大阪大学 1980年 理系 第3問 解説

方針・初手
漸化式を変形して、数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めることが第一歩である。両辺を $b^n$ で割って階差数列に帰着させるか、等比数列の形 $a_n - \alpha (-c)^{n-1} = b ( a_{n-1} - \alpha (-c)^{n-2} )$ に変形する手法が有効である。
一般項を求めた後は、必要十分条件の証明として「$b \geqq c$ ならばすべての $n$ で $a_n \geqq 0$ となる(十分性)」ことと、「すべての $n$ で $a_n \geqq 0$ ならば $b \geqq c$ となる(必要性)」ことの2つを示す。必要性の証明では、対偶「$b < c$ ならばある $n$ で $a_n < 0$ となる」を示す方針が考えやすい。
解法1
与えられた漸化式
$$ a_n = b a_{n-1} + (-c)^{n-1} \quad (n \geqq 2) $$
を変形して、一般項を求める。等比数列の形への変形を目指し、定数 $\alpha$ を用いて
$$ a_n - \alpha (-c)^{n-1} = b \left\{ a_{n-1} - \alpha (-c)^{n-2} \right\} $$
と表せると仮定する。これを展開して整理すると、
$$ a_n = b a_{n-1} - b \alpha (-c)^{n-2} + \alpha (-c)^{n-1} $$
$$ a_n = b a_{n-1} + \frac{b}{c} \alpha (-c)^{n-1} + \alpha (-c)^{n-1} $$
$$ a_n = b a_{n-1} + \alpha \frac{b+c}{c} (-c)^{n-1} $$
これが元の漸化式と一致するためには、$\alpha \frac{b+c}{c} = 1$ であればよい。$b>0, c>0$ より $b+c \neq 0$ であるから、
$$ \alpha = \frac{c}{b+c} $$
となる。よって、漸化式は次のように変形できる。
$$ a_n - \frac{c}{b+c} (-c)^{n-1} = b \left\{ a_{n-1} - \frac{c}{b+c} (-c)^{n-2} \right\} $$
数列 $\left\{ a_n - \frac{c}{b+c} (-c)^{n-1} \right\}$ は、初項 $a_1 - \frac{c}{b+c}$、公比 $b$ の等比数列であるから、
$$ a_n - \frac{c}{b+c} (-c)^{n-1} = \left( a_1 - \frac{c}{b+c} \right) b^{n-1} $$
$$ a_n = \left( a_1 - \frac{c}{b+c} \right) b^{n-1} + \frac{c}{b+c} (-c)^{n-1} $$
式を整理して、一般項は次のように表される。
$$ a_n = \frac{1}{b+c} \left\{ ( a_1(b+c) - c ) b^{n-1} + c(-c)^{n-1} \right\} $$
次に、$b, c$ が満足すべき必要十分条件が $b \geqq c$ であることを、十分性と必要性に分けて証明する。
(i) 十分性の証明($b \geqq c \implies$ すべての $n$ について $a_n \geqq 0$)
$b \geqq c$ と仮定する。与えられた条件 $a_1 \geqq 1$ と $c > 0$ を用いると、
$$ a_1(b+c) - c \geqq 1 \cdot (b+c) - c = b > 0 $$
が成り立つ。一般項の式において、$n$ の偶奇で場合分けをする。
$n$ が奇数のとき、$(-c)^{n-1} = c^{n-1} > 0$ である。$b>0, c>0$ より $b^{n-1} > 0$ なので、
$$ a_n = \frac{1}{b+c} \left\{ ( a_1(b+c) - c ) b^{n-1} + c \cdot c^{n-1} \right\} > 0 $$
$n$ が偶数のとき、$n=2k$($k$ は自然数)とおくと $(-c)^{n-1} = -c^{2k-1}$ であるから、
$$ a_{2k} = \frac{1}{b+c} \left\{ ( a_1(b+c) - c ) b^{2k-1} - c^{2k} \right\} $$
ここで、$a_1(b+c) - c \geqq b$ であり、また $b \geqq c > 0$ より $b^{2k-1} \geqq c^{2k-1}$ であるから、
$$ ( a_1(b+c) - c ) b^{2k-1} \geqq b \cdot b^{2k-1} = b^{2k} \geqq c^{2k} $$
したがって、$( a_1(b+c) - c ) b^{2k-1} - c^{2k} \geqq 0$ となり、$a_{2k} \geqq 0$ が成り立つ。 以上より、$b \geqq c$ ならば、すべての $n$ について $a_n \geqq 0$ である。
(ii) 必要性の証明(すべての $n$ について $a_n \geqq 0 \implies b \geqq c$)
対偶である「$b < c$ ならば、ある $n$ について $a_n < 0$ となる」ことを証明する。 $0 < b < c$ と仮定する。$n$ が偶数のとき($n=2k$)、
$$ a_{2k} = \frac{1}{b+c} \left\{ ( a_1(b+c) - c ) b^{2k-1} - c^{2k} \right\} $$
$$ a_{2k} = \frac{b^{2k-1}}{b+c} \left\{ a_1(b+c) - c - c \left( \frac{c}{b} \right)^{2k-1} \right\} $$
と変形できる。$0 < b < c$ より $\frac{c}{b} > 1$ であるため、$k \to \infty$ としたとき $\left( \frac{c}{b} \right)^{2k-1} \to \infty$ となる。 一方、$a_1(b+c) - c$ は $k$ に依存しない定数である。 したがって、十分に大きな自然数 $k$ をとれば、
$$ a_1(b+c) - c - c \left( \frac{c}{b} \right)^{2k-1} < 0 $$
とすることができる。$\frac{b^{2k-1}}{b+c} > 0$ であるから、このとき $a_{2k} < 0$ となる。 よって対偶は真であり、すべての $n$ について $a_n \geqq 0$ ならば $b \geqq c$ である。
(i), (ii) より、すべての $n$ について $a_n \geqq 0$ となるための必要十分条件は $b \geqq c$ であることが示された。
解説
2項間漸化式の一般項を求める典型的な処理と、数列の極限や不等式評価を組み合わせた総合問題である。 漸化式の末尾が $(-c)^{n-1}$ となっており、公比が負であることから、項の符号が振動する性質を持つ。このため、数列が常に $0$ 以上になるためには、正の項である $b^{n-1}$ の部分が振動する負の項を常に上回っている必要がある。 必要性の証明において、「すべての $n$ で成り立つこと」の条件を絞り込むために、対偶をとって「ある $n$ で成り立たない」ことを極限を用いて示す論法は、難関大の数学で頻出のテクニックである。
答え
題意の通り、すべての $n$ について $a_n \geqq 0$ となるための必要十分条件が $b \geqq c$ であることが証明された。
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