名古屋大学 2011年 理系 第3問 解説

方針・初手
(1) は点 $P$ の座標を $(x,y)$ と置き、与えられた距離の比を2乗して式を整理することで軌跡の方程式を求める。$a=1$ の場合(垂直二等分線)と $a \neq 1$ の場合(アポロニウスの円)で場合分けを行う。 (2) は (1) の結果を利用して、$OP:BP = 1:b$ を満たす軌跡を導き、2つの図形が共有点をもつための条件を調べる。図形的なアプローチのほかに、極座標を用いて代数方程式の実数解の存在条件に帰着させる別解も有効である。
解法1
(1) 点 $P$ の座標を $(x,y)$ とおく。 条件 $OP:AP = 1:a$ より、$aOP = AP$ であるから、両辺を2乗して以下の式を得る。
$$ a^2 OP^2 = AP^2 $$
$O(0,0)$、$A(1,0)$ より、座標を用いて書き換えると、
$$ a^2 (x^2 + y^2) = (x-1)^2 + y^2 $$
これを展開して整理する。
$$ (a^2-1)x^2 + 2x + (a^2-1)y^2 - 1 = 0 $$
(i) $a=1$ のとき 方程式は $2x - 1 = 0$ となり、$x = \frac{1}{2}$ となる。これは直線を表す。
(ii) $a \neq 1$ のとき 方程式の両辺を $a^2-1 \neq 0$ で割り、平方完成を行う。
$$ x^2 + \frac{2}{a^2-1}x + y^2 = \frac{1}{a^2-1} $$
$$ \left( x + \frac{1}{a^2-1} \right)^2 + y^2 = \frac{1}{a^2-1} + \frac{1}{(a^2-1)^2} $$
$$ \left( x + \frac{1}{a^2-1} \right)^2 + y^2 = \frac{a^2}{(a^2-1)^2} $$
これは中心 $\left( -\frac{1}{a^2-1}, 0 \right)$、半径 $\frac{a}{|a^2-1|}$ の円を表す。
(2) 条件 $OP:BP = 1:b$ についても(1)と同様に考える。$bOP = BP$ の両辺を2乗し、$B(0,1)$ を用いて整理すると、以下の式が得られる。
$$ (b^2-1)x^2 + (b^2-1)y^2 + 2y - 1 = 0 $$
点 $P$ が存在するためには、(1)で求めた軌跡(これを $C_1$ とする)と、上記で求めた軌跡(これを $C_2$ とする)が共有点をもてばよい。
(i) $a=1, b=1$ のとき $C_1$ は直線 $x = \frac{1}{2}$、$C_2$ は直線 $y = \frac{1}{2}$ である。これらは交点 $\left( \frac{1}{2}, \frac{1}{2} \right)$ をもつため、条件を満たす。
(ii) $a=1, b \neq 1$ のとき $C_1$ は直線 $x = \frac{1}{2}$ である。$C_2$ は中心 $\left( 0, -\frac{1}{b^2-1} \right)$、半径 $\frac{b}{|b^2-1|}$ の円である。 これらが共有点をもつ条件は、中心から直線までの距離が半径以下になることである。
$$ \frac{1}{2} \le \frac{b}{|b^2-1|} $$
$$ |b^2-1| \le 2b $$
$$ -2b \le b^2-1 \le 2b $$
$b>0$ に注意してそれぞれの不等式を解く。 $b^2+2b-1 \ge 0$ より $b \ge \sqrt{2}-1$。 $b^2-2b-1 \le 0$ より $b \le \sqrt{2}+1$。 よって、$\sqrt{2}-1 \le b \le \sqrt{2}+1$(ただし $b \neq 1$)となる。
(iii) $a \neq 1, b=1$ のとき (ii)と同様に、$x$ と $y$ の対称性から以下の条件を得る。
$$ \sqrt{2}-1 \le a \le \sqrt{2}+1 $$
(ただし $a \neq 1$)
(iv) $a \neq 1, b \neq 1$ のとき $C_1$ は中心 $O_1\left( -\frac{1}{a^2-1}, 0 \right)$、半径 $r_1 = \frac{a}{|a^2-1|}$ の円である。 $C_2$ は中心 $O_2\left( 0, -\frac{1}{b^2-1} \right)$、半径 $r_2 = \frac{b}{|b^2-1|}$ の円である。 2つの円が共有点をもつ条件は、中心間距離を $d$ としたとき以下の不等式が成り立つことである。
