名古屋大学 1983年 理系 第5問 解説

方針・初手
箱 $A$ と箱 $B$ に入っている球の合計は常に $3$ 個であるため、箱 $A$ の球の個数に注目すればすべての状態を把握できる。操作ごとの箱 $A$ の球の個数の推移(状態遷移)を考えると、どちらかの箱が空になるまでの推移パターンは一本道である。具体的な経路を書き出し、その確率を計算していく。
解法1
(1)
$k$ 回目の操作後の箱 $A$ の球の個数を $X_k$ とする。初期状態は $X_0 = 1$ である。 硬貨を投げて表が出ると $A$ から $B$ へ球が移動するため $X_{k+1} = X_k - 1$ となり、裏が出ると $B$ から $A$ へ移動するため $X_{k+1} = X_k + 1$ となる。 操作が終了するのは、$X_k = 0$(箱 $A$ が空になる)または $X_k = 3$(箱 $B$ が空になる)となったときである。
1回の操作ごとに箱 $A$ の球の個数は $\pm 1$ 変化するため、$X_k$ の偶奇は操作のたびに反転する。 $X_0 = 1$(奇数)であるから、$k$ 回目終了後の $X_k$ と $k+1$ の偶奇は常に一致する。 したがって、偶数回目に $X_k = 0$ となることは起こり得ない。よって、$n$ が偶数のとき $p_n = 0$ である。
$n$ が奇数、すなわち $n = 2m-1$($m = 1, 2, \dots$)のときを考える。 $2m-1$ 回目に初めて箱 $A$ が空になるためには、それまでの間 $X_k = 0$ にも $X_k = 3$ にもならずに操作が続く必要がある。 条件を満たすような推移は、以下の一通りに限られる。
$$X_0 = 1 \to X_1 = 2 \to X_2 = 1 \to \dots \to X_{2m-2} = 1 \to X_{2m-1} = 0$$
すなわち、$1$ と $2$ を往復し、最後に $1 \to 0$ となる経路である。 各遷移が起こる確率は、表・裏が出る確率がいずれも $\frac{1}{2}$ であることから、すべて $\frac{1}{2}$ である。 したがって、求める確率は
$$p_{2m-1} = \left(\frac{1}{2}\right)^{2m-1}$$
となる。
(2)
「$N$ 回以下の操作では $A$ が空にならない」という事象は、「$N$ 回以下の操作で $A$ が空になる」という事象の余事象である。 したがって、求める確率 $q_N$ は
$$q_N = 1 - \sum_{k=1}^N p_k$$
として計算できる。$N$ の偶奇で場合分けをする。
(i) $N$ が偶数、$N=2m$($m=1, 2, \dots$)のとき
$$\begin{aligned} q_{2m} &= 1 - \sum_{k=1}^{2m} p_k \\ &= 1 - \sum_{j=1}^m p_{2j-1} \\ &= 1 - \sum_{j=1}^m \left(\frac{1}{2}\right)^{2j-1} \end{aligned}$$
ここで、$\sum_{j=1}^m \left(\frac{1}{2}\right)^{2j-1}$ は初項 $\frac{1}{2}$、公比 $\frac{1}{4}$、項数 $m$ の等比数列の和であるから、
$$\sum_{j=1}^m \left(\frac{1}{2}\right)^{2j-1} = \frac{\frac{1}{2} \left\{ 1 - \left(\frac{1}{4}\right)^m \right\}}{1 - \frac{1}{4}} = \frac{2}{3} \left\{ 1 - \left(\frac{1}{4}\right)^m \right\}$$
よって、
$$\begin{aligned} q_{2m} &= 1 - \frac{2}{3} \left\{ 1 - \left(\frac{1}{4}\right)^m \right\} \\ &= \frac{1}{3} + \frac{2}{3} \left(\frac{1}{4}\right)^m \\ &= \frac{1}{3} + \frac{2}{3} \left(\frac{1}{2}\right)^{2m} \end{aligned}$$
(ii) $N$ が奇数、$N=2m-1$($m=1, 2, \dots$)のとき
(1)より $p_{2m} = 0$ であるから、$\sum_{k=1}^{2m-1} p_k = \sum_{k=1}^{2m} p_k$ が成り立つ。 これと (i) の計算結果を用いると、
$$\begin{aligned} q_{2m-1} &= 1 - \sum_{k=1}^{2m-1} p_k \\ &= 1 - \sum_{k=1}^{2m} p_k \\ &= \frac{1}{3} + \frac{2}{3} \left(\frac{1}{4}\right)^m \\ &= \frac{1}{3} + \frac{1}{3} \cdot 2 \left(\frac{1}{2}\right)^{2m} \\ &= \frac{1}{3} + \frac{1}{3} \left(\frac{1}{2}\right)^{2m-1} \end{aligned}$$
