大阪大学 1981年 理系 第2問 解説

方針・初手
与えられた $x, y$ の式から媒介変数 $t$ を消去して、軌跡の方程式を求める。 分母が共通であり、分母の形 $1 - 2a \cos t + a^2$ は $(\cos t - a)^2 + \sin^2 t$ と変形できることに着目する。この構造から、実数計算により $x^2 + y^2$ を求めて $t$ を消去する方針と、複素数平面上の反転として捉える方針の2つが有効である。また、$t$ の変域 $0 \leqq t \leqq \pi$ から、$y$ の符号に制限がつくことにも注意する。
解法1
複素数平面を用いて考える。
$t$ が $0 \leqq t \leqq \pi$ の範囲を動くとき、$z = \cos t + i \sin t$ は複素数平面上の単位円の上半分を描く。すなわち、$z$ は以下の条件を満たする。
$$ |z| = 1 \quad \text{かつ} \quad \mathrm{Im}(z) \geqq 0 $$
平面上の点 $P(x, y)$ に対応する複素数を $w = x + iy$ とおくと、与えられた式より以下が成り立つ。
$$ w = \frac{\cos t - a + i \sin t}{1 - 2a \cos t + a^2} = \frac{z - a}{|z - a|^2} $$
ここで、$|z - a|^2 = (z - a)(\bar{z} - a)$ であるから、これを代入して約分する。
$$ w = \frac{z - a}{(z - a)(\bar{z} - a)} = \frac{1}{\bar{z} - a} $$
この式から $\bar{z}$ を求めると、以下のようになる。
$$ \bar{z} - a = \frac{1}{w} $$
$$ \bar{z} = \frac{1}{w} + a $$
両辺の共役複素数をとる。$a$ は実数なので $\bar{a} = a$ である。
$$ z = \frac{1}{\bar{w}} + a $$
これを $|z| = 1$ に代入する。
$$ \left| \frac{1}{\bar{w}} + a \right| = 1 $$
$$ \frac{|1 + a\bar{w}|}{|\bar{w}|} = 1 $$
$$ |1 + a\bar{w}| = |\bar{w}| $$
両辺を2乗して展開する。
$$ (1 + a\bar{w})(1 + aw) = w\bar{w} $$
$$ 1 + aw + a\bar{w} + a^2 w\bar{w} = w\bar{w} $$
$$ (1 - a^2) w\bar{w} - a(w + \bar{w}) = 1 $$
条件より $|a| < 1$ であるから、$1 - a^2 \neq 0$ である。両辺を $1 - a^2$ で割る。
$$ w\bar{w} - \frac{a}{1 - a^2} (w + \bar{w}) = \frac{1}{1 - a^2} $$
左辺を因数分解の形に変形(平方完成)する。
$$ \left( w - \frac{a}{1 - a^2} \right) \left( \bar{w} - \frac{a}{1 - a^2} \right) = \frac{1}{1 - a^2} + \left( \frac{a}{1 - a^2} \right)^2 $$
$$ \left| w - \frac{a}{1 - a^2} \right|^2 = \frac{1 - a^2 + a^2}{(1 - a^2)^2} = \frac{1}{(1 - a^2)^2} $$
$1 - a^2 > 0$ であるため、両辺の正の平方根をとる。
$$ \left| w - \frac{a}{1 - a^2} \right| = \frac{1}{1 - a^2} $$
これは、点 $w$ が中心 $\frac{a}{1 - a^2}$、半径 $\frac{1}{1 - a^2}$ の円周上にあることを示している。
次に、$\mathrm{Im}(z) \geqq 0$ の条件を考える。
$$ z = \frac{1}{\bar{w}} + a = \frac{w}{w\bar{w}} + a = \frac{w}{|w|^2} + a $$
$a$ は実数なので、$z$ の虚部は以下のようになる。
$$ \mathrm{Im}(z) = \frac{\mathrm{Im}(w)}{|w|^2} $$
$|w|^2 > 0$ であるため、$\mathrm{Im}(z) \geqq 0$ となる条件は $\mathrm{Im}(w) \geqq 0$、すなわち $y \geqq 0$ となる。
以上より、点 $P(x, y)$ は中心 $\left( \frac{a}{1 - a^2}, 0 \right)$、半径 $\frac{1}{1 - a^2}$ の円周のうち $y \geqq 0$ を満たす部分を描く。
解法2
$x$ と $y$ の式から直接 $t$ を消去する。
まず、$x^2 + y^2$ を計算する。
