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名古屋大学 2012年 文系 第1問 解説

数学2/図形と式数学C/平面ベクトルテーマ/軌跡・領域テーマ/面積・体積
名古屋大学 2012年 文系 第1問 解説

方針・初手

(1) 直線に関して対称な点を求める定石通り、「直線 $PQ$ と直線 $l$ が垂直に交わる」「線分 $PQ$ の中点が直線 $l$ 上にある」という2つの条件を立式し、$s, t$ の連立方程式を解く。

(2) (1) の結果を利用し、$a=0, b=0$ を代入して点 $A$ の座標を求める。線分 $OA$ の長さを $h$ の式で表し、$h$ の変域に注意して取り得る値の範囲を調べる。

(3) 軌跡を求めるため、点 $A$ の座標を $(X, Y)$ とおき、(2) で求めた関係式から媒介変数 $h$ を消去する。このとき、$h$ の変域から $Y$(または $X$)の変域を正しく求めることが重要である。

解法1

(1)

直線 $l$ の方程式は $y = hx + 1$ より $hx - y + 1 = 0$ である。 点 $Q(s, t)$ は直線 $l$ に関して点 $P(a, b)$ と対称であるから、以下の2つの条件を満たす。

条件1:直線 $PQ$ と直線 $l$ は垂直に交わる。

直線 $l$ の方向ベクトルは $(1, h)$ であり、直線 $PQ$ の方向ベクトルは $(s-a, t-b)$ である。これらが直交するため、内積は $0$ となる。

$$ 1 \cdot (s - a) + h \cdot (t - b) = 0 $$

$$ s + ht = a + hb \quad \cdots \text{①} $$

条件2:線分 $PQ$ の中点は直線 $l$ 上にある。

線分 $PQ$ の中点の座標は $\left( \frac{a+s}{2}, \frac{b+t}{2} \right)$ である。これが $hx - y + 1 = 0$ を満たすので、

$$ h \cdot \frac{a+s}{2} - \frac{b+t}{2} + 1 = 0 $$

$$ h(a+s) - (b+t) + 2 = 0 $$

$$ hs - t = -ha + b - 2 \quad \cdots \text{②} $$

①、②を $s, t$ についての連立方程式として解く。 ① $\times h$ $-$ ② より

$$ h(s + ht) - (hs - t) = h(a + hb) - (-ha + b - 2) $$

$$ (h^2 + 1)t = 2ha + (h^2 - 1)b + 2 $$

$h$ は実数であり $h^2 + 1 \neq 0$ であるから、

$$ t = \frac{2ha + (h^2 - 1)b + 2}{h^2 + 1} $$

① $+$ ② $\times h$ より

$$ (s + ht) + h(hs - t) = a + hb + h(-ha + b - 2) $$

$$ (h^2 + 1)s = (1 - h^2)a + 2hb - 2h $$

$$ s = \frac{(1 - h^2)a + 2h(b - 1)}{h^2 + 1} $$

(2)

点 $A$ は直線 $l$ に関して原点 $O(0, 0)$ と対称な点であるから、(1) の結果に $a=0, b=0$ を代入すればよい。 点 $A$ の座標は

$$ \left( \frac{-2h}{h^2 + 1}, \frac{2}{h^2 + 1} \right) $$

となる。線分 $OA$ の長さの2乗は

$$ \begin{aligned} OA^2 &= \left( \frac{-2h}{h^2 + 1} \right)^2 + \left( \frac{2}{h^2 + 1} \right)^2 \\ &= \frac{4h^2 + 4}{(h^2 + 1)^2} \\ &= \frac{4(h^2 + 1)}{(h^2 + 1)^2} \\ &= \frac{4}{h^2 + 1} \end{aligned} $$

$OA > 0$ であるから、$OA = \frac{2}{\sqrt{h^2 + 1}}$ である。

ここで、$-1 \leqq h \leqq 1$ であるから、各辺を2乗して $0 \leqq h^2 \leqq 1$ 各辺に $1$ を加えて $1 \leqq h^2 + 1 \leqq 2$ 各辺は正であるから、平方根をとり逆数にすると $\frac{1}{\sqrt{2}} \leqq \frac{1}{\sqrt{h^2 + 1}} \leqq 1$ 各辺に $2$ を掛けて $\sqrt{2} \leqq \frac{2}{\sqrt{h^2 + 1}} \leqq 2$

したがって、線分 $OA$ の長さの最大値は $2$、最小値は $\sqrt{2}$ である。

(3)