$$ |r_1 - r_2| \le d \le r_1 + r_2 $$
各辺は正または $0$ であるため、各辺を2乗しても同値である。
$$ r_1^2 + r_2^2 - 2r_1 r_2 \le d^2 \le r_1^2 + r_2^2 + 2r_1 r_2 $$
各値を計算する。
$$ d^2 = O_1 O_2^2 = \frac{1}{(a^2-1)^2} + \frac{1}{(b^2-1)^2} $$
$$ r_1^2 + r_2^2 = \frac{a^2}{(a^2-1)^2} + \frac{b^2}{(b^2-1)^2} $$
これらより辺々を引き算すると、以下のようになる。
$$ d^2 - (r_1^2 + r_2^2) = \frac{1-a^2}{(a^2-1)^2} + \frac{1-b^2}{(b^2-1)^2} = -\frac{a^2+b^2-2}{(a^2-1)(b^2-1)} $$
また、積の項は以下となる。
$$ 2r_1 r_2 = \frac{2ab}{|a^2-1||b^2-1|} $$
したがって、共有点をもつ条件の不等式は次のように書ける。
$$ -\frac{2ab}{|a^2-1||b^2-1|} \le -\frac{a^2+b^2-2}{(a^2-1)(b^2-1)} \le \frac{2ab}{|a^2-1||b^2-1|} $$
辺々に正の数 $|a^2-1||b^2-1|$ を掛ける。中央の項の符号は反転する可能性があるが、両端が $\pm 2ab$ で挟まれているため、全体として以下の不等式と同値になる。
$$ -2ab \le a^2+b^2-2 \le 2ab $$
これを解く。左側の不等式より、
$$ a^2+b^2-2 \ge -2ab \implies (a+b)^2 \ge 2 \implies a+b \ge \sqrt{2} \quad (\because a>0, b>0) $$
右側の不等式より、
$$ a^2+b^2-2 \le 2ab \implies (a-b)^2 \le 2 \implies -\sqrt{2} \le a-b \le \sqrt{2} \implies a-\sqrt{2} \le b \le a+\sqrt{2} $$
以上の (i) から (iv) の条件をまとめると、例外なくすべて以下の不等式に包括される。
$$ a+b \ge \sqrt{2} \quad \text{かつ} \quad a-\sqrt{2} \le b \le a+\sqrt{2} $$
解法2
(2) の別解として、極座標を用いる方法を示す。 点 $P$ は原点 $O$ とは一致しないため、$OP = r$ ($r>0$) とし、$P$ の座標を $(r \cos\theta, r \sin\theta)$ とおく。 条件 $AP^2 = a^2 OP^2$ および $BP^2 = b^2 OP^2$ に座標を代入する。
$$ (r \cos\theta - 1)^2 + r^2 \sin^2\theta = a^2 r^2 \implies r^2 - 2r \cos\theta + 1 = a^2 r^2 \implies 2r \cos\theta = (1-a^2)r^2 + 1 $$
$$ r^2 \cos^2\theta + (r \sin\theta - 1)^2 = b^2 r^2 \implies r^2 - 2r \sin\theta + 1 = b^2 r^2 \implies 2r \sin\theta = (1-b^2)r^2 + 1 $$
$\cos^2\theta + \sin^2\theta = 1$ であるから、両辺をそれぞれ2乗して足し合わせる。
$$ 4r^2 = \{ (1-a^2)r^2 + 1 \}^2 + \{ (1-b^2)r^2 + 1 \}^2 $$
展開して $r$ について整理する。
$$ \{ (a^2-1)^2 + (b^2-1)^2 \} r^4 - 2(a^2+b^2) r^2 + 2 = 0 $$