解法2
(2) を余事象を用いず直接求める別解を示す。 「$N$ 回以下の操作では $A$ が空にならない」という事象は、以下の2つの互いに排反な事象の和事象である。
- $N$ 回終了時点でどちらの箱も空にならず、操作が続行している(事象 $E_1$)
- $N$ 回以下のいずれかの操作で箱 $B$ が空になり($A$ の球が $3$ 個になり)、そこで操作が終了している(事象 $E_2$)
(i) 事象 $E_1$ について
操作が続行しているためには、箱 $A$ の球数 $X_k$ が $1$ と $2$ を往復し続ける必要がある。 $N$ が偶数($N=2m$)のとき、経路は $1 \to 2 \to 1 \to \dots \to 1$ と一意に定まり、その確率は $\left(\frac{1}{2}\right)^{2m}$ である。 $N$ が奇数($N=2m-1$)のとき、経路は $1 \to 2 \to 1 \to \dots \to 2$ と一意に定まり、その確率は $\left(\frac{1}{2}\right)^{2m-1}$ である。
(ii) 事象 $E_2$ について
ちょうど $k$ 回目に箱 $B$ が空になる($X_k=3$ となる)確率を $r_k$ とする。 (1)での考察と同様に、球の個数の偶奇から $k$ が奇数のときは $r_k = 0$ である。 $k$ が偶数($k=2j$)のとき、$2j$ 回目に初めて $X_{2j}=3$ となる経路は
$$X_0=1 \to X_1=2 \to X_2=1 \dots \to X_{2j-2}=1 \to X_{2j-1}=2 \to X_{2j}=3$$
の1通りに限られ、その確率は $r_{2j} = \left(\frac{1}{2}\right)^{2j}$ である。 事象 $E_2$ が起こる確率は、$\sum r_k$ である。
上記 (i), (ii) を足し合わせて $q_N$ を計算する。
$N$ が偶数($N=2m$)のとき
$$\begin{aligned} q_{2m} &= P(E_1) + P(E_2) \\ &= \left(\frac{1}{2}\right)^{2m} + \sum_{j=1}^m \left(\frac{1}{2}\right)^{2j} \\ &= \left(\frac{1}{4}\right)^m + \frac{\frac{1}{4} \left\{ 1 - \left(\frac{1}{4}\right)^m \right\}}{1 - \frac{1}{4}} \\ &= \left(\frac{1}{4}\right)^m + \frac{1}{3} \left\{ 1 - \left(\frac{1}{4}\right)^m \right\} \\ &= \frac{1}{3} + \frac{2}{3} \left(\frac{1}{2}\right)^{2m} \end{aligned}$$
$N$ が奇数($N=2m-1$)のとき(和の部分は $m=1$ のとき $0$ とする)
$$\begin{aligned} q_{2m-1} &= P(E_1) + P(E_2) \\ &= \left(\frac{1}{2}\right)^{2m-1} + \sum_{j=1}^{m-1} \left(\frac{1}{2}\right)^{2j} \\ &= 2 \left(\frac{1}{4}\right)^m + \frac{1}{3} \left\{ 1 - \left(\frac{1}{4}\right)^{m-1} \right\} \\ &= 2 \left(\frac{1}{4}\right)^m + \frac{1}{3} - \frac{4}{3} \left(\frac{1}{4}\right)^m \\ &= \frac{1}{3} + \frac{2}{3} \left(\frac{1}{4}\right)^m \\ &= \frac{1}{3} + \frac{1}{3} \left(\frac{1}{2}\right)^{2m-1} \end{aligned}$$
解説
状態数(箱 $A$ の球の数)が $0, 1, 2, 3$ と少ないため、状態の遷移図をイメージすれば、終了までの推移が一本道であることに容易に気付ける。 (1) で「偶数回目に終了することはあり得ない」という偶奇の性質を見抜けるかが最初のポイントとなる。(2) では、「$A$ が空にならない」という事象をそのまま考える(解法2)こともできるが、(1) で求めた「$A$ が空になる確率」を利用して余事象から考える(解法1)方が、立式の見通しが良く安全である。
答え
(1) $n$ が奇数のとき $p_n = \left(\frac{1}{2}\right)^n$ $n$ が偶数のとき $p_n = 0$
(2) $N$ が奇数のとき $q_N = \frac{1}{3} + \frac{1}{3} \left(\frac{1}{2}\right)^N$ $N$ が偶数のとき $q_N = \frac{1}{3} + \frac{2}{3} \left(\frac{1}{2}\right)^N$
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