点 $A$ の座標を $(X, Y)$ とおく。

$$ X = \frac{-2h}{h^2 + 1} \quad \cdots \text{③} $$

$$ Y = \frac{2}{h^2 + 1} \quad \cdots \text{④} $$

$-1 \leqq h \leqq 1$ より $1 \leqq h^2 + 1 \leqq 2$ であるから、④より $1 \leqq \frac{2}{h^2 + 1} \leqq 2$、すなわち

$$ 1 \leqq Y \leqq 2 \quad \cdots \text{⑤} $$

である。また、④より $Y \neq 0$ であり、$h^2 + 1 = \frac{2}{Y}$ となるため、

$$ h^2 = \frac{2}{Y} - 1 = \frac{2 - Y}{Y} \quad \cdots \text{⑥} $$

③より $X = -h \cdot \frac{2}{h^2 + 1} = -hY$ であるから、

$$ h = -\frac{X}{Y} $$

これを⑥に代入して、

$$ \left( -\frac{X}{Y} \right)^2 = \frac{2 - Y}{Y} $$

$$ \frac{X^2}{Y^2} = \frac{2 - Y}{Y} $$

両辺に $Y^2$ を掛けて($Y \neq 0$ より)、

$$ X^2 = Y(2 - Y) $$

$$ X^2 + Y^2 - 2Y = 0 $$

$$ X^2 + (Y - 1)^2 = 1 $$

⑤より、軌跡 $C$ は円 $x^2 + (y - 1)^2 = 1$ の $1 \leqq y \leqq 2$ の部分である。 これは中心 $(0, 1)$、半径 $1$ の円の上半分(半円)を表す。

したがって、曲線 $C$ と直線 $y = 1$ で囲まれた図形は半径 $1$ の半円であり、その面積 $S$ は

$$ S = \frac{1}{2} \cdot \pi \cdot 1^2 = \frac{\pi}{2} $$

解法2

(3) について、図形的な性質を利用する別解を示す。

直線 $l: y = hx + 1$ は、傾き $h$ にかかわらず常に定点 $B(0, 1)$ を通る。 点 $A$ は直線 $l$ に関して原点 $O(0, 0)$ と対称な点であるから、直線 $l$ は線分 $OA$ の垂直二等分線となる。 垂直二等分線上の点から線分の両端点までの距離は等しいので、$BO = BA$ が成り立つ。 $B(0, 1)$, $O(0, 0)$ より $BO = 1$ であるから、$BA = 1$。 これは、点 $A$ が点 $B(0, 1)$ を中心とする半径 $1$ の円 $x^2 + (y - 1)^2 = 1$ の円周上を動くことを意味する。

次に点 $A$ の動く範囲を調べる。 直線 $l$ が $y$ 軸となす角の大きさを $\theta$ とおくと、傾き $h$ が $-1 \leqq h \leqq 1$ を動くとき、直線 $l$ の回転角の範囲は $-\frac{\pi}{4} \leqq \theta \leqq \frac{\pi}{4}$ である。 直線 $l$ は線分 $OA$ の垂直二等分線であるから、$\triangle OBA$ は $OB = AB$ の二等辺三角形であり、直線 $l$ は $\angle OBA$ の二等分線となる。 したがって、ベクトル $\overrightarrow{BO}$ と $\overrightarrow{BA}$ のなす角は $2\theta$ となる。 $-\frac{\pi}{4} \leqq \theta \leqq \frac{\pi}{4}$ より、$-\frac{\pi}{2} \leqq 2\theta \leqq \frac{\pi}{2}$ である。 これは、点 $A$ が点 $B$ の直下(原点 $O$)から見て、左右に最大 $90^\circ$ の範囲にしか存在しないことを示している。 すなわち、点 $A$ の位置は点 $B$ と同じかそれより高い位置($y \geqq 1$)に限定される。

したがって、軌跡 $C$ は円 $x^2 + (y - 1)^2 = 1$ の $y \geqq 1$ の部分(半円)となる。 この曲線 $C$ と直線 $y = 1$ で囲まれた図形は半径 $1$ の半円であるから、その面積は

$$ \frac{1}{2} \cdot \pi \cdot 1^2 = \frac{\pi}{2} $$

解説

直線に関する対称点の座標を求める基礎的な計算力と、媒介変数表示された曲線の軌跡を求める力が問われる標準的な問題である。 (1) では、傾きの積が $-1$ となる条件を使うと $h=0$ の場合分けが必要になるが、方向ベクトルの内積を使うことで場合分けを回避でき、計算がスムーズになる。 (3) の数式による解法(解法1)では、$h$ を消去して $X, Y$ の関係式を導く過程で、元の変数 $h$ の変域から新しい変数 $Y$ の変域を忘れずに絞り込むことが最重要ポイントである。ここを怠ると円全体が軌跡であると誤答してしまう。 また、図形的な意味を考察する解法(解法2)に気づけば、計算量が劇的に減り、見通しよく解くことができる。

答え

(1) $$ s = \frac{(1 - h^2)a + 2h(b - 1)}{h^2 + 1}, \quad t = \frac{2ha + (h^2 - 1)b + 2}{h^2 + 1} $$

(2) 最大値 $2$、最小値 $\sqrt{2}$

(3) $\frac{\pi}{2}$

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