$$ \begin{aligned} x^2 + y^2 &= \frac{(\cos t - a)^2 + \sin^2 t}{(1 - 2a \cos t + a^2)^2} \\ &= \frac{\cos^2 t - 2a \cos t + a^2 + \sin^2 t}{(1 - 2a \cos t + a^2)^2} \end{aligned} $$
$\cos^2 t + \sin^2 t = 1$ を用いると、分子は $1 - 2a \cos t + a^2$ となる。
$$ x^2 + y^2 = \frac{1 - 2a \cos t + a^2}{(1 - 2a \cos t + a^2)^2} = \frac{1}{1 - 2a \cos t + a^2} $$
条件 $|a| < 1$ より、分母 $1 - 2a \cos t + a^2 = (\cos t - a)^2 + \sin^2 t$ は、$a = \cos t$ かつ $\sin t = 0$ のときにのみ $0$ になるが、$|a| < 1$ のためこの条件は満たされない。したがって、分母は常に正であり $x^2 + y^2 \neq 0$ である。
これを用いて、もとの $x, y$ の式から $\cos t, \sin t$ を逆算する。
$$ x = (\cos t - a)(x^2 + y^2) $$
$$ y = \sin t (x^2 + y^2) $$
よって、
$$ \cos t = \frac{x}{x^2 + y^2} + a $$
$$ \sin t = \frac{y}{x^2 + y^2} $$
これらを $\cos^2 t + \sin^2 t = 1$ に代入する。
$$ \left( \frac{x}{x^2 + y^2} + a \right)^2 + \left( \frac{y}{x^2 + y^2} \right)^2 = 1 $$
展開して整理する。
$$ \frac{x^2}{(x^2 + y^2)^2} + \frac{2ax}{x^2 + y^2} + a^2 + \frac{y^2}{(x^2 + y^2)^2} = 1 $$
$$ \frac{x^2 + y^2}{(x^2 + y^2)^2} + \frac{2ax}{x^2 + y^2} + a^2 = 1 $$
$$ \frac{1}{x^2 + y^2} + \frac{2ax}{x^2 + y^2} = 1 - a^2 $$
両辺に $x^2 + y^2$ を掛ける。
$$ 1 + 2ax = (1 - a^2)(x^2 + y^2) $$
$|a| < 1$ より $1 - a^2 \neq 0$ であるため、両辺を $1 - a^2$ で割り、円の方程式の標準形に整理する。
$$ x^2 + y^2 - \frac{2a}{1 - a^2} x = \frac{1}{1 - a^2} $$
$$ \left( x - \frac{a}{1 - a^2} \right)^2 - \frac{a^2}{(1 - a^2)^2} + y^2 = \frac{1}{1 - a^2} $$
$$ \left( x - \frac{a}{1 - a^2} \right)^2 + y^2 = \frac{1 - a^2 + a^2}{(1 - a^2)^2} $$
$$ \left( x - \frac{a}{1 - a^2} \right)^2 + y^2 = \frac{1}{(1 - a^2)^2} $$
次に $t$ の変域による $y$ の値の範囲を考える。$0 \leqq t \leqq \pi$ のとき、$\sin t \geqq 0$ である。また、前述の通り分母は常に正であるため、
$$ y = \frac{\sin t}{1 - 2a \cos t + a^2} \geqq 0 $$
となる。
以上より、求める図形は中心 $\left( \frac{a}{1 - a^2}, 0 \right)$、半径 $\frac{1}{1 - a^2}$ の円の $y \geqq 0$ の部分である。
解説
図形の軌跡を求める標準的な問題であるが、計算をどう処理するかが鍵となる。
解法1のように複素数平面を用いると、反転の式 $w = 1 / (\bar{z} - a)$ の形に帰着でき、幾何学的な意味を保ったまま非常に見通しよく計算を進めることができる。分母の $1 - 2a \cos t + a^2$ を見たときに $|z - a|^2$ を連想できると、複素数への翻訳がスムーズにできる。
解法2のように実数のまま処理する場合は、$x^2 + y^2$ を計算して $x, y$ で表すことで、見かけ上の複雑な分母を消去する手腕が求められる。この「$X = x/(x^2+y^2), Y = y/(x^2+y^2)$」という関係式を利用する変形も、反転図形の軌跡を求める際の定石の一つである。また、分母が $0$ にならないことの確認や、定義域から値域への制限($y \geqq 0$)を忘れないように注意が必要である。
答え
中心 $\left( \frac{a}{1 - a^2}, 0 \right)$、半径 $\frac{1}{1 - a^2}$ の円の $y \geqq 0$ の部分(上半円)。
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