 1$ であるから、以下の不等式が成り立つ。
$$ 1 > \frac{1}{bcd} + \frac{1}{acd} + \frac{1}{abd} + \frac{1}{abc} $$
両辺に $abcd (>0)$ を掛けて、求める不等式が示された。
$$ abcd > a+b+c+d $$
解説
- 条件式を利用して式の値を評価する典型的な不等式証明問題である。
- 積と和の大小を比較する場合、解法2のように両辺を積で割ることで、各項を独立に評価しやすくなるテクニックが非常に強力である。特に変数が対称である場合に有効に働くため、ぜひ習得しておきたい。
- 解法1のように、$(a-1)(b-1)$ といった積の形を作り出して下限を評価し、段階的に不等式を導く方法も、数学的な発想の基本として重要である。
答え
題意の通り、$a \geqq 2, b \geqq 2, c \geqq 2, d \geqq 2$ のとき、$abcd > a+b+c+d$ が成り立つことが示された。
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