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九州大学 1972年 文系 第5問 解説

数学B/数列数学1/方程式不等式テーマ/漸化式テーマ/不等式の証明
九州大学 1972年 文系 第5問 解説

方針・初手

毎年の借入残高がどのように推移していくかを順に追い、漸化式を立てて一般項を導く典型的な年賦償還(ローンの返済)の問題である。 まずは1年後、2年後の残高を定義に従って立式し、そこから $n$ 年後の残高の規則性を推測して数式化する。その際、等比数列の和の公式を用いる。(2) は15回で完済するという条件を数式に落とし込む。(3) は (1) と (2) の結果を不等式に代入し、同値変形によって目標の式を導く。

解法1

(1)

はじめに $A$ 円借りている。 1年たつとこれに利子がつき、$A(1+r)$ 円となる。 その年末に $a$ 円支払うので、1年たって2年目のはじめに借りている金額 $A_1$ は

$$A_1 = A(1+r) - a$$

となる。 さらに1年たつと、この金額に利子がつき、$A_1(1+r)$ 円となる。 その年末にまた $a$ 円支払うので、2年たって3年目のはじめに借りている金額 $A_2$ は

$$A_2 = A_1(1+r) - a$$

これに先ほど求めた $A_1$ を代入して整理すると

$$A_2 = \{ A(1+r) - a \}(1+r) - a = A(1+r)^2 - a(1+r) - a$$

となる。 同様の操作を繰り返すことで、$A_n$ は次のように推測される。

$$A_n = A(1+r)^n - a(1+r)^{n-1} - a(1+r)^{n-2} - \cdots - a(1+r) - a$$

右辺の第2項以降は、初項 $a$、公比 $1+r$、項数 $n$ の等比数列の和である。 $r > 0$ であるから、この等比数列の和を計算すると

$$A_n = A(1+r)^n - \frac{a \{ (1+r)^n - 1 \}}{(1+r) - 1} = A(1+r)^n - \frac{a}{r} \{ (1+r)^n - 1 \}$$

となる。

(2)

15回で返済が完了するということは、15年たって16年目のはじめに借りている金額 $A_{15}$ が $0$ になるということである。 (1) で求めた $A_n$ の式に $n=15$ を代入して $A_{15} = 0$ とすると

$$A(1+r)^{15} - \frac{a}{r} \{ (1+r)^{15} - 1 \} = 0$$

これを $a$ について解く。

$$\frac{a}{r} \{ (1+r)^{15} - 1 \} = A(1+r)^{15}$$

$$a = \frac{Ar(1+r)^{15}}{(1+r)^{15} - 1}$$

(3)

$A_n$ が $A$ の $\frac{2}{3}$ 以下になるという条件は、不等式で次のように表される。

$$A_n \leqq \frac{2}{3}A$$

これに (1) で求めた $A_n$ を代入する。

$$A(1+r)^n - \frac{a}{r} \{ (1+r)^n - 1 \} \leqq \frac{2}{3}A$$

さらに、(2) より $\frac{a}{r} = \frac{A(1+r)^{15}}{(1+r)^{15} - 1}$ であるから、これを代入する。

$$A(1+r)^n - \frac{A(1+r)^{15}}{(1+r)^{15} - 1} \{ (1+r)^n - 1 \} \leqq \frac{2}{3}A$$

$A > 0$ であるから、両辺を $A$ で割る。

$$(1+r)^n - \frac{(1+r)^{15}}{(1+r)^{15} - 1} \{ (1+r)^n - 1 \} \leqq \frac{2}{3}$$

左辺を $(1+r)^n$ について整理する。

$$(1+r)^n \left\{ 1 - \frac{(1+r)^{15}}{(1+r)^{15} - 1} \right\} + \frac{(1+r)^{15}}{(1+r)^{15} - 1} \leqq \frac{2}{3}$$

中括弧の中を通分して計算する。

$$1 - \frac{(1+r)^{15}}{(1+r)^{15} - 1} = \frac{(1+r)^{15} - 1 - (1+r)^{15}}{(1+r)^{15} - 1} = \frac{-1}{(1+r)^{15} - 1}$$

これを不等式に戻す。

$$- \frac{(1+r)^n}{(1+r)^{15} - 1} + \frac{(1+r)^{15}}{(1+r)^{15} - 1} \leqq \frac{2}{3}$$

$r > 0$ より $(1+r)^{15} - 1 > 0$ であるから、両辺に $(1+r)^{15} - 1$ を掛けても不等号の向きは変わらない。

$$- (1+r)^n + (1+r)^{15} \leqq \frac{2}{3} \{ (1+r)^{15} - 1 \}$$

展開して整理する。

$$- (1+r)^n \leqq \frac{2}{3}(1+r)^{15} - \frac{2}{3} - (1+r)^{15}$$

$$- (1+r)^n \leqq - \frac{1}{3}(1+r)^{15} - \frac{2}{3}$$

両辺に $-1$ を掛けると、不等号の向きが反転する。

$$(1+r)^n \geqq \frac{2}{3} + \frac{1}{3}(1+r)^{15}$$

以上より、与えられた不等式が成り立つことが示された。

解説

年賦償還(ローン返済)の残高推移を数式化する典型問題である。 漸化式 $A_n = (1+r)A_{n-1} - a$ (ただし $A_0 = A$)を立てて一般項を求める手法は、数列の応用として頻出である。本問は「推測せよ」という誘導がついているため、それに従って規則性を見出し、等比数列の和として処理すればよい。 (3) の不等式の証明は、代入したあとに $(1+r)^n$ について整理し、分母を払うことで見通しよく計算を進めることができる。

答え

(1)

$$A_1 = A(1+r) - a$$

$$A_2 = A(1+r)^2 - a(1+r) - a$$

推測した式:

$$A_n = A(1+r)^n - \frac{a}{r} \{ (1+r)^n - 1 \}$$

(2)

$$a = \frac{Ar(1+r)^{15}}{(1+r)^{15} - 1}$$

(3)

解法1の通り証明された。

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