点 $P$ が存在するためには、$X = r^2$ とおいたときの以下の $X$ についての2次方程式(または1次方程式)が、少なくとも1つの正の実数解をもてばよい。
$$ \{ (a^2-1)^2 + (b^2-1)^2 \} X^2 - 2(a^2+b^2) X + 2 = 0 \quad \cdots (*) $$
(i) $a=1, b=1$ のとき (*) は $-4X + 2 = 0$ となり、$X = \frac{1}{2} > 0$ であるため適する。
(ii) $(a,b) \neq (1,1)$ のとき (*) の $X^2$ の係数は正である。$f(X) = \{ (a^2-1)^2 + (b^2-1)^2 \} X^2 - 2(a^2+b^2) X + 2$ とおくと、放物線 $Y = f(X)$ の軸は $X = \frac{a^2+b^2}{(a^2-1)^2+(b^2-1)^2} > 0$ であり、$f(0) = 2 > 0$ である。 したがって、正の解をもつための必要十分条件は、判別式 $D \ge 0$ である。
$$ \frac{D}{4} = (a^2+b^2)^2 - 2 \{ (a^2-1)^2 + (b^2-1)^2 \} \ge 0 $$
これを展開して因数分解する。
$$ \begin{aligned} \frac{D}{4} &= a^4 + 2a^2b^2 + b^4 - 2(a^4 - 2a^2 + 1 + b^4 - 2b^2 + 1) \\ &= -a^4 + 2a^2b^2 - b^4 + 4a^2 + 4b^2 - 4 \\ &= -(a^2-b^2)^2 + 4(a^2+b^2) - 4 \\ &= -(a^2+b^2 - 2ab)(a^2+b^2 + 2ab) + 4(a^2+b^2) - 4 \\ &= - \{ (a^2+b^2)^2 - 4a^2b^2 \} + 4(a^2+b^2) - 4 \\ &= - (a^2+b^2 - 2)^2 + (2ab)^2 \\ &= \{ 2ab + (a^2+b^2-2) \} \{ 2ab - (a^2+b^2-2) \} \\ &= \{ (a+b)^2 - 2 \} \{ 2 - (a-b)^2 \} \end{aligned} $$
したがって、条件は以下のようになる。
$$ \{ (a+b)^2 - 2 \} \{ 2 - (a-b)^2 \} \ge 0 $$
ここで $a>0, b>0$ より $|a-b| < a+b$ であるため、$(a+b)^2 \le 2$ かつ $2 \le (a-b)^2$ を満たす正の組 $(a,b)$ は存在しない。 よって、以下の条件を満たさなければならない。
$$ (a+b)^2 - 2 \ge 0 \quad \text{かつ} \quad 2 - (a-b)^2 \ge 0 $$
$$ a+b \ge \sqrt{2} \quad \text{かつ} \quad -\sqrt{2} \le a-b \le \sqrt{2} $$
これは解法1で得た結論と完全に一致する。
解説
(1) の軌跡は有名な「アポロニウスの円」であり、立式から平方完成までの流れは基本的な処理である。(2) は、この結果を応用して2円の交差条件に帰着させるのが定石であるが、(iv) の場合分けで現れる不等式の処理において、式の形を観察して適切に因数分解や絶対値の処理を行う計算力が求められる。 一方、解法2で示したように極座標を用いて代数方程式に帰着させると、場合分けの煩雑さが軽減され、極めて見通し良く処理することができる。
答え
(1) $a=1$ のとき、直線 $x = \frac{1}{2}$ $a \neq 1$ のとき、中心 $\left( -\frac{1}{a^2-1}, 0 \right)$、半径 $\frac{a}{|a^2-1|}$ の円
(2) 条件は $a+b \ge \sqrt{2}$ かつ $a-\sqrt{2} \le b \le a+\sqrt{2}$ (ただし $a>0, b>0$) これを $ab$ 平面上に図示すると、横軸を $a$ 軸、縦軸を $b$ 軸として、第1象限において直線 $b = -a + \sqrt{2}$、直線 $b = a - \sqrt{2}$、直線 $b = a + \sqrt{2}$ の3直線に囲まれた領域となる(境界線を含む)